最近ふれた音楽の話 #20 くるり『コトコトことでん』、THE BLUE HEARTS、井上陽水ほか
PUFFYのアジアの純真を聴いていたら、ボコーダーを使った歌詞の反唱がありました。PUFFYメンバーが歌った後に、同じ歌詞をボコーダード・ボイスが追うのです。作曲者の奥田民生氏によるものと思います。ボコーダーは未来っぽさを感じさせる、人間の生声を機械みたいに変えるシステム…シンセの一種?らしいです。
奥田民生氏がそうやってPUFFYのプロデュースなどする前の活動といえば他でもなし、ユニコーンです。ヒゲとボインは代表曲じゃないでしょうか。
ヒゲとボインにもボコーダーを通った声が使われています。最後のサビに入る前の5小節。
何かをボコーダーがミャウミャウ嘆いているのですがなんだろう? 注意して聴く。
「ひげとぼいん ぼくはぼいんのほうがすきです〜 はい〜」
聴き取れた瞬間笑ってしまいました。最初のうちはなんとなく聴き流してしまっていてセリフに気づきませんでした。
ボインとヒゲと僕が出てくる歌。ヒゲは社長。上司みたいなものですね。ボインは同僚…的な、隣のデスクの人です。勤労者、平凡な勤め人が主人公の歌にも思えます。それを我らが憧れのロックヒーローが歌っているのがなんだかおかしくもあります。
ヒゲとボインでユニコーンに意識をやってみる。
思い出した曲が『ボルボレロ』。エビ氏ことベースの堀内一史作詞作曲ボーカルの曲です。
この曲とはライブハウスのSEで出会いました。バータイムにスピーカーから流れていていい曲だなぁと思ったのです。ボーカルが奥田氏でなかったので、初め誰の曲かわかりませんでした。ライブハウススタッフに訊いてみるとユニコーンとのこと。ははんそういうことか。
ユニコーンはメンバーみんな曲を書きます。
『ボルボレロ』はユニコーンが再始動するときのアルバム『シャンブル』に収録されています。
流れるような言葉とメロディ、ふわふわした長短の和音進行が美しい。エビ氏のファンになりました。
「ボレロ」はクラシックでも有名なラヴェルのものがあるように舞曲のことを指していると思うのですが「ボル」ってなんでしょうね。歌詞にボレロは出てきますが「ボルボレロ」の形では出てきません。タイトルだけです。いくつかのことを想像しました。正解は分かりません。ないのかも?
えっろい曲だな〜と思いました。
いつぞやのテレビで初めて知った曲。カバーもされていて、その時の演奏も本人じゃなくてカバーだったかも?
最近『アジアの純真』を聴いたので作詞の井上陽水氏に意識が向きました。
井上陽水といえば私の世代で分かり合えるかもしれない要素で言うと高校の音楽の教科書に『少年時代』が掲載されていました。
石崎ひゅーい氏が尊敬する人として彼の名前をあげたインタビューを見たことがあります。不敵に思えるボーカルと曲作りは尊敬以上のものに値すると思います。あればですが。
全国各地?にリバーサイドホテルなる宿泊施設があるようです。井上陽水氏の曲にあやかってつけたのか、もともとあるのか分かりません。
モデル(の土地)もあるようで、九州、大分の温泉地のようです。
でも、夢を見ているような歌詞が魅力。少年時代にしてもリバーサイドホテルにしても。
THE BAND HAS NO NAME『Mistake』ロックの投げ分け職人
深夜テレビがついていて気になる音が流れてきたー!と思ったら奥田民生を含んだバンド、THE BAND HAS NO NAMEでした。ソースはアニメの『ハチミツとクローバー』。もう何年も前の話ですが。
声に覚えがあるのにこのバンド名はなんだろう。しらべてみたら、奥田民生とSPARKS GO GOと松浦善博がバンドのメンバー。名前のないバンドのテープにエンジニアがとりあえず?書き込んだ名前がそのまま採用(というかそれ以上の名前がいまだについていないだけ?)になっているようです。
最初の頃に出した音源と、ハチミツとクローバーのテレビアニメが放送されたのと同年の頃に再録した二つの『Mistake』テイクがあります。ハチクロに使われたのは新しい方。でも曲のニュアンスはどちらも尊重しあっている感じで、どちらも良い。新しい方のテイクの方が奥田民生ボイス成分つよめです。
THE BLUE HEARTS『人にやさしく』認めの「ガンバレ」
THE BLUE HEARTS『人にやさしく』はテレビドラマで知った曲でした。同名のドラマが昔やっていたのです。香取慎吾、加藤浩次、松岡充が出演していたものです。そのドラマの挿入歌でした。
やさしくするっていうのはむつかしい…というか幅の広いことだなぁと思います。
たとえば、先回りして目先の解決を一方的にやってあげてしまうことが「やさしさ」でしょうか。その人が自分で何かを解決できるように、ちょっときっかけを与えてあげるくらいのことが「やさしさ」なのじゃないかという気にもなります。それが例えば、「ガンバレ」という、あなたを見ているよというだけのことを伝えるひと声なのかもしれません。その人が何によろこび、何につまづいて何に一生懸命になっているかを知っているからこそ言える「ガンバレ」もあるでしょう。何も知らなくても悲しみやよろこびを抽出することで、具体的な境遇がそれぞれに違っても共有できる励ましがあるかもしれません。「やさしさ」はやはり奥深い。
昨年のクリスマスに出たくるりのシングル曲『コトコトことでん』は香川県をはしる鉄道・通称「ことでん」を主題にした曲で、現地を行く気持ちよさを疑似体験させてくれる曲です。
間奏がとてつもなく好き。まるでクラシックのようなのです。途中から対旋律が入ってきて多声音楽のようになります。バロック時代のそれのよう。なのに、トーンはエレピのような近現代の音なので新鮮です。「駅メロ」へのオマージュでしょうか。
深遠な間奏を味わっていたら新しいしらせが入ってきました。プラレール鉄道(タカラトミーのおもちゃ、プラレールの架空の鉄道会社)のテーマソング『プラプラプラレール』が映像とともに公開されました。『コトコトことでん』をベースに、歌詞やテンポやメロディなどもろもろを一新したオリジナルソングです。
プラレールは我が家の子どもも遊んでいます。プラレールの動きって、結構はやいのです。部屋の大きさや所持パーツの数の関係でどうしてもレールの距離が限られるので、短い距離を頻繁にぐるぐる走ることが「スピード」を感じさせる要因かもしれません。そんなプラレールの速度感をよく表現した曲になっています。
THE BLUE HEARTS『1000のバイオリン』4桁の道標
THE BLUE HEARTSについて書こうとすると、私は言葉に尽きてしまいます。私の陳腐な言葉を寄せ付けないカリスマ。なんて言葉で逃げて終わりにはしたくないので一生懸命何か書こうとします。でも知識も経験もない。私がロックやバンドの音楽をいよいよ好きになりだした頃にはもう解散していたのです。その頃には、ハイロウズとかの活動をなさっていたかな。だからライブに行ったこともない。映像でみるのがせいぜいです。
だから、THE BLUE HEARTSについて書こうとする私の言葉は弱い。それでもこうして読んでくださってありがとうございます。
『1000のバイオリン』は、アースミュージックアンドエコロジーのテレビCMで知りました。いえ、それ以前にも多少認知してはいたけど、「こんなかっこいい曲があるんだ」とはっきり認知した機会がそのCMだったのです。
宮崎あおいがまっすぐな発声でこの曲を歌いながら、その場所で何かする映像。海だったり、どこかの路上だったり坂道を自転車していたり。
『1000のバイオリン』はまずアルバム『STICK OUT』に収録されて発売されますが、そのあとでシングルカットされます。そのときのカップリングに収録されたのが『1001のバイオリン』で、これはストリングスでフル尺伴奏しきる、挑戦的で、まるはだかで、それでいて豊かで臨場感あるアレンジです。ストリングスでこんなに疾走するグルーヴはすばらしい。甲本ヒロトの声がいつものバンドに乗ったときとは一段と別次元に響きます。
宮崎あおいが歌うのは「1001」バージョンのほうのオケ。1002のバイオリンは、あなたかもしれません。
青沼詩郎
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