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【小説】総括のコンジェルトン

第一部 帝国の分裂

第一章 英雄たちの帰還

「きゃああッパルムス様ァ」

「コンジェルトン様ー」

 帝都アレニアの宮殿へと繋がる大通りは沢山の群衆と花弁、色紙に埋め尽くされた。それとともに平和を象徴する白い鳩が放たれ、その白き羽と糞もまた群衆の頭上に降り注いだ。

「私コンジェルトン様にラブレターを渡すわ!」「馬鹿コンジェルトン様は神官が本職ぞ。妻帯は許されん!」

 集合住宅からは人々が手を振り、飲食店はまたとない書き入れ時と客を呼び込む。大きな建物の屋上にはクロスボウを手にした衛兵が配置され厳しく目を光らせた。

 コンジェルトンら勇者パーティーのメンバーが前を通ると喝采は一層のこと大きくなった。しかしそれは第一皇子グレイムス、第三皇子ガルフリードに対する喝采の小ささもまた意味する。それを察しガルフリードは「チッ」と小さく舌打ちをした。事実グレイムス、ガルフリードは皇族という立場でありながらこの度の「魔王大戦」においてはこれといった活躍を果たさなかったのだ。

 その日の夜、宮廷内の離宮にて。

「いやあ、ようやく終わったな、下手すると冒険の旅より草臥れたぜ」とパルムス。

酒が入り饒舌になったパルムスは喋り続けた。

「それにしてもよお、地方で愚連隊か山賊みたいなことやってた俺等が、帝都に英雄として迎え入れられるとは」

「私は違うぞ。私はヒルメスと出会う前はファーランド地方の名もなき断崖絶壁にある修道院の修道士だった」とコンジェルトン。

「なあに傍から身なりを見れば大して変わらんさ」とエイデン。「お前はいつも一言多いなあ」と返すコンジェルトン。

「しかし明日は叙勲式か。俺たちは貴族として列せられ、もしかすると閣僚の椅子も…こんなことは一年前には夢にも思わなかった…」と言いかけたところでパルムスははっとした。

「あ、すまねえコンジェルトン、エイデン。お前たちは俺なんかよりずっと活躍したのに…」

「いやいいんじゃパルムス。ワシもコンジェルトンも閣僚なんかは荷が重すぎるよ。元老院の議員として年2回帝都に上洛するのだって面倒臭いくらいじゃ」(※)

「それにしてもウェドよ、貴様はなぜ黙りこくってるんだ?不気味なくらいだが…」とパルムスはウェド・カークに水を向けた。

「いや、お前たち皇帝の顔をちゃんと見ていなかったのか?」とウェド・カーク。

「さあ?何?」

「皇帝陛下は、もうあまり長くないぞ」

「何!?なんてことをいうんだウェドよ?」一同は色めき立った。

(※)閣僚として任命されるのは原則ヒト族とグラスランナー族のみである。その中でもグラスランナー族が任命されるのは比較的稀。

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