『戦うコンピュータ(V)3――軍隊を変えた情報・通信テクノロジーの進化』Ch. 1-4、井上孝司著、潮書房光人新社、2017

“まえがき"に代えて

三代目で完成する

過去にマイクロソフトのはんでいた人間が、この話をネタにするのはど うかと思うが、 「マイクロソフトの製品はバージョン3で完成する」 なんてい うことがいわれていた。

確かに、最初のWindows 10は「とりあえず複数のウィンドウが開きます」 というだけの代物だったし(ひどい) Windows 20は利用可能なメモリや画面 サイズの制約が厳しい時代だったから、これもどこまで実用的だったかというと自信がない。 実のところ、 Excelを動かすため「だけ」のプラットフォーム であったかも知れない。 普及に弾みがついたのはWindows 30以降の話である。

ちょうど今年(2016年)9月2日に日本向けF-35Aのロールアウトという大 イベントがあったが、 そのF-35もひととおり完成して開発完了となるのはロ ック3、つまりバージョン3みたいなものである。

さて。思い起こせば、本書の先祖にあたる 「戦うコンピュータ」を毎日コ ミュニケーションズ(現・マイナビ)から刊行させていただいたのは2005年9 月1日で、 すでに10年以上も前の話になる。 その後、元を潮書房光人社に改 めて戦うコンピュータ2011」 を2010年10月21日に刊行させていただいた。 そ れを改訂したのが本書だから、いわば「うコンピュータ バージョン3」で ある。

当初は 軍事とコンピュータの関わり」 という大テーマを形にするだけで 精一杯だった。 それが第二弾で 「CAISR (指揮通信・コンピュータ 情報 監視察) の教科書」というコンセプトを導入するとともに、さまざまな資 料をあたって得た情報を遠慮なくつぎ込むことができた。その一方で、話がミ クロに入り込みすぎたとか、話の流れがスッキリしないとかいった問題も出て きた。実際、「難しすぎてよく分からぬ」との指摘を頂戴したこともある。

そこで今回の「バージョン3」では、話の流れ、 見通しを良くしようと考え た。 具体的には、構成を全面的に組み替えて 「軍事作戦を構成するさまざまな 場面において、 コンピュータ化や情報通信技術の活用が、 どう効いたか」という話の流れにしてみた。

しかし、それだけですべての話題をカバーできるものではないので、コンピ ュータや通信に関わる基本的な話、あるいは詳細な話については、後の方に それぞれ章を立てた。もちろん、進化が激しい世界のことだから、情報はできる 最新のものを反映させるよう心掛けた。

なにしろ、コンピュータが機能しないと飛行機のエンジンをかけることもま まならないという御時世だ。 本書を通じて、 軍事という分野において情報通信 技術がどういう関わり方をして、どういう変化やメリット・デメリットをもた らしてきたのか、その一を伺い知っていただければ幸いだ。

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