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カーテンレール

3歳下の弟と留守番をしていた時
普段は禁止されている
寝室のベッドでトランポリン遊びをしてた

親の言うことをよく聞く弟が
躊躇しながら羨ましそうにしていたので
この我が家では悪いとされている遊びに
手を引いて連れ込んだ

禁を破る背徳感も次第に薄れ
弟もはしゃぎ回るようになってから
ベッドの先にクッションを並べて
ジャンプしてどっちが
遠くまで飛べるかを競うゲームが始まった

何回か飛んだ後に最高飛距離を狙った僕は
ぴょんぴょんとベッドではねて助走をつけ
えいやと飛び出した

明らかに今までより高い視線
長い対空時間に
横目に見える驚いた弟の表情
これは行けるぞ

僕は今日一番のジャンプを見せた
でも勢いよく着地したクッションが滑って
転びそうになり必死に何かを掴もうと手を伸ばし
カーテンを思いっきり掴んだ

バキバキ

聞いた瞬間にこれはダメだとわかる音が響く
普段は床上 1cmの丈のカーテンが
デロンと床に付いてたわんでいる
見上げると斜めに傾いたカーテンレール
掴んで引っ張った時に折れてしまったんだ

さっきまでの最高に楽しかった時間が
取り返しのつかない事をしてしまった焦りに変わり
僕ら兄弟の脳裏にはにサイレンが鳴り響いた

カーテンレールがどうなっているのか
確認したくても子供の身長では
ベッドに乗っても見えない

カーテンレールを直す魔法も知らないし
タイムマシーンで過去にも戻れない

共犯者のはずの弟は驚いてはいるものの
実行犯でないことに多少の安心が見える

なぜこの遊びが禁止されていたのか
それはこんなことが起きてしまうからだ

世界から消えてしまいたいと思うけど
まだお気に入りの漫画の最終回も見届けていない
家出をして逃げようか
でもそんな度胸もない

「ありがとうとごめんなさいが言える人になりなさい」
お母さんがいつも言う言葉が頭に響く

僕にできるのはお母さんが帰ってきたら
真っ先にごめんなさいをすることだけ

いつもはごめんなさいを言うと
お母さんは怒りながらも「よく言えました」と
言ってくれたけど
折れたカーテンレールは壁も一緒に壊していたようで
お父さんも巻き込んだ大事件になって
「よく言えました」の言葉はもらえなかった

この日僕は少し成長した
悪い遊びをすると起きることの危険予測がきるようになり
3ヶ月間義務付けられたお風呂掃除が上手くなった

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