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万能脂・ジビエラードを作る【磐梯町 細井】

「食欲の秋」という慣用句がありますが、それは自然界に生きる野生動物たちも例外ではありません。
迫りくる冬に備えて脂肪をつけるため、イノシシはドングリをとにかくたくさん食べますし、クマ類は冬眠の間に必要なエネルギーを蓄えるためドングリや果実をよく食べます。

そんな脂肪を蓄えた野生動物の肉は狩猟者にとっては冬山のごちそうですが、この脂肪は食用以外にも、軟膏や刃物などに使う錆止めクリーム、また革鞣しに使う油や手作り石鹸などに使用することができます。

様々な使い道がありますが、どんな使い方をするにせよ、まずは脂から不純物を取り除く精製という作業が欠かせません。

精製前のイノシシ脂。血や肉片が混じっているため、これを取り除いていきます。

精製の方法は水で煮出すやり方と、直接火にかけるやり方があります。より純粋な油になるのは水で煮出す方法なので、食用以外で使うときはこのやり方がいいと思います。

【精製工程】
➀脂を上の写真のように細かく切ります。

➁脂と同量の水を張った鍋の中に入れ、火にかけます。

➂強火で沸騰させ、脂を完全に溶かしていきます。鍋の中の水分が飛び、油だけの状態にしたら、溶けた油を濾していきます(私はコーヒーフィルターを使っています)

④ ➁、➂の作業を2~3回ほど繰り返したら完成です。

私も特に決まった方法で行っているわけではなく、ずいぶん適当にやることもありますが、完成した時に無臭であれば成功と判断しています。

煮沸消毒した瓶の中に入れて冷蔵保管しています。
左がイノシシ脂・右がツキノワグマの脂です。

動物の種類によって脂の性質もかなり変わってくるらしく、シカの脂などは融点がそうとう高いらしいですが、イノシシやクマの脂の融点は低いと感じます(冷蔵庫に入れ固形化していても、取り出すとみるみる液体化していきます)

錆止めクリームとして包丁に塗る場合は、お好みで蜜蝋と混ぜるとクリームの硬さを調節できて塗りやすくなります。

「生活に必要なものを自分の力で調達する」ということが楽しくてこういったことをやっている面もありますが、捕獲し命を奪った以上はなるべく無駄にしたくない、というのが多くの猟師の本音だと思います。
少しでも無駄にしないための工夫をこれからも凝らしていきたいなと思います。

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