見出し画像

1.帰宅|君がいたから

6月28日。
その日は梅雨時にもかかわらず嫌味なほど晴れていた。
火葬場から天へと昇る煙を見つめ、私は一時間程前に別れを告げた人を思い出した。

本橋真己(もとはし まさき)
私の幼馴染みで、家族のような存在でもあった彼は、一言で言えば面倒見のいい人。言葉は少ないけど、人のことを思いやれる優しい人だ。側にいると、暖かく穏やかな気持ちにさせる雰囲気も持っていた。

享年21歳だった。

ここから先は

904字

「側にいてよ。幸せにしてよ。また菜々子って呼んでよ」──失って初めて気付く、その存在の大切さと秘めた想い。人を愛するというのは、どういうこ…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?