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洗面脱衣室(powder room) part1

こんにちは。

私は建築業を営んでいる人間ですが、これまでに多くの実施を行なってきました。
多くの方にとっては人生で一度の買い物をして体験できる家を、私は何度も体験することが出来ました。もちろん家財を入れ、生活し始めて家となるので、手掛けた家も完全に体験出来てる訳ではありません。
しかし、さまざまな事例を見てきたからこそ、こうすればもっと良かった、このプランは意外と良いなど改善をするヒントも多く得られました。
プロとしてお恥ずかしいですが、やはり仕事を通じて気づくことも多くあります。

情報は多くとも、なかなか実感まで得られづらい家の詳細に関する知識・情報を私の実務経験をもとにこれから発信していければと思っております。
※実施でマンション改修が多いことからマンションが前提となることがあるかもしれませんがご了承ください。

そして今回は、洗面脱衣室(powder room)を取り上げます。
この室名を見ると、実際には洗面室と脱衣室にも分けられますが、今回取り上げたい室を正確にお伝えすると浴室の前室、つまり浴室に入ったり出てきたりする場所を取り上げたいと思っており、そこが洗面室になっていることが多いことから洗面脱衣室という室名にさせてもらいました。

まどろっこしい説明となりましたが、実は今回私がお伝えしたい内容がここに含まれています。
それに関しては順を追って説明していきます。
ではいきましょう。

脱衣室の機能

私が考える浴室の前室、つまり脱衣室として必要な機能を羅列していきます。
・脱衣するスペース
・脱衣した衣類の収納
・タオルの収納
・使ったタオルの収納
・着替えの収納
・掃除道具収納(主に浴室用)
最低限がこれらだと思います。
まさに脱衣室ですね。家事室がない場合、脱衣した衣類の処理を考えると洗濯機置き場もこの室にあることが望ましいと思います。ただそれには洗濯をするための準備や取り出すスペースが必要である事を考慮しなければいけません。

また、入浴前後で身体のお手入れをすることも多いかと思いますので、ボディケア用品を収納出来る環境もあると良いと考えます。
こうやって見ると、収納しなければいけない物が多いことに気が付きます。しかも、その出し入れの頻度は非常に高いと言えます。

さらに考えると、入浴中を含め前後で歯磨きをする方もいます。この点を考慮したするとやはり洗面室としての機能も必要かもしれません。

洗面室の機能

では、次に洗面室として必要な機能を羅列していきます。
・マウスケア用品の収納
・鏡
・洗い物をする環境
・ボディ・ヘアケア用品の収納
・手洗い、うがいの環境
・掃除道具(主に洗面台用)
・洗面台の前に立つスペース
洗面室も収納は必要ですが、割と小物が多く使い勝手にも寄りますが、多くの収納スペースが必要な訳ではないことがわかります。

検証

機能から考えると脱衣室には収納を多く、洗面室には小物を入れられる収納を設けることが良いかと考えられます。
ここまでは容易に想像出来ますね。
しかし、見落としがちなスペースに関してはどうでしょうか?
洗面脱衣室で考えた場合、脱衣スペース・洗面台の前に立つスペースが混同することがあるかと思います。また、追加で洗濯機があれば洗濯物を処理するスペースも混同しがちです。洗濯機置場を兼ねた洗面脱衣室を計画する理由にもなるかもしれませんが、スペースを混同することで省スペース化を狙うことがあるでしょう。

これに関して、私は良いとは考えません。
理由としては、
・単純に狭い
・省スペースにすると収納スペースも設けられない。(特に脱衣室側の機能が下がる)
例として、プランを考えてみたいと思います。


※各スペースに記した色付きの円はおおよそ60㎝程度です。
※赤:脱衣のとき、青:洗面台利用のとき、緑:洗濯機利用のとき

上記のプランを見たときに収納スペースを探してみると、あまりないことがわかります。
省スペースを狙ってしまうと、狭さだけを妥協したつもりが収納機能ももれなく確保出来なくなってしまうのです。
当然と言えばそうですが、まずは収納を確保することが最優先としてもらうことが良いでしょう。

過去に私も収納を蔑ろにしたことがあります。
しかし結局収納自体は必要で、省スペース化したスペースをさらに小さくする、もしくは不便な場所に収納するという始末です。

改善したプランを考えます。

少し室の幅を大きくして、洗濯機置場の位置をずらしたプランになります。
これなら収納はある程度確保出来そうな場所がありますよね。
しかし、なんだか窮屈な印象を受けます。
理由は各スペースの距離感にあります。各スペースはわずかではありますが重複していません。とは言え、やはり快適な環境には程遠いのは図を見ただけでも想像できるほどです。
一人暮らしの方であれば全く問題ありませんが、二人以上になると途端に不便が生じます。
同じスペースで二人が作業をすることは難しいので、譲り合いの精神が必要となります。
特に洗面室のスペースは混同すると厄介です。
どのスペースにも作業は伴いますが、脱衣室の各作業はタイミングをずらすことが割と容易です。
しかし洗面台を使う作業があった場合、一方が待つ事を強いられます。
それが絶対ダメなんてことはないですが、避けられればより理想的だとは思います。
そこで、もう一段階進めたプランを考えてみます。

三段階くらい進めてしまったかもしれませんが、解説していきます。
・洗面台を外す
・代わりに大きめの収納と作業台を設ける
・洗濯機置場は隠すように扉を設ける
※合わせて、扉が付けられるように脱衣室入口扉を引込戸に変更
・洗濯機横はハンガーパイプを充実させる
※扉は折戸が最適ですが、引違いになってしまってます。。

だいぶ空間にゆとりが出来たことと、作業性も上がったように感じませんでしょうか?
参考までに上記プランの室内有効寸法は約1400mm×2300mmです。

また、このプランにすることで個人的に違和感を抱いていたことも解消されます。
みなさんはどう考えるかわかりませんが、私は浴室の前室となってしまっている洗面室に来客を通すことを非常に申し訳なく思っていました。
どうしても生活感が出てしまうことや、頑張って隠そうとすると非常に不便になってしまったり。
分離させてしまえば、そもそも浴室前室に来客を招くこともなくなります。仮に招く場合もしっかりした収納があれば問題ありません。
また、洗面室を分離しても他の場所で機能を満たすことは意外と難しくありません。
※洗面室の機能参照

今回はここまでにしておきます。
次回は洗面脱衣室の設備と意匠に関して続きをまとめていきたいと思います。
(洗面脱衣室 part2)

是非参考になれば。


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