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7. ディジュリドゥのスペル

書籍やアカデミックな場ではDidjeridu、店舗やCDはDidgeridooが使われる傾向に

ディジュリドゥは一般的に英語で「Didjeridu」、あるいは「Didgeridoo」と表記されることが多いですが、それ以外のいくつかのバリエーションで表記されることもあり、ディジュリドゥのスペルは定まっていません。

[さまざまなスペルで表現されるCDジャケット]左2枚は「Didjeridoo」。その右、アボリジナルのディジュリドゥ奏者初のソロアルバムを出したDavid BlanasiのCDでは「Didjeridu」。世界的にディジュリドゥの伝統奏法を最も早い時期にはじめたSHOZOの1stアルバムでは「Didgeridoo」が採用されています。

アボリジナル研究を行う政府組織AIAS(現AIATSIS)で、はじめてディジュリドゥという言葉がのった書籍が出版されたのは1963年でした。その時に使われたスペルが「Didjeridu」であることから、オーストラリア政府は現在でも「Didjeridu」というスペルを採用しています。

[Didjeridu表記の例]専門的にディジュリドゥを研究した最初の研究者Trevor A. Jonesの小論には「Didjeridu」というスペルが採用されています。現在はYidakiと表記されていますが、JonesはYirakiと表記していますが、現在はYidakiの方が近いのかも。
Trevor A. Jones - Australian Aboriginal Heritage (1973)

しかしながら、過去にリリースされたCDで使われたスペルでは「Didgeridoo」が多く、書籍などアカデミックな場や公共的には「Didjeridu」が、音楽業界やディジュリドゥ店や演奏家の間では「Didgeridoo」が一般化しているようです。

[didgiridooスペルの事例]新聞に掲載されたディジュリドゥの写真の脇にそえられた文章。多くが
didjEridu、didgEridooなど「E」であるのに対してこのスペルはdidgIridooと「I(アイ)」になっています。古い時代のアカデミックな場以外でのディジュリドゥのスペルはかなり乱れていたようです。

Didgeridooという表記が一般化するのに一番の役割を果たしたのが、2002年に発売された「Didgeridoo & Co. Magazine」です。英語とドイツ語で書かれたこの雑誌は世界初のディジュリドゥ雑誌として脚光を浴びました。

それまではDidjeridoo、Didgeriduなどいろんなスペルも散見されたが、この雑誌の登場によってDidgeridooというスペルが、ある種の権威ずけのような形になって固定化していったように感じます。


日本ではディジュリドゥ or ディジェリドゥ?

どちらの表記であったとしても、それを逐語的にカタカナにするなら「ディジェリドゥ」と表記されるべきかもしれませんが、日本ではなぜか「ディジュリドゥ」という呼ばれ方が広まり現在にいたっています。

いくつものスペルが存在することで日本に入って来た時にある種の混乱と曖昧さがあったことがその原因のように感じられますが、日本でディジュリドゥが広まった1990年代後半には誰一人として「ディジェリドゥ」とは呼んでなかったように記憶しています。

[GORO in the Rockのライナー]日本でディジュリドゥを使って音楽活動をはじめた最初のミュージシャンがGOROさんです。彼の1stアルバムのライナーノーツでは「ディジェリドゥ」と英語のスペルをそのまま逐語的にカタカナにした表記になっています。

その当時、国立民族学博物館の松山利夫教授は「ディジェリドゥ」と表記していました。2000年に松山先生が映像をまとめた「日本のディジェリドゥ奏者たち」というビデオの中のナレーションもはっきりと「ディジェリドゥ」と言っています。

[Charlie McMahonのバンドゴンドワナの日本語盤の帯]義手のディジュリドゥ奏者Charlie McMahonのバンド「ゴンドワナ」のCDの帯には「ディジュリドゥー」という表記になっています。発売年は1999年で、この時期には現在のような「ディジュリドゥ」という表記になる一歩手前という印象です。

このように一つの楽器の名称に色んなバージョンのスペルが存在することは、他の楽器ではあまり見られません。次のコラム「Didjeriduという名称の由来」では、ディジュリドゥという言葉が使われるようになった歴史的経緯の一端や、明確な論証はされてないものの有力な言説とされるものをご紹介します。

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