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「秒で」

図書館の匂いについて話題になりました。
図書館はどこであっても、何か似たような匂いがします。
本屋とも違う独特の匂いで、好き嫌いがあるかもしれませんが
私個人は嫌いではありません。

昭和の「調べ物」と言えば、まずは図書館に行って、あたりを付けるために辞書や事典類を調べ、次に関係がありそうな本が集まっている書架の前に立ち、連想ゲームのように関連する本のページを繰っていく…。
役立ちそうなページにはしおりをはさみ、コピーの許可を申請してコピーしてもらう(自分ではできない)。
持ち帰ったコピーを眺め直して、自分なりに内容をまとめ直す…。

遠回りではありますが、こうして情報を集めていると、否が応でも関連情報が目に入ります。その時は関係なくても、いつか目の片隅に入っていたその情報が必要になる場合もあります。
また、複数の情報が、ふっとつながることもあり、そんなときは「あっ!」と叫びたくなる不思議な快感が走ります。
たぶん、そんな快感と図書館の匂いが関連付いて、図書館の匂いが嫌いではないのでしょう。

今は調べ物も便利になりました。
ネット検索すれば、知りたいことはあっという間にわかります。
一方で、ネット検索で見つからなかった場合に、それ以上調べるということもなくなってきているような気がします。
仕事で「この資料にある○○ってどういうこと?」と質問をすると、「あーそれ、僕も気になって調べてみたんですけど、わかりませんでした」との返事。この場合「調べてみたんですけど」というのは「1回ググってみたんですけど」と同じ意味のようです。
検索してもいいから、もう少し検索ワードを工夫するとか、何かできることはなかったかなあ、と心の中でつぶやく昭和人です。

「秒で」という副詞をよく耳にするようになりました。
調べ物も「秒で」解決する時代は、見つからなかった場合は「秒で」諦める時代でもあるようです。
スピード感が求められる時代を象徴する副詞かもしれません。

こんな時代にあって、図書館の匂いが好きな同志が減っていかなければいいのですが。