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Xデイは来るのか?「Xデイ到来・資産はこう守れ!」


「Xデイ到来・資産はこう守れ!」藤巻健史著・幻冬舎新書2022年8月発行

著者は1950年生まれ、三井信託信託銀行ロンドン支店、モルガン銀行東京支店長経て、参議院議員を経験、現・㈱フジマキジャパン代表である。

著者は「伝説のディーラー」とも、オオカミ少年ならぬ「オオカミ爺」「嘘つき爺」と呼ばれるエコノミスト。一般エコノミストには極めて評判は悪い。

現在、世界的はインフレに突入、金融緩和から金利引き上げへ移行している。日本だけが異次元緩和、低金利策を維持する。黒田総裁の金融政策を財政ファイナンスと批判する。

世界のインフレ、日本の物価上昇の原因は、エネルギー資源高騰、ウクライナ戦争ではなく、世界の中央銀行が金融緩和の結果、通貨の刷りすぎによる過剰流動性が原因と言う。

日銀の過大なバランスシート、政府の巨額な公的債務、経常的な財政赤字は最終的にハイパーインフレを招くと断言する。本当にハイパーインフレになるかは不明だが、理論的な説得力はある。

経済学者は経済政策を一種の社会的実験と見なし、過去の経験から経済事象の因果関係を説明し、将来に対しては不確実な見通ししか表明しない。

それに対して、ディーラーは、将来は常に変化する、過去を振り返っても、それによって市場がどう変化するかが関心の中心である。因果関係の説明より、事象変化による市場の動向が主体である。

経済学者は論理の完全性を重視するゆえに将来は不確定と言わざるを得ない。ディーラーは変化の確率を重視する。将来とは確率の世界であり、少しでも確率があれば、可能性を信じる。

それゆえ極端な理論も発生する。日銀当局、政治家も因果関係と完全性を重視するため、果敢な政策を選択できない。中途半端な政策が日本経済低迷の原因であろう。

アングロサクソン、米国の政策担当者は政治家も含め、実業界、市場の経験者が多い。故に判断は早く、確率の世界で政策を選択する。国民世論もさることながら、市場に対する信頼を重視する。

市場は短期的には混乱を招くが、長期的に正しい判断をする。日本の政治家、当局は、市場は操作するもの、行政は裁量的に行使する習性がある。そのため市場の客観性、透明性が失われ、国民の信頼も失ってしまった。

極端な将来予想を好き嫌いで判断するのでなく、MMT理論の新しい理屈に飛びつくでもなく、原則的な考え方、常識的な思考が不確実な時代こそ必要かもしれない。

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