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洗面脱衣室(powder room) part3

前回(洗面脱衣室 part2)の続きです。

今回は最終で洗面室に関してまとめていきます。

洗面室


実際は洗面脱衣室となることが多いと思いますが、今回は洗面室を脱衣室と兼用しない形で考えていきたいと思います。
最初の洗面脱衣室に関する説明なので、一般的なプランが良いかと考えましたが、むしろ本質的なプランニングの方法と固定概念に縛られないプランにする事で、様々な可能性を想像してもらえる方が良いかと思い、今回のプランを提案させて頂きます。

洗面脱衣室part1洗面脱衣室part2でもお伝えしましたが、室自体の機能や設備として必要な機能を列挙していくと、思いのほか多くのものを必要としません。
一応ですが、以下おさらいとして機能などを羅列しておきます。

洗面室の機能
・マウスケア用品の収納
・鏡
・洗い物をする環境
・ボディ・ヘアケア用品の収納
・手洗い、うがいの環境
・掃除道具(主に洗面台用)
・洗面台の前に立つスペース

洗面室の設備機能
・洗面台(給水関係、排水含む)
・各所照明
・雑コンセント
・その他:タオル掛け、ゴミ箱(必要であれば)

上記の機能なども人それぞれ選択したり、追加したりしてもらって大丈夫ですが、極論から言えば洗面室は家のどこにあっても良いと思います。
施工上の観点から言えば、他の水廻りから離れすぎると配管の距離が長くなってしまうので経済的には得策と言えませんが、それを考慮さえすれば特別なルールはないと言えます。

洗面脱衣室part1でも述べたのですが、脱衣室の空間と兼用すると、来客があった際に手洗いなどのタイミングで入室が必要となります。
また近年は衛星面での懸念もあり、玄関から洗面室までの道のりが長かったり、複数扉があるのは望ましくありません。

それらの懸念を踏まえても、非常にプライベートな空間となってしまう洗面脱衣室ではなく、パブリックな空間に配置された洗面室の方が今の社会には自然で、さらに自由なプランニングの可能性が広がるのではないかと考えます。

ということで今回は、パブリックの要素を持つ空間である廊下に洗面室の機能を配置するプランをご提案して説明していきます。
例を使いながら、具体的に考えていきましょう。

まず、玄関からリビングまでの廊下を想定します。

当然廊下は、他の各居室にもアプローチ出来る通路となるので、そのプラン次第で洗面室がどこに来るかは任意ということになります。
先にもお伝えしたように、施工の観点からなるべく他の水廻り(浴室やトイレなど)に近い場所が望ましいでしょう。

仮に洗面台を配置してみます。

このとき、洗面台の前に人が立つと、廊下が狭くなってしまいますので、廊下幅は広めに設定することをおすすめします。
ただ、そのためだけに廊下幅を広くすることはもったいないので、別の機能を果たす空間を内包させたいと思います。洗面室はパウダールームやドレッサーとしても機能しており、身支度を整えることから相性が良さそうなウォークインクローゼットの役割を今回の廊下には含んでしまおうと思います。
※ウォークインクローゼットについての詳細は、また別でまとめたいと思います。

洗面台の両サイドに大容量の収納を設け、さらに姿見用の鏡も設置しておきます。
人によっては不都合な場合もあるかと思いますが、来客などがなければ廊下もプライベートな空間であり、来客があればパブリックな空間となる廊下の性質は、洗面室においても同様に扱えることがわかりますし、本来プライベートな空間として存在するウォークインクローゼットも時に隠すことでパブリックな空間と共存出来ることがわかりますね。
これはリビングでも言えるかと思いますが、今回はここまでにしておきます。

この段階で、洗面室としての機能はすでに整いました。
設備機能を整えながら意匠についても考えていきたいと思います。

洗面台はすでに設置しました。
本来なら洗面台に関しても細かく説明したいところですが、またそれは追ってまとめたいと思います。

次に照明ですが、基本的には鏡に映る自分に向かって光があたり影が出ないことが大切です。また、その光が眩しくないことも考慮すべきです。
一般的には三面鏡の上部、もしくは両脇に照明を設け、なおかつ乳白のカバー付の照明器具を設置することが定番です。

光の色は自然光に近い温白色がおすすめですが、今回は廊下の照明と合わせて電球色としても良いかと思います。注意点としては、電球色は他の色と比べて暗く感じますので、照度をしっかり出してあげることが重要です。

照明器具の種類ですが、ダウンライトは少し不向きと言えます。天井面からの光の照射となるため、設置位置によっては顔に影が出来てしまいます。ダウンライトを採用するときは鏡と洗面台に立つ自分の位置を確認した上でその中間地点、どちらかと言うと鏡寄りに設置することが必要です。
また、ブラケットライトは乳白カバーが付いているものも多く良さそうなのですが、照度が低めのものが多いことがあります。もしかしたら1台だけでは照度不足になる可能性があるので、その点ご注意ください。
無難な選択としては、乳白カバー付のライン照明となります。光域も広く、照度の高いものも多くありますので、一番おすすめと言えるでしょう。
今回はライン照明を採用してデザインしていきます。

次にコンセントの位置を設定していきます。
今回の場合、あまり多くのコンセントを設置しない方が見た目としては良いでしょう。
かと言って、使用しないわけでもないと思いますので、例えば三面鏡の内部に設けることをおすすめします。そのようにすれば使用するときだけ見える状態に出来ます。
床面付近にもあると便利ですが、廊下の他の箇所と兼用して設置することも良いかと思います。
洗面カウンター上にもあればなお便利ではあります。もし三面鏡をオーダーで作ることが叶えば、三面鏡本体の箱よりも鏡のついた扉を下方向に長くしておき、三面鏡の下に家具コンセントという横長タイプのコンセントを設置すれば目隠しをしながらコンセントを目立たなく設けることが出来ます。

最後に洗面台周辺の仕上げについて考えていきます。
洗面台を利用すると水や石鹸汚れなどが周囲に飛んでしまいます。ここでもやはり耐水性と掃除のしやすさが求められます。
脱衣室の説明とも重複しますので、割愛しますが、今回は意匠も考慮してタイルを採用してみます。
タイルの実施は、他の材料と比べ金額面では高めとなりますが意匠性を高めることが可能です。必要なのは洗面カウンターの上30cm程度あれば十分ですが、可愛くなってしまいがちな印象があります。
今回は違った形でご提示するために床から腰上程度の高さまでをタイルで想定してみます。
タイルの高さを途中で止めるので、仕上げ材の切替箇所に見切りを入れ、廊下も含め全体的に見切りや巾木、収納扉の枠を揃えて意匠に統一感を出していきます。


もちろん意匠に関しては、不便でなければ自由で良いと思います。

これで一通り機能と設備と意匠が整いましたが、今回のプランのデメリットについても説明していきたいと思います。
まず、室温のコントロールが難しいことです。あくまで廊下の一部ということもあり、空調器具の設置は難しいでしょう。暖房器具は設置も出来ると思いますが、滞在時間の少ない場所なのでどこまで考慮するかは人それぞれかと思います。
次に、前提条件ではありますが、来客時の使用に制限があるかもしれないということです。ちょっと歯を磨くとかヘアスタイルを整えるという行為がしづらい場合もあるかもしれません。
そして、そもそも生活にフィットしているかということでしょう。やはり洗面脱衣室の方が生活と合っているということも存分に考えられます。今回のプランはあくまで一例で、何を優先するかを見極めてご判断してもらうことが大切です。

これで今回の洗面脱衣室についての説明は以上です。
長々と説明はしましたが、詳細についてはまだまだ説明しきれていません。また、洗面室を自由に配置出来ることを示したため、多種のパターンを想定出来ます。今後も違った形の洗面室を提案して説明したいと思います。


では、また。

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