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稲盛和夫・経営者の心得「心と生き方」

「心と生き方」稲盛和夫著・PHP研究所2017年11月発行

本書は稲盛和夫主宰の経営塾「盛和塾」の講演集から抜粋の単行本である。講演ゆえに読みやすい。著者が2022年8月、老衰で死去して1年、思い出したように本書を手に取った。

稲盛は鹿児島大学工学部卒業も、大阪大学医学部受験に失敗した。卒業後も就職難時で京都のガイシメーカー松風工業に就職も給料未払いの貧乏会社、27歳で同僚仲間と共に独立、京セラを創業、第二電電創設、日本航空再建など活躍した経営者である。

本書は人生の生き方、経営者の考え方を述べる。仕事において重要なのは能力でなく、熱意と考え方と言う。それもポジティブな、利他の考え方である。人生の結果=考え方×熱意×能力。マイナスの考え方は全ての結果をマイナスにする。

運命は宿命ではなく、運命は考え方ひとつで変えられる。その変えられる「運命」を「立命」と名付けたのが東洋思想家・安岡正篤である。稲盛自身、臨済宗妙心派僧侶として在家出家しているため、仏教知識も詳しい。

熱意とは努力、目標に向かって死に物狂いで突き進む熱意と覚悟である。稲尾投手は1956年に、別府の名もない高校を卒業、西鉄に入団。貧乏漁師の父母にとって、契約金50万円は見たこともない大金である。

稲尾はバッテング投手として採用される。甲子園出場の同期入団生に「契約金はなんぼ?」と聞くと、500万円と答える。「月給は?」と聞くと30万円と答える。自分は3万5千円の月給。しかし落ち込まず不満も言わず、必死で彼らに負けないように努力した。日経新聞「私の履歴書」で語っている。

仏教で「六度」という言葉がある。六波羅蜜と同じ意味で「六つの行い」を言う。布施、持戒(戒め)、忍辱(耐えること)、精進(努力)、禅定(心の統一)、智慧の六つ。この六つの修行をすることで、徳目を得ることができる。徳目とは人格者、高みのある人間である。

経営者は権謀術策を弄さず、常に反省のある人生を送るべきと言う。人の肉体はエゴ、利己で作られている。その肉体を自分の魂で利他に変化させる。経営とは「利他行」の繰り返しである。

稲盛は第二電電創業のとき、次の言葉を繰返し、自分に言い聞かしたと言う。「動機は善なりや、私心はなかりしか」と。本書でも「経営に権謀術策は一切不要」と言う。

更に「小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり」と言う。経営の厳しさを示す言葉である。最近、経営者が「小者」になったと言われる。かつて日本は「経済1流、政治2流」と言われた。現在は両者とも3流か?今や「後進国日本」と言われる原因はやっぱり人にあるだろう?

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