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新聞が読めるようになるニュース解説#1「憲法改正」

 こんにちは。あひる編集長です。記念すべき第1回のテーマは、5月3日にちなんで「憲法改正」。いきなりそんな重いテーマで大丈夫なのか…? 何はともあれスタート。

・憲法は「国の原理原則」

 ニュースの解説に入る前に、憲法とは何か、ということについて簡単に説明しよう。憲法というのは、国がどのように政治を行うか、などについて、基本的な原理原則を定めた法律だ。日本国憲法は1946年11月3日に公布(国民にお知らせすること)され、翌1947年5月3日に施行(実際に効果を発生させること)した。この2つの日付は試験によく出るので押さえておこう。

 憲法で具体的に何が定められているかについては下の図の通り。全てを説明するには大学の講義2コマ分くらいは余裕でかかるので、今回は省略するが、憲法改正については第2章、第3章が争点となってくる。

憲法の構成

 施行から74年たっているが、これまで一度も改正されたことはない。これは日本の憲法は改正するのに非常に面倒くさい手続きが必要だから、とも言われている。憲法改正は、国会の衆議院、参議院でそれぞれ全議員の3分の2以上が賛成し、さらに国民投票で過半数の賛成があれば改正される。本当は両議院の憲法審査会での審査など、他にもいろいろ手続きがあるのだが「国会で3分の2の賛成、国民投票で過半数の賛成」をとりあえず覚えておこう。

 参考までに、改正するのに手続きが厳格な憲法を「硬性憲法」と言い、改正が簡単な憲法を「軟性憲法」と言う。 

・「改憲」が増えた

 前置きが長くなったが、ニュースの解説に入ろう。5月3日は各新聞とも、憲法改正についての記事を掲載しており、どれくらいの人が憲法改正に賛成か、反対かの世論調査結果を公表している。見出しだけ簡単にみていこう。

・改憲「必要」45% 「必要ない」44%<朝日新聞1面>

・改憲 賛成48% 反対31%<毎日新聞1面>

・憲法改正 賛成56%<読売新聞1面>(見出しには出していないが「改正しないほうがよい」は40%)

 ちなみに産経新聞では世論調査の結果はみられなかったが、菅義偉首相のインタビューを掲載し、憲法改正を目指す考えを示している。NHKも世論調査をしており、「憲法改正必要33% 必要ない20%」<NHK NEWS WEB>と報じている。

世論調査

 各紙とも数字の微妙な差があるが、ここで注目しておきたいのは、憲法改正に賛成、つまり「改憲」が増えていること。朝日新聞の調査は、ここ数年は常に改正反対派が改憲派を上回っていたが、今回は2013年調査以来、初めて改憲派が上回った。読売新聞も「近年は改正賛成派と反対派が5割前後で拮抗していたが、今回は差が16ポイントに広がった」と書いている。

・「9条」が一番の論点

 それにしても、どうして憲法改正にやれ賛成だの、反対だのと騒ぐのだろうか? 一番の論点は、戦争の放棄をうたった9条の改正の是非だ。それぞれの立場の主張をみてみよう。

 憲法改正に賛成の立場は、以下のようなことを主張する。

・日本が戦後70年以上にわたって戦争をしなかったのは、日米安保体制や自衛隊が国を守ってくれたおかげだ

・自衛隊について、9条に「国民の安全を守るための必要な組織」と明記して、憲法に違反していないことをはっきり示すべき

・隣国やテロの脅威が増えつつある中、現行の9条だけでは国を守ることができない

 一方、反対の立場の主張はこうだ。

・日本が戦後70年以上にわたって戦争をしなかったのは、9条で戦争を放棄した憲法のおかげだ

・9条を改正すると日本の軍事力が高まり、それに合わせて中国や北朝鮮が軍備を拡大することで、隣国との緊張関係が高まる

・戦争を放棄している国に先制攻撃を仕掛けてくる可能性は少ない。そんな国があったら、それこそ世界のつまはじきものだ

 また、9条以外にも改憲のテーマはある。例えば緊急事態条項を盛り込むべきかどうか。緊急事態条項とは、大災害などのときに政府が超法規的措置を取ることを認め、国民の権利を制限する、ということだ。例えば、災害対応が必要なときに衆議院の任期を延長するとか、新型コロナウイルスの感染防止のために外出を禁止するとか、ということが可能となる。改憲派は緊急事態条項を憲法にきちんと明記して、いざというときに備えるべきだ、と主張する。

 それ以外にも、首相がやみくもに衆議院を解散しないよう制限するべき、内容がショボい第8章「地方自治」の項目をもっと手厚くするべき、などの意見もある。

・改正への遠い道のり

 憲法改正についての論議は、最近起きたものではない。日本国憲法はそもそも敗戦後アメリカに押し付けられた憲法(押し付け憲法論)だから、日本人自らの手で憲法を制定するべき、という意見は昔からあった。自民党はそもそも「憲法改正」を公約に立ち上がった政党で、岸信介首相などが自主憲法制定に向けて運動を起こしていた。

 しかし自民党は、国会で憲法改正に必要な3分の2以上の議員を当選させることができなかった。押し付け憲法論に対しても、現在の憲法は日本人の草案をもとに作られており、押し付けではない。仮にそうであったとしても、当時の世論調査では新憲法に歓迎している意見が多い、という反論がされている。

 さて、岸信介の遺志を継いで任期中の改正を目指し続けたのが、岸の孫にあたる安倍晋三前首相だ。安倍前首相は、憲法改正をライフワークとし、緊急事態条項の創設を訴えたり、憲法改正の要件の引き下げを画策したりした。ただ、史上最も長く首相に在任した安倍氏をもってしても、改正は実現できなかった。

 安倍氏を継いだ現在の菅首相も、改正の考えに変わりはない。就任してすぐの会見で「自民党は憲法改正を党是としてきた」と述べ、安倍氏の方針を引き継ぐ意向を示した。しかし、新型コロナウイルスへの対応で改正への議論は停滞。自民党、日本維新の会などの改憲に賛成の勢力も参議院では3分の2以上の議席を得られていない。改正への道のりは、まだまだ遠いといえそうだ。


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