5:再会|君がいたから

真己は少しでも私たちと一緒に食べるご飯をおいしいと感じてくれていただろうか?父は、私たちが楽しいと感じているのだから真己も同じ気持ちだと言っていたが。一緒にいることが当たり前で、意識することなどなかったのだが……私たちの関係って、一体何なんだろう?

一度、真己との再会後に、父が「真己くんが相手だったら父さんは安心だ」と言っていたことがあった。そんなことを考えてもいなかった私は、動揺するばかりでうまく処理が出来なかったが、周りから見たら付き合っているように見えたのだろうか?
確かに真己は優しい。でも、ここで思い出して欲しいのだ。真己は根っからのお人好しであることを。
異性の話が中心になるお年頃の中学生時代だって、真己は密かに女子の間で人気があった。誰に対しても優しく接するので、私への行動も特に意味はないのだと思っていた。

再会のきっかけとなった一年前の夏も、ナンパされて困っていたのがたまたま私だったというだけで、真己だったら違う人でも助けているはずだ。
でも、あの時は本当に嬉しかったなぁ。ナンパから助けてもらったのもそうだけど、それ以上に真己に会えたのが嬉しかった。何せ、転校してから一度も連絡をとっていなかったから。

私は、順調に行けば大学卒業を一年後に控えていた春に、両親への懸命の説得で一人暮らしを始めることにした。すごく中途半端な時期だとは思ったが、大学までの道のりが遠く、後二年近くも我慢することは嫌だったのだ。決して両親が嫌になった訳ではないと強く主張したら、最低でも月に一回は実家に帰ることを条件に許してもらえた。

その日は無性にコンビニ限定のデザートが食べたくなり、22時を回っていたのにもかかわらず、着の身着のまま歩いて5分のコンビニへ行った。
50mくらい先にコンビニの明かりが見えた頃、ナンパをされた。歩道側に車を寄せつつ、ターゲットの女性の歩調に合わせて車を進ませる、いわゆるナンパ車である。
ウィンドウが開き、中からいかにもスケベそうな男が、いやらしい笑みを浮かべて私に声をかける。

「ねえねえ、一人? それなら、ちょっと俺達と話でもしよーよ」

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「側にいてよ。幸せにしてよ。また菜々子って呼んでよ」──失って初めて気付く、その存在の大切さと秘めた想い。人を愛するというのは、どういうこ…

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