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「天皇と右翼・左翼・日本近現代史の隠された対立構造」

「天皇と右翼・左翼・日本近現代史の隠された対立構造」駄場裕司著・ちくま新書

著者は小田部雄次、浅見雅男らの研究を高く評価する。

明治維新から現代までの日本社会、政治対立は、幕末の討幕派・明治天皇と攘夷公武合体派・孝明天皇の流れを汲む久邇宮朝彦・北白川宮能久との対立まで遡る。

それが戦前の宮中某重大事件、終戦の宮城事件を招き、現代の左右対立まで繋がっていると言う。

日本の左翼は反皇室ではない。また、左翼=共和派、右翼=王党派も成立しない。左寄りと言われる朝日新聞は昭和天皇に近い。なぜなら昭和天皇は朝日新聞論説委員の公職追放の緩和をGHQに求めたと言う。

朝日新聞主幹・笠信太郎は安保条約賛成であり、安保反対は産経新聞だった。そこにあるのは親米英派と反米英派の戦いである。

日本の政治的社会的対立を、横軸を倒幕・天皇家派と公武合体・伏見宮旧皇族との対立。縦軸を親米英・現状維持派と反米英・現状破壊派との対立として捉える。

論述の広がりは後藤新平人脈、鶴見和子との関わり、大本教の国家主義、オウム教とソ連との関連、安保ブントと右翼・田中清玄の繋がり、山口組・田岡一雄と児玉誉士夫との対立、昭和天皇側近福田赳夫と岸信介の対立などその広がり、論述範囲は幅広い。

戦後日本の左右対立は米ソ冷戦下のCIAとKGBから金を巻き上げるみせかせ=フェイクの対立だと断言する。

人脈を過度に評価した歴史観、考え方には賛成できない点もある。しかし現在の天皇制を考えるとき、一つの見方として評価しても良いだろう。

平成から令和に代わり、女性天皇問題、皇室の在り方が問われている。小田部雄次著「天皇と宮家・消えた11宮家と孤立する天皇家」の本も参考として読む価値はある。

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