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TU・KI


 月は宙に浮くくらい軽い
薄い青みがかった重たい灰色の空に月は燦々と輝いてる。
あんなに薄くふわふわとした雲よりずっとずっと高いところで陣取っている。
見ればわかるよ。月は軽いんだ。
 そうするとさ、きっとスゴイ人間が僕に教えてくれて。
何故、月は浮かんでいるのか。何故、地球は青いのかとかさ。
聞き心地はけっして良くは無いが、僕は納得した方がいい気がした。
だって、彼らはきっとスゴイ人間で、僕よりも沢山良いものを食べてる気がしたから。
僕は頷いた。
 それからというもの僕は、もう重たい頭を上にあげて歩いているのに、
誰からも褒められることは無くなってしまって。
一人で靴下を履けても、ご飯を食べた後に食器を洗っても、
誰も結構な事だと取り上げなくなってしまった。
きっと僕が月が物凄く重いことを知ったから。
そんな風に振る舞ったから、
 僕は、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた満員電車の一員のように。
こんなにぎゅうぎゅうで窮屈で息苦しいのは、
隣の人の所為だと信じてやまなかったからだと。



僕が地面に着くほど重くなったんだ。

BANBU

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