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荒野

 年々、体がおとろえていくのを感じる。
 ここ最近は、”年々”というよりも”日々”と表現するほうが正しいくらい、身心ともに毎日どこかしらが少しずつ壊れていく。心も体も端の部分から砂となり、足元にある穴からこぼれ落ちていく。砂時計の中にでもいるような気分だ。

 心が壊れるなんて書くと心配されそうなので明言しておくと、希死念慮はない。むしろ長生きしたいし、なんなら千年生きたい。

 とはいうものの、明らかに精神的な面は、昔に比べて鈍くなっている。何に対してもあまり感動しないし、興味もわかないし、この世界に飽きてきた感がある。

 数年前までは、この虚無感は病気によるものなのかもしれないと思っていた。病気とまではいかないにしても、私が異常個体なのだろうと。
 だが、頭の悪い私でも、さすがにそろそろ察しが付く。おそらく、みんなこんなものなのだろう。

 これが大人になるということなのだ。

 この世界には何もない。ひたすらに広がる荒野があるだけだ。
 荒野の中で、『この先に何かがある』と信じて、ひたすら歩き続けるしかないのだろう。神を信じるか、そうでなければ自分を信じるしかない。
 ドラマは何も起きない。
 ここには誰もいない。それでも歩き続けるしかない。
 
 

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