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また夢の話

私は保険の外交員だ。
古びたマンションの階段を、最上階まで上がっていく。
その階に訪問先があるのだ。
片手には書類ばさみを持っている。
契約更新の書類であろう。

ドアを開けると、色とりどりの布きれが畳にちらかっていて、
老女が裁縫をしている。
私が行くと「ちょっと待って」と、必要な書類を捜し始めるのだが、
見つからないらしく、奥に行く。

やがて、私を手招きして、探すのを手伝ってくれ、と言う。
奥の部屋も布がちらかっていて、そこにもないので、また奥に行く。
そこにも布が散らばって…

一体、いくつ部屋があるんだろう、急に私は不安になる。

この建物に、こんな奥行きがあるはずがない。
同じような部屋をぐるぐる回っているのではないだろうか。

もう、出口がわからなくなった私は、
部屋の隅の古いミシンにそっと付箋を貼る。
ミシンもまた、何台も同じように置いてあるのだ。
同じところを回っているなら、付箋を貼ったミシンにゆきつくはず。

気づくと私はひとり、
出口をさがすためにミシンに付箋を貼って歩き続けている。
もう長いこと歩いているのに、付箋を貼ったミシンにたどり着かない。
そんなはずはない…10部屋も20部屋も、このフロアにあるはずがない…

振り向くと。

老女が私の真後ろにいた。
片手にはがした付箋の束を持って…。

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