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残月記を読んで

3編からなる小説です。正確には聞きました(アマゾンAudible)
ただひたすらにそれぞれにまつわる感想を書き連ねてみました。私の好きなジャンルです!
本を読んだら感想を書くということの実践です。

そして月が振りかえる

その昔、眉村卓の小説にパラレルワールドを描いたものがあったことを思い出した。自分とそっくりな人を見かけてあとを付いて歩いて行き、いつもの住宅街をなんとなくの違和感を覚えながら家につくと、そこはパラレルワールドで自分の居場所はないという話だったような気がするが詳細は覚えていない。詳細は覚えていないのだけど、とても印象に残っている。

家族でいつものレストランに行き、食事の最中にトイレに立った主人公大月。月がぐるりと回転して裏側にひっくり返った時、パラレルワールドに突入してしまった。

その瞬間の描写は楳図かずおの漫画を見ているかのような錯覚を覚えた。

そんなふうに作者の人物描写、細かな言葉遣いが独特で、耳で聞きながら特徴のある言葉を繰り返した。

初めて読む内容だけど他の作品を思い出してしまうということは、どこか作風や内容に覚えのあるもののような気がしたのかもしれないし、なんとなく懐かしさを覚えるような話だった。

月景石

石というものは昔からの意思を受け継いでいる気がして拾ってきたとしても家には持ち込まない、そんなふうに私は思ってきた。

冒頭から「なんでもできる人はなにもできない人」という言葉が出てきて、ちょうどテレビでもだれか芸人が同じ事を言っていたのが重なって私に重くのしかかってきた。私もまた何でもできるけどなにもできない人=器用貧乏 だと自負しているからだ。

でも話の流れは特にその文言とは関係ない方向だった。

夢。

夢の中の時間の速さはとてつもなくて、一晩寝ている間に見ている夢の中のスピードは何倍にもなっているというのは映画「インセプション」で語られていること。映画では人の夢の中に入り込み意識の中への刷り込みを行ったりしていました。

この物語では石を介して地球と月とのパラレルワールドを夢を見ながら行き来していて、夢であるはずなのに目が覚めたら現実の人間が消えていたりする。時間も空間も夢も現実もどこに着地していいのかわからない話。

夢日記を時々書いているけれど、本当に夢は不思議な世界。繋がりがあるようでないようで、夢の中だけで知っている人もいたりする。

興味深い話でした。

残月記

耳だけで聞くのでフィクションで造語された言葉の漢字が思いつかないということに気がついた。

いきなりコロナもどきの多発性流行疾患で治癒しない「げっこう」という響きに、いったいどういう文字を当てているのか?ネットで調べないとわからない事態が起きた。耳読というのはこういう問題も起きるんだなあ。

月とまつわる話だから「月光」なのか??そんな名前の疾患がある?

満月が来るたびに体に止めどない力が満ち満ちて、自分では制御できないくらいの状態になる「月昂」(げっこう)という疫病だそう。新月の時には死んでしまうかもしれないという。

主人公の「とうが」という名前もただ「とうが」で聞いていたが「冬芽」だそう。なるほど、かなりファンタジーちっくなネーミング。

まるであたかも本当に私たちの身に覚えのある疫病であるような書きっぷりに最初はちょっとドキマギしてしまった自分に笑える。え?こんなことあったっけ?って過去の出来事を振り返ってしまった。作者の術中にハマっていた。

話は近未来。2030年以降のこと。月のエネルギーに右往左往させられる月昂者たちが、時の政権を握るカリスマ暴君によって隔離されている。きっとコロナ蔓延で創作意欲が湧き上がったに違いないと読みながら思った。

冬芽と瑠香という二人の月昂者のラブストーリーであり、意識と無意識が交錯する世界であり、月という不可思議な世界が魅せる異空間かもしれないな。

以上、短編3作を聞きました。

シュタイナーの「星とわたし」とか松村潔著「月星座」などを読んでいるせいか、この作者もまた占星術のような世界に知識があるのかな?と思ってしまうのだった。

総評として面白かったな。私はこういう近未来的なSF的なものは好きなんでしょうねえ。

最後までお付き合いくださりありがとうございました。


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