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流刑囚の映画百物語~第80回『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章』(’24日)


私流刑囚がその時々で見た映画を紹介するコーナー。今夜ご紹介するのは『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章』。

本作の5点満点評価は…

コンセプト…4点
カメラワーク…3.5点
ビジュアル…3.5点
脚本…4点

総合評価…3.8点


とにかく場面転換が多い映画ですね。また登場人物もやたらと多い。これは決して悪いことではなく、(特にテレビ登場後の)映画とは第一義的にスペクタクル、叙事詩を見せるものなのだからその意味で本作は王道を行っている。映画らしい映画。映画というのはこうでなければならない。

前後編の前編ということなのでストーリー的にはそれほど語れないが、観客をワクワクさせる風呂敷の広げ方をしているなあ、と感心した。

キャラクターデザインもまた魅力的である。いかにもな感じで漫画らしいカリカチュアライズされた登場人物。藤子不二雄や赤塚不二夫、あるいは水木しげるなどの流れだね。キャラクターたちの畳み掛けるようなギャグも小気味よく作品のテンポに貢献している。特におうらんの兄がいい味を出していると思った。

全体的なトーンは元ネタがどう見ても『ドラえもん』であることからもわかるように藤子・F・不二雄テイストだが「未知なる存在を巡って人々が喧々諤々、右往左往する」というシチュエーションは水木しげる作品にも頻出するのでこの手の漫画が好きな人は見て損はない。というか見ないと損すると言ってもいいかもしれないね。自衛隊の描写なども忠実に任務に当たる一方、どこか間の抜けた感じがするのが水木しげるっぽい。映画でいうと『ゴジラ対ヘドラ』の自衛隊のあの感じ。

原作は浅野いにお。筆者はこれまで長らく浅野いにお作品はなんとなく都市部中産階級的なニオイがして敬遠していたのだが、本作を見てその認識はある程度改めなければならないと思った。ただ2014年に始まった原作の雰囲気は今見るとちょっと古臭いようにも見える。2014年と2024年、自分も含め多くの人々にとっては実感としてそこまで大きな変化はなかったようにも感じられるが、それでも実のところは色々変わってしまっているということを実感する。そこには劇中でも言及される「取り返しのつかなさ」も多分に含まれているのだろう。

繰り返しになるが本作は2部作の前章である。これだけ広げに広げまくった風呂敷をどう畳むのだろうか。2022年(7年半もの長期連載だったのか)に完結した原作を読まれた方は既に存じ上げているのだろうが、未読の筆者からするといい意味でも悪い意味でもドキドキさせられる。

取り敢えず前章を見た限り現場からは以上です。

以上現場からの中継でした。皆さんもうすぐ上映終了しそうなので至急劇場に向かってください。繰り返します。もうすぐ上映終了しそうなので至急劇場に向かってください。



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