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ホームレスのおじいさんと私 in歌舞伎町

トー横がまだコマ劇前と呼ばれてた頃に歌舞伎町の花屋でアルバイトをしていた事がある。ほんの数か月だけなんだけと、その時に遭遇したホームレスのおじいさんのエピソードを書こうと思う。

歌舞伎町では太客が良しとされるが、私についたのは太客ではなくホームレスだった。


ホームレスのおじいさん

ホームレスのおじいさんは花屋周辺に常にいる訳ではなく、日中は割と見かけるかな。くらいの頻度で出没していた。

ホームレスのおじいさんはホームレスの中でもお金持ちだったと思う。コンビニで一万円札を出して会計をしている所や、コンビニのソフトクリームを美味しそうに食べている所を目撃していた。

おにぎりならまだしもソフトクリームは完全なる贅沢品だ。疑問に思い、元ホストの店長に聞いてみたところ、理由はこうだ。

ヤ●ザ屋さんの後ろをしつこくついて回る。すると「おまえついてくんなや」と現金をばらまかれるといった仕組みらしい。店長曰く、つきまとう嫌がらせ行為を誰かに指示されてやってる事もあんじゃねーの。って言っていた

ホームレスのおじいさんは強烈な匂いは発していなかったような気がするから定期的に綺麗にもしていたんだと思う。身なりは綺麗ではなく、歯もボロボロで無かったけど。

ホームレスのおじいさんと私

そんなホームレスのおじいさんが花屋から近いところに腰を掛け、私の事をニコニコしながら眺めるのが日常になった。これが例の嫌がらせ行為でなければ、思い当たる節がある。

お店の内側にopenとcloseが書かれたドアプレートが掛かっている。出勤して店出しをする時にこれをcloseからopenにひっくり返すのが日課だ。しかしよく忘れる。

そんなある日、closeのままお店出しを終えたところ、ホームレスのおじいさんがモゴモゴとopenになっていない事を教えてくれた。

内心、めんどくせえな。と思いながら雑な態度で「ありがとね」と言った。

「ありがとう」と

翌日、ホームレスのおじいさんはお店の準備をしている私をずっといい笑顔で観察していた。負けじとこちらもおじいさんを観察したいところだけど、あいにくそんな暇はない。

また別の日、ドアプレートをcloseのままにしてしまった時はついにお店の入り口まで来てドアプレートをひっくり返すようになってしまった。

普段、煙たがられ、人々からは避けられるホームレスのおじいさん。私たちが日常的に使っている「ありがとう」という言葉は彼にとっては特別の意味をもつのだと理解した。

それ以来、ホームレスのおじいさんにありがとうと言う事はなくなった。

仲良くは出来ないし、助ける術も無い。

ホームレスのおじいさんと私とコンビニ

ホームレスのおじいさんはホームレスであり、決して近所の気のいいおじいさんではない。こんにちは、今日も暑いね。なんて挨拶を交わすわけでもないし見かけたところで、だたそこに居る。という認識である。

ある日、コンビニに昼食を買いに行ったところホームレスのおじいさんもランチタイムだったのかコンビニにいた。

レジに並んでいたところ、私が先でおじいさんが後ろにいた。当時はウイルスなんて気にしない時代。すぐ後ろにおじいさんがいる。

私のお会計のタイミングでついにおじいさんが動いた。

なんとまあ、千円札を出し私の分の代金を支払おうとしたのである。そこに流れる空気は、俺が払ってやるよ。的なもの

完全なる善意から、ホームレスに奢られかけた衝撃。

その時は恥ずかしくて「ちょっ、ほんといいから、やめて!!」みたいな感じだったと思う。その後のことは混乱してよく覚えていない。

おわりに

ホームレスのおじいさんは何でホームレスなのかは分からない。自らホームレスに望んでなる人もいるし、何らかの障害があって誰の手助けもなく仕方なくホームレスになってしまう人もいる。

ホームレスのおじいさんは言葉は理解していたようだけど、喋る時の発音はハッキリとしていなかった。歯がないから喋りづらいだけなのかもしれないし、何らかの障害がありホームレスとして生きていくしか選択肢がなかったのかもしれない。

今、これを書きながらふと疑問に思った事。openとcloseの意味は分かっていたのか。それともただの記号として理解していたのか。

きっと、記号として。しかし、ホームレスには元経営者がいたりする、という話を聞いた事がある。

そんな事を考えても過去の事だから、解決する事なんてないし真相は闇の中なんだけどね。

歌舞伎町は温かい町でもあると思うけど、どこまで他人と関わるかの線引きは特に大事なのかな。と思ったりした。

それは今も昔も変わらないのかもしれない。
自分の身は自分でしか守れないしね。

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