クリームコロッケの話
クリームコロッケってあるじゃないですか。さくさく衣の中にホワイトソースなりなんなり、なにがしかクリーム的なものが入っていて、揚げたてを食べる際には気をつけないとえらいことになるやつ。出来立てのたこ焼きもそうだけど、調子に乗ってガブっと行くと酷いことになるのよね。熱いから飲み込めないし、かといって吐き出すわけにもいかないし。行くも地獄帰るも地獄とはこのことか(大袈裟)。でもやっちゃうのよね、美味しいんだもの。
さてこのクリームコロッケ、子供の時分にはどうにも苦手だった。何故ならご飯のおかずにできなかったからだ。
私の実家は昔稲作をしていて(よくある「身内だけで食べる分」を作る農家)、主食は白飯であることが多かった。そして、小学校終わるくらいまで、私はどうにも白飯が苦手だった。今でこそお米大好きマンになったわけだけども、味があるのかないのかよくわからんのがダメだった。
それを、醤油なり味噌なりなんなり、しょっぱいおかずがあればどうにか攻略してきたわけだけども、クリームコロッケは駄目だった。そんなしょっぱくないんだもの。ソースかけても駄目。
なお、家族の中でクリームコロッケをおかずにできなかったのは、多分私くらいだ。なんでって、確か兄か父のリクエストで食卓に登場していたからだ。
よくよく考えると不思議なもんである。だってね、私シチューライスは食べられるんですよ。食べられるっていうか好きなんですよホワイトシチューご飯。
とにかく、「おかずにできる気がしないのに米のおかずとして食わねばならない」というのがネガティヴ方面に刷り込まれていたようで、家を出てからしばらくはクリームコロッケを食べなかった……のだが。ここ最近、見かけるとついつい買ってしまっている。何となしにたまには食べてみるかぁ、と買ってみたら美味しかったのだ。
そう、美味しいですよねクリームコロッケ。
手のひらがくるっと返った理由は非常にシンプルだ。おかずとして食べられないなら、おかずとして食べなきゃいいのだ。ご飯が駄目ならパンを食べたらいいじゃない!
かくして私はすっかりクリームコロッケが好きになった。
つぶつぶコーンのとかね、かぼちゃとかね、美味しい美味しい。パンと食べればと書いたけれども、糖質的なあれこれのことを考えるなら、そんなにたくさん食べないことを前提に、もうクリームコロッケが主食扱いでもいいような気がする。
話を思い切り飛躍させると、大人になって家を出て生活するということは、つまるところこういう利点もあるんだな、と思う。
うちの場合、祖父母がお米を作っていて、特に祖父はパンや洋食の麺類を好まない人だったから、ほとんど環境必然的に「クリームコロッケをおかずに白飯を食べる」になっていた。もちろん、食事を作ってもらえるだけでありがたいことだけども、子供の頃はなかなかそれでは納得し難い。
今は主に、私が家族の食事を準備する立場になった。
誰かが嫌いなものは積極的には作れないし、あんまりちぐはぐな食べ合わせにもできないし、なるべく野菜もたんぱく質も……とか、要領がいい方ではないから、考えるのも作るのも大変だけれども、それでも、やってみようと思えば自分で工夫できるのだ。そうやって食べられるもの好きなものが増えていくのは、きっといいことだと思うのだ。
ちなみに余談だけれども、前述のシチューライスは、逆に今では食べられていない。家族が完璧に「シチューにはパン派」だからだ。さすがに1人だけご飯にかけて食べるわけにもいかないので我慢している(冷凍ご飯のストックもないし、わざわざ炊くほどでもない)。パンとシチューだって好きなんだけどね、美味しいんだけどね。
ああ恋しやシチューライス……