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データと真実の間に「ファクト・フルネス」

「FACT FULUNESS」ハンス・ロスリング他、日経BP社発行

2019年のベストセラー本。今年になってもベストセラー上位を確保する。著者は公衆衛生の医師で統計学も専攻し、2017年死去した。

刺激的な本である。「世界は金持ちと貧乏に分断されていない!」「格差は縮り続けている!」「世界はどんどん良くなっている!」挑戦的な結論を明らかにして、知識人の常識を問う。

原因は人々がファクトフルネスでないため。思い込みの本能があるからと。即ち、勘違いであると。その根拠を様々な心理学、統計学の根拠を示して説明する。

人が思い込み本能に侵されやすい10種類の勘違い本能パターンを例示する。分断本能(世界は分断されていると思い込む)、ネガティブ本能(世界は悪くなっていると思い込む)、直線本能(物事は直線的に進むと思い込む)など。

間違いを指摘されると怒る人、間違いを認めない人もいる。多くの人は新しい見方として興味を持ち、自分の考え方に疑念を持ったのだろう。

ここに出版社の宣伝の上手さがある。最近の本は刺激的なキャッチフレーズと有名人の推薦が売上に大きな影響を与える。

著者はチンパンジーの実験を示す。チンパンジーに問題を出し、その正解率は33%。何も知らないチンパンジーの正解率すら取れない知識人はまさにチンパンジー以下。刺激的だ。だからファクトが重要と。

批判は簡単である。統計学は活用する立場の使い方ひとつで見方は変化する。統計は統治のための一つの道具でしかない。

事実は一つでも真実は一つではないことは知っておくべきである。即ち、本書でいうようにデータは重要。データの見方ひとつで反対の結論に達する。色々なことを気付かせてくれる本である。

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