エリクソンの発達段階

発達段階という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
発達段階とは、わかりやすくいうと、人間というのは成長に個人差はありますが、似たような時期に、似たような課題を得て、それを解決して成長していくという、プロセスのことを言います。

この時期にこういうことを得やすいという意味であって、それより後に得るものが全く起きてないかと言われればそうではありません。重なって同時に起こっていますが、順番に出てきますよといった意味になります。

わかりやすくいうと、生まれてからすぐ様々な課題がよーいドンして、ゴールが近い課題と遠い課題があるみたいなイメージです。(あくまでもイメージです。)

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エリクソンの背景

発達段階で有名な人物にエリクソンという人がいます。
1902年生まれで、1994年まで生きたドイツ生まれの現代の人です。母はデンマーク系のユダヤ人で父親は不明です。
彼が生まれてた時期のドイツというのは、ユダヤ人がちょうど嫌われている時期でした。そのため、ドイツのコミュニティからは差別されていきます。運の悪いことに、彼は北欧風の見た目をしていたので、同じユダヤ教でも差別を受けます。
青年期になったエリクソンは、自分の進むべき道がわからず、放浪の旅をした後ウィーンでフロイトに会い、精神分析を学びました。

エリクソンの理論はこうした差別や青年期の迷いを下地に、発展していきます。

エリクソンの発達段階理論

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Erikson,E.H(エリクソン)の特徴は、生涯にわたって発達段階があることに着目したところです。
これまでの発達段階理論は、主に思春期までを対象としており、生涯にわたる発達に着目したのは、後の生涯学習の理論などに大きく影響を及ぼしました。

また、個人の発達は社会との相互作用で起こるとする「心理-社会的側面」を重視したのもの大きな特徴です。
つまり発達というのは社会との関係の中で花開いていくというわけですね。

それでは図を見ながら順番に見ていきましょう。

乳児期ー基本的信頼VS不信 0〜2

乳児期には、母親と過ごす日々の中で様々な感情を持ちます。(もちろん母親じゃなくても良いですが、便宜上母親とします)

赤ちゃんには簡単な快・不快しか始めはないと言います。例えば、お腹がすいた、不快、おむつが汚れてむずむずする、不快、だから泣くといったように、簡単な感情で生きています。
これを、母親(周りの大人)がしっかりと不快を取り除くことより、母親に対する基本的信頼感を得ることができます。

基本的信頼感を獲得することができた子どもは、希望を持ち、今後出会う様々なものを「信じる」ことが可能になります。それに対し、基本的信頼感を得られなかった場合、負の感情(不快や不安)は消えず、基本的不信感を持ち続けることになります。

余談ですが、小さな赤ちゃんをネグレクトすると、泣いても何もしてくれないとわかるらしく、泣かなくなり、反応もなくなっていくそうです。

自律性 vs 恥、疑惑 2歳~4歳

幼児前期では、「意志」を得ることが課題です。

この時期は、自分で食事ができるようになったり、衣類も自分で脱ぎ着できるようになったりしてくる時期です。よく一番大変な時期とも言われる第一次反抗期がちょうどこの頃ですね。

この時期にやることなすこと、制限してしまうと、失敗したり、怒られたりしたらどうしよう、自分にできるのかなと不安になってしまいます。

口に物を入れたり、危ない物を触ったりと危険も多い時期なので、制限は絶対に必要ですが、チャレンジを失敗しても、受け入れてくれる環境が自律性を作っていくのでしょう。

積極性 vs 罪悪感 4歳~5歳

この時期の子どもは「決意」を得ることが課題です。

色々なことに興味を示す時期ですが、親に注意される、これをやってはいけないだろうと思いながらも、積極性が勝つと自分がそれをしたい理由が分かり目的を持てるようになります。それが他のことにも応用されていきます。

逆に行動を制限されすぎると、積極性が育たず、決意することもなく一つ一つの行動に罪悪感がつのっていきます。

勤勉性 vs 劣等感 5歳~12歳

この時期には幼稚園や小学校などの集団で生活するようになり、同じ年齢の他人と自分を比べるようになります。周りの友人などを見ていて、自分が劣っていると感じる場面もあるかもしれません。

しかし、自分は劣っているからと諦めるのではなく、負けないように自分も頑張ろうと努力することで劣等感がなくなります。そして得られるものは自分にもできるんだという「有能感」です。

勤勉性により成功体験ができると自信がつくといわれています。

同一性 vs 同一性の拡散 13歳~19歳

このアイデンティティという言葉が、非常によく広まってしまった曲者の言葉です。しっかりとした内容は別の記事に託して、概要だけにしましょう。

この時期は、思春期とも呼ばれます。ここでの課題は自分自身は一体何なのかという問いです。自己を確立することにより、自分を受け入れることができきます。若きエリクソンのように、自分は何をすれば良いのか、を考える時期になります。ここで獲得するものは「忠誠」です。

親密性 vs 孤独 20歳~39歳

思春期を乗り越え、次に来るのが青年期初期です。

自分を確立していき、友人や社会、恋愛などにおいて信頼できる人たちとの中を深めていく時期でもあります。そこで出て来る課題は孤独です。

相手に自分を受け入れられるか、自分を否定されたときにどうするかなど孤独に立ち向かいます。ここで、アイデンティティが確立されていないとネガティブな状態になってしまうこともあります。しかし、自分が自分を受け入れ、本当に信頼できる人と関わることにより獲得できるのが「」です。

生殖 vs 自己吸収 40歳~64歳

この時期になると、次の世代を支えていくものを生み、育み、将来積極的に関心を持つようになってきます。

これまでの自分の経験にのみ固執して次世代を考えないと、本来伝えるべきことが見失われ、自分の価値観の押し付けになってしまいます。

そうではなく、次世代を見越し、自分の経験から後輩に伝えることを考え、行動することが「世話」となります。

自己統合 vs 絶望 65歳~

この時期は「良い人生だった」と思えるかどうかによって変わってきます。

自分自身の老いに絶望したり、老後に大きな不安を抱えている場合、精神疾患を発症する場合もあります。自己統合が絶望を上回ると、これまで生きてきた知恵を自分の下の世代に受け継ぐことができ、より良い老後を過ごすことができます。獲得するものは「英知」です。

まとめ

エリクソンの発達段階は、特にアイデンティティを発見したことで、有名ですが、それ以外の課題も成長にとって大事だと思われます。あまり、細分化することや、この時期にこうならないとダメなんだと思う必要はないと思いますが、似たような課題を感じた時には参考になるのではないでしょうか。

岡田祐子・深瀬裕子編(2013)『エピソードでつかむ生涯発達心理学』ミネルヴァ書房

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