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「普通の人間っていうのは、普通じゃない人間を裁判することが趣味なんですよ」コンビニ人間の書評

狂っているのは、「主人公」か「世界」か。

10ページ読むと、「主人公・古倉恵子」の狂っているところがわかっていき、読み進めるにつれて「世界」の異常性について、明らかになっていく。

36歳未婚。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べ続けるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。そんな女性が、ある日、婚活目的の新入り男性、白羽と出会う。

この白羽という男が、「かなりイカれた人間」として描かれるのだが、だんだんとこの「イカれた人間」の言うことが的を得ている気がし、「普通」とはなにかを考えさせられた。

その中でも、私が気に入ったのは次の3つである。

1.「普通の人間っていうのはね、普通じゃない人間を裁判するのが趣味なんだよ。」

2.「いいですか。ムラのためにならない人間には、プライバシーなんてないんです。皆、いくらだって土足で踏み込んでくるんですよ。結婚して子供を産むか、狩りに行って金を稼いでくるか、どちらかの形でムラに貢献しない人間はね、異端者なんですよ。だからムラの奴等はいくらだって干渉してくる」

3.「この世は現代社会の皮をかぶった縄文時代なんですよ。大きな獲物を獲ってくる、力の強い男に女が群がり、村一番の美女が嫁いでいく。狩りに参加しなかったり、参加しても力が弱くて役立たないような男は見下される。構図はまったく変わってないんだ。」

たしかに、そうかもしれない。と思った。
現代社会のテレビのニュースは「普通」の人間の話はほとんどせずに、この社会に現れた「異端者」の話をする。そして、お茶の間の「普通」の人間は「異端者」を話題にあげ、良いのか。悪いのか。裁判をしているのではないだろうか。

そうして、お互いに「異端者」になることを恐れ、「普通」であることに、いつの間にか縛られている。

本当に「普通」でいることが大事なのだろうか。
そんなことを考えさせられる小説だった。

コンビニ人間・Amazon




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