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AIによる個別化医療の可能性

話題の機械学習に関してこんな研究論文を読んだ。

論文では、高血圧患者の治療において、高リスクアプローチよりも高利益アプローチが有効であることが示唆されている。著者は、2つの大規模な臨床試験と全米の成人サンプルを使用し、個人の治療効果を機械学習に基づいて予測することに焦点を当てた。高リスクアプローチと高利益アプローチを比較した結果、高利益アプローチがより大きな治療効果を示したという結論が得られた。

つまり高血圧患者というざっくりとした母集団と、治療によるベネフィットがより大きな母集団を機械学習によって形成し、両者に治療を行ったところ、後者の方が大きな治療効果が示されたのだ。

アメリカでは、最高血圧140以上の人を「心血管疾患に罹るリスクが高い人」として血圧降下剤により治療をしていたのだが、米国心臓協会と米国心臓病学会は、米国心臓協会学術集会(2017年11月11~15日)で、高血圧の定義を、これまでの140/90mmHg以上から、130/80mmHg以上に引き下げた新しい高血圧のガイドラインを発表した。高血圧の基準値が130に下げられて以来、それが本当に効果があるのか、それとも製薬会社のロビー活動の結果なのかが大きな社会問題になっていたのだ。

高血圧の人でも血圧降下剤が効果的な人に治療を重点的に行えるということが、冒頭の論文から示唆された。血圧降下剤は、効果がない人もいれば、血圧が下がり過ぎる人もいるため、副作用がある降圧剤は必要のない場合は処方しない方がいいし、他に効果的な治療法を検討することが大切である。

ちなみに最近男性と女性とでは、女性の方が体内に薬が残りやすく、副作用が出やすい可能性があるといった研究もされているが、個別化医療が進めば、男性・女性というざっくりとした分け方ではなく、1人1人の遺伝子や生活習慣、身体的特徴など、あらゆる個人の変数を考慮した治療が可能になるわけだ。

もっと言うと病気の治療ではなく、予防や生活習慣の段階から、より個別化されたアドバイスを受けられれば、重篤な病気を事前に防ぐことだって可能になりそうだ。

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