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#3 【研究】最新の学術動向を把握する重要性

本記事では、素材メーカー研究職勤務しつつ、社会人博士課程に通っている私が感じた最新の学術動向を把握する重要性について述べたい。

そもそも大学等の研究機関ならまだしも、一般企業の研究職が最新の学術動向をつかむ必要はあるのだろうか。他社特許はよく確認しているが、学術論文はほとんど読んでいない、という方も多いではないだろうか。

事実私は大学院卒業後、日々目の前の業務で忙しく、特許出願のために他社特許はチェックするが最新の学術動向にまで気を配る余裕がほとんどなかった。私の会社における研究開発は数打ち当たれ的な風潮が強く、理論はあまり重要視されなかった。私自身、学術研究はマニアックで企業研究にあまり役に立たないと考えていた。

しかし、入社4年目に社会人博士課程に進学してから、自身の研究分野(※)に関する自身の理解の欠如を痛感した。話に全くついていけない。学生でさえわかるのに、目の前の現象を説明できない。たった3年のブランクで世界から取り残されたのである。企業研究の方が逆に井の中の蛙であった。(※私は大学院、会社、社会人博士課程で同じ研究分野にいる)

私が最新の学術動向のうち、最も重要だと感じたのは原理の解明や扱っている素材の本質に迫るド基礎の研究だ。インパクトファクターの高いジャーナルに通るような「華やか系」の応用研究は個人的には非常に興味深いが、直接仕事の役に立ったことはない。(用途探索が目的なら、会社チーム内で毎月分担して実施している特許調査がはるかに効率が良い。)

基礎研究は企業における研究開発にとって極めて重要だ。短期的な結果を出すなら水準数をこなしさえすれば良いかもしれないが、基礎・本質を理解できていないと新しいシーズを生み出しにくい。また客先における課題に対し、我々も理解できていないのでソリューションを提供できず、検討中止→顧客流出につながってしまう。

しかし、企業において基礎研究に対し理解を示してくれるトップは少ない。企業活動は利益を出すことが重要視される一方、基礎研究は利益に直結しないからだ。基礎研究の重要性をトップに力説して人員を配置してもらってもよいが、一人なんとかするには荷が重い。以上のことから、私のような大手メーカーの若手研究員にとって、「自主的に」学術動向をフォローし、基礎に対する知見を深めることが重要だと私は考える。

現在私は仕事の傍ら、研究分野内外の学術論文に日々目を通し、重要な文献があれば逐一チームメンバーに共有をしている。共有内容が社内の技術課題の解決につながった事例が多くある。また論文を通して興味深いアイデアが浮かんだら、自分の中の引き出しにとっておき、ここぞというタイミングで提示する。こうすることで周りに頼られる存在になり、社内におけるプレゼンスが上がる

次の記事では、学術論文チェックの際に私が使用しているツールについてご紹介したい。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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