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カンファレンスデザイン・成功のための3つの視点

QUM、HackOsaka、TEDxKyoto、Design Week Kyotoなど数百人~の規模のカンファレンス運営とデザインに幾度か関わってきたんですが、こういったカンファレンスの中で「デザイナーとして何を見て、どう振る舞うか」というのは、一般的なデザインワークと大きく異なる部分があります。

企画立案の準備段階からリハーサル、当日の運営までデザイナーとして関わると、カンファレンスにどのような視座を持ってデザインするかという点は非常に重要だと考えています。デザインによってカンファレンスの目的や意図をうまく伝えたり、会場を実際に盛り上げたりする事が出来ると実感するからです。
(成功のための視点、とタイトルをつけていますがもちろんカンファレンスの成功は、主催者の企画力やキュレーションのセンス、経験値に依ります。デザインの優劣でカンファレンス自体の成否に決定的な影響を与えることは少ないかもしれません。)

カンファレンスをデザインで成功に導くためにはどうしたらいいか?
僕が考える視点を3つに整理してまとめようと思います。

・主催者の満足度を上げる
・熱狂をつくる
・拡散させる

これらを順に説明していきたいと思います。


1. 主催者の満足度を上げる【隣を向く】

カンファレンスには必ず主催者が存在します。そして主催者ごとに、カンファレンスを通じて達成したい目的は異なるものです。最終的な形式として似たようなものになったとしても、その目的は多岐にわたります。それぞれの主催者の想いに共感し、コミットできるかという点はとても大事です。

デザイナーとして関わると、どうしても制作アイテムの仕様など作業に直結する部分に目をとらわれがちですが、重要なのは一番最初に主催者のコンセプト、目的をきちんとヒアリングし、自分事として身体に刻み込むことだと思います。
毎回毎回、カンファレンス毎にそこまでしないといけないの?と思われる方もいると思います。もちろん「とても共感しました!コミットします!」みたいに声高に宣言する必要はありません。ただ、そのカンファレンスがどういったものか、出来る限り自分で調べてデザインに臨むという姿勢はとても大事です。

カンファレンスの準備は様々なことが直前に決まることが多く、デザインワークに確保できる時間が充分にある事はあまりありません。基本的に全てのアイテムを非常に短い納期の中でデザインし、統一したイメージを創り上げていきます。状況も流動的なため、変更も多く手戻りも頻繁に発生します。
不本意な事ですが、場合によっては間に合わせるために部分的な妥協をする、という選択肢も取らざるを得ないでしょう。

こうした状況の中で、もし仮にデザイナーがカンファレンスの目的を誤解するような事があれば致命的な事態になり得ます。なんとか間に合わせたデザインが、主催者の目指すイメージと違うのに手直しする時間は残っていない、、、止むを得ず妥協をした箇所が主催者にとって最も大事な部分だった、、、極端な例ですがそうしたケースも考えられます。

もちろん皆さんの創るデザインは高いクオリティに仕上がっていると思いますし、それ単体で見れば優れたデザインでしょう。
しかし主催者の目指すイメージ、目的とのズレは決して好ましいものではありません。意識や目指すイメージとの小さなズレは、時間を追うごとに積み重なっていきます。カンファレンスはライブ感が重要だとよく言われますが、カンファレンスが終わる頃には大きな乖離を伴う事もあり得ます。

そうした事を出来るだけ回避し、主催者の目的にあったデザインを提示できるよう、一番最初にコンセプトの確認や意識の共有を行いましょう。
(とはいえ、いつも主催者と直接やりとりができるケースばかりとは限りません。そうした場合には、60%の完成度でもいいので(本当は避けたいのですが、、、)、出来る限り早いタイミングでイメージを共有し、フィードバックをもらいましょう。ある程度の手戻りは覚悟して、数多くのサイクルを回す方法に切り替える事をお勧めします。)

カンファレンス成功のための最も重要な鍵は、あなたの隣にいる主催者の皆さんです。目的を同じくするチームとしてコンセプトを共有し、デザインによってそれを表現することが、成功につながると思います。


2. 熱狂をつくる【中を向く

カンファレンスで話された内容は、後からWeb等を通じて振り返る手段があります。しかし、カンファレンスの現場に行ってはじめて体感できる言語化しづらいライブ感やその場の空気は、リアルの場でしか体験できない貴重なものです。
カンファレンスを行う以上、リアルの場所でしか体験できない何かを参加者の方に持ち帰ってもらうという視点は欠かせません。そうした「非日常」の感覚を、ここでは「熱狂」ということばで言い表しました。

熱狂させるためには、参加者や登壇者、運営スタッフといった関わる人々をいかに一体感でまとめられるか、演出できるかが重要だと思います。

僕からすると、貴重な時間を割いて来てくださる参加者の方には感謝しかないんですよね。参加してもうことへの敬意を、デザインという視覚表現でいかに伝えるかというのをいつも考えています。
参加者になったつもりで、あったらいいなと思うことを考えて、例えば最寄りの交通機関から迷わないように少し多めにサインを配置したり(僕は地図を読むのが苦手でいつも会場へ行くのに迷ってしまいます)、WCやWi-Fiの情報を事前に知らせたり、ネームカードに氏名を印刷しておく、みたいな些細な事を時間が許す限り実現していきます。

その他、場合によっては会場を少し狭くしたり暗くしたりする事も効果的です。ハッカソンやアイデアソンの場合、ワークする時間帯には広いテーブルや作業エリアが必要ですが、最後にプレゼンテーションを行う場面ではその広さを持て余すことがあります。プレゼンターから見た会場の後ろ半分に余白があると、興ざめしてしまうかもしれません。パーティションやおそろいのTシャツを着たスタッフが並ぶといった方法でも、参加者同士の一体感を高められると思います。

参加者の皆さん、登壇社やスタッフを含めた会場にいる全員がカンファレンスの成否を決めます。実際の会場の中にいる人たちに目を向けて、出来る限り皆さんへの「敬意」を目に見える形で実現しながら熱狂的なカンファレンスを目指しましょう。


3. 拡散させる【外を向く】

カンファレンスの認知度を向上させることに反対する主催者はいないでしょう。リアルな場所で開催するからこそ、SNSその他のメディアによって、より多くの人に拡散させる事は重要です。そこでもデザインは大きな力を発揮できます。
参加者に対しても「あの」 カンファレンスに参加した人、というように周りから言われる状況をつくり出せれば、満足感の向上や、次回の参加に向けて大きなモチベーションになります。

そのためにシンボリックなアイコンを制作しましょう。一目見れば、そのカンファレンスらしさを体現するものが好ましいです。加えて、できる限りシンプルな造形にすることで、より人々の記憶に残りやすくカンファレンスのブランディングの一助となります。

以前、デザインの恩師から、シンボルをデザインする時に気をつける事を教えてもらいました。
「子供でも書けるくらいシンプルな造形にしろ」
子供は大人ほど複雑な図形や表現を認知できません。そうした子供でも簡単に理解できて、再現できるようなシンプルで力強いシンボルはとても印象に残ります。

シンプルであることは他にもメリットがあります。
カンファレンスでは広くシンボルを展開します。ネームカードといった小さなものからバックパネルのように大きくあしらうものまで様々です。シンプルな形状にすることで、サイズや用途を細部がつぶれたり、見にくくなってしまうことなく、同じ印象を与えることができるのです。
せっかくのデザインですから、様々なメディアや用途で適切に使えるようにできるといいと思います。

ちなみにカンファレンスで演出のために制作するデザインアイテムはこんな感じでしょうか。
ネームカード、Tシャツ、オブジェ、バナー、統一されたスライドデザイン、オープニング映像、登壇アタック、BGMなど、、、
内部向けの資料でも、デザインがきちんと統一されていると準備段階からみんなのテンションが上がります。各資料のヘッダーなど簡単なものでもデザインを施すといいかもしれません。

カンファレンスを開催して何らかのテーマを社会に問う以上、最後は外側を向く必要があります。会場に来てくれた参加者以外の、顔の見えない外の人たちへひらくことで、より大きな力を発揮できると思います。


おわりに

Balloon Inc.がカンファレンスに関わる際には、3つの点
主催者の満足度を上げる
熱狂をつくる
拡散させる

をいつも頭に置きながら、デザインに取り組んでいます。

上記の中にはUXやデザイン思考などという言葉で括れるようなものもありますが、そうしたフレームワークで説明することをあえてしませんでした。
既存の概念に頼るのではなく、カンファレンス自体を自分事として考え、

隣にいる主催者、中にいる参加者や登壇者、外にいる社会に対して、
それぞれきちんと敬意をもって向き合う

ことがなにより大事だと考えます。

これまで手がけたカンファレンスのデザインをまとめています。
よければクリックしてご覧ください。
https://lloon.jp/conference-design/

Special thanks
Filament, inc : 角さん ・佐藤さん

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