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BALMUDA The Toasterで届けたい「素晴らしい体験」を北米の人たちに知ってもらうために|Deep Dive into BALMUDA

マガジン「Deep Dive into BALMUDA」では、これまで世に出してきた製品から、まだ語られていないストーリーをお届けしています。

バルミューダ製品を海外で販売する際、その国に暮らす人々に合った体験価値を提供するため、細かくカスタマイズ(=ローカライズ)しているという話を前回、ご紹介しました。北米市場へ投入したトースターは、一からエンジニアリングをやり直したと言えるほど、多様な変更を加えています。


現地でのコミュニケーション

ハードウェアの調整を終えたら、お客様に向けたコミュニケーションの準備に入ります。日本で使っている「素晴らしい体験を」というコミュニケーションは、毎朝食べているパンがおいしかったら、人生はより素晴らしいものになりますというメッセージを込めたもの。これを、どのように伝えたら北米に暮らす人たちにも同じようにワクワクしてもらえるか。アメリカ人クリエイターを交えて議論した結果、ここでは「Better Morning, Better Life.」というフレーズを使うことに決まりました。

紹介画像や動画に用いる食材も、現地の人が違和感ないもので撮り直している

余談ですが、アメリカで使ったこのキャッチフレーズを逆輸入し、現在(2023年4月)、BETTER MORNING with BALMUDA キャンペーンを実施しています。

北米でトースターをリリースした2020年はコロナ禍にあり、キャッチフレーズが決まっても大々的な発表会や試食会を催すことができませんでした。

そこで、当初3月の予定だったリリースを4月末に延期し、現地のインフルエンサーを巻き込んだマーケティングを展開することにしました。InstagramやTikTok、YouTubeなどで徐々に話題にしてもらい、「Magic Toaster」や「Game Changer」といった表現で評され、その存在感を強めていきます。

米国で数々のアワードを受賞

インフルエンサー施策が功を成し、BALMUDA The Toasterは北米で瞬く間に話題となりました。VOGUEやForbesなど影響力ある媒体からの評価や、アワードの授与などを受けています。

「日本から来たトースターが我が家のキッチンを変えた」
「評判通り素晴らしいスチームトースター」

コロナ明けに販売拡大を狙う

市場への本格的なプロモーションは、ようやく海外への渡航制限も緩和された2022年後半に開始しました。ここからは海外セールス部坂井忠明さかいただあきの活動にスポットを当てます。

バルミューダが北米進出の準備をしていた2019年、北米でキッチン用品の営業に長年携わってきた坂井の耳にも、その噂は届いていました。バルミューダがアメリカでも特別な存在になると感じ、のちに入社のきっかけとなります。

「これまで日本を代表して食文化の理解を広げるというスタンスで仕事をしてきました。日本の文化を紹介しながら、日本でデザインされた製品の体験価値を広めていくのが自分の使命だと感じています」(坂井)

北米のキッチン用品事情に長けた坂井は、2022年7月入社

キッチン用具の営業スタッフとして延べ11年、北米地域に駐在していた坂井はウィリアムズ・ソノマ(Williams-Sonoma)やクレイト&バレル(Crate & Barrel)、サラテーブル(Sur La Table)といった米国のキッチン家電を扱う小売店と深いつながりがありました。

「これらの小売チェーンは高価格帯のキッチン用品を扱っているので、バルミューダ製品のお客様と相性はいいんです。ただ、米国はオンライン販売が主流で、売り場はショールーム的な意味合いが濃くなっています。ですので、とにかく知ってもらうことに注力しています」(坂井)

北米でトースターをデモ

2022年12月、本格的なプロモーション活動の手始めに、坂井は北米の13店舗を回って店員とお客様にトースターのデモンストレーションを行い、反応を伺いました。

「トースターだけ見せても、私たちがどういう会社で、どういった思想で製品をつくっているかまで短時間で理解してもらうのは不可能です。ですから、こうした場にはキッチン家電に限らず、いろいろな製品を持っていくようにしています。あとは会社について書かれた書物ですね。日本語が読めず内容が分からないとしても、これだけの出版物で取り上げられているという事実は信頼感を与えます」(坂井)

トランクに詰め込まれたバルミューダ製品
バルミューダの哲学やデザインに関する書物をお客様に紹介

「買ってほしいではなく、バルミューダという名前を覚えて帰ってほしいという気持ちで接しています。社名の意味もよく聞かれるので、意味よりも世界観と語感を大事にしたものだとお伝えしています」(坂井)

※より詳しい社名の由来については、こちらの記事をご覧ください。

坂井の営業スタイルは製品の機能ではなく、体験の価値を知ってもらうということに徹しています。たとえ文化が違う国でも、人間の本質的な「おいしい」や「うれしい」という感情に乖離はないからです。

トースターの説明を楽しげに聞く店舗スタッフ

「サクサク(=Crispy)、ふわふわ(=Fluffy)、こんがり(=Golden Brown)、しっとり(=Moist)といった感覚を表すワードはトースターの説明に欠かせません。ただ、スチーム機能に関しては、時間をかけて説明するより実際に食べてもらうのが一番ですね。ここで反応が鈍かったことは、今のところ一度もありません」(坂井)

体験者からは「トースターが変わるだけで、こんなにパンの味が変わるのか」「パンの表面と中身で、食感がまったく違っている」「音だけ聞いても、おいしそうだということが伝わる」といった感想をいただきました。

庫内サイズについての賛否

同時にネガティブなことを面と向かって言ってくれることも現地コミュニケーションによくある光景です。多かったのは、サイズが小さすぎるという指摘。アメリカではブレビル(Breville)、クイジナート(Cuisinart)、キッチンエイド(KitchenAid)といったメーカーのオーブントースターが人気を博しています。そのどれもが、いわゆる“アメリカンサイズ”で、BALMUDA The Toasterを一緒に置くと、見た目半分くらいの印象を受けます。

アメリカンサイズのオーブントースターと並ぶと、BALMUDA The Toasterの小ささが際立つ

しかし、オーブントースターとしては非常にコンパクトであることを利点として受け取ってくれる方も多くいました。ニューヨークやサンフランシスコなど都市型のライフスタイル層に魅力的に映ったようです。

「ご年配のご夫婦や若いカップル、ひとり暮らしの学生などに非常に好評でした。本当は大小両サイズ展開できるといいのですが、まだ北米市場は開拓が始まったばかりなので、今は効率を優先しつつ市場を拡大していけたらと思っています」(坂井)

今年(2023年)1月には現地法人BALMUDA North America Inc.を設立、坂井をはじめ数名が今後、現地に派遣される予定です。すでに北米ではトースターのほかにBALMUDA The Kettle(日本ではPot)、BALMUDA The Lantern、BALMUDA The Speakerを販売中。ラインアップ強化に伴いブランドメッセージは「Better Morning, Better Life.」から「Better Moments, Better Life.」にアップデートしています。

リンク:バルミューダUSのホームページ

次回、マガジン「Deep Dive into BALMUDA」では、トースターのデザインや細部のこだわりについてお届けする予定です。