趣味程度に創作を楽しむアラサー。

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最近の記事

ジャックダニエル×コカコーラの昼

酒を飲んでいる。休日のこの時間から飲む酒は美味い。 平日だともっと美味いが、残念ながら一般的な会社員のため、ここ数年はご無沙汰だ。 今日は久々の丸一日オフだったので、一通りの家事をこなした。 良い天気だから洗濯機は2回回した。トイレはぴかぴかに磨いたし、ざっと掃除機もかけた。 普段はやらない。死ぬほど面倒くさがりなので。 そういえばアクシデントというか、ショックな出来事もあった。 床に打ち捨ててある鞄や帽子をポールハンガーにかけ直そうとしたら、なんとカビが発生していたのだ

    • 職業:詩人になりたかった話

      「詩人になるのと、幸せになるの、お前はどっちがいい?」 もう連絡のつかない、本当の名前も知らないネット上の友人から聞かれた、他愛のない質問。 私にとっては忘れられない質問だ。 結果から言うと、私は幸福を優先し続け、そのまま(一度は)筆を折るに至った。 そもそもあのまま詩作を第一に生きたとして、職業:詩人になるというのは夢のまま終わったような気がするけれど、何にせよ私には幸福を捨てる勇気は持てなかった。 あの頃は、本当に詩人として活動していきたいと夢見ていた。 多少のスラ

      • 前借【十行詩】

        それは、柔らかな貨幣だった ともすれば解け崩れそうな輪郭を 丁寧な所作で一口大に切り分けては どうとも表現のし難い、営みの味を転がして 手垢にまみれたそれを飲み下した あなたの分がまだです 耳鳴りのような声色で銀行員が告げると 歪に千切れた方々から ぬめりを帯びた視線が滲んだので、席を立った 取り立てはまだ来ない

        • 団欒【十行詩】

          食べきれないものを並べた わたしたちの食卓は低く、真四角のこたつだった 静かな入江のような天板は 口にするもので溢れかえった 這いまわる視線にフォークが突き立てられると 水がこぼれた 器用に皿を避けて広がるそれを すくいとるのはわたしの役目だった 醤油さしを取ってほしかった できればわさびのチューブも、一緒に

        ジャックダニエル×コカコーラの昼

          解散【十行詩】

          鼓動と同じペースで手を叩いたら どちらか分からなくなった 手を止めた瞬間に崩れ落ちる身体を想像しては 足元を悠々と闊歩する 蟻の行進を眺めた つま先から少しずつ、食いちぎられるまま おぼろげになった輪郭が 朝に夜に溶けてなくなっていき 音だけが残った 恐らくは、それで十分だった

          解散【十行詩】

          巡礼【十行詩】

          遠くまで来た、という自覚だけを持って 切符をくぐらせる そちらは行き止まりですよ 知っていますよ そうですか、ではお元気で まっさらなロータリーの照り返しが あぶらで滲んだレンズ越しにわたしを刺している 見知らぬひとがその通りの振る舞いで せわしなく通り過ぎていくのを ただ、黙ってみている

          巡礼【十行詩】

          幸福につかれたら

          わたしのデスクから斜め四十五度の視界に ペールブルーの空がのぞく けだるさを隠しもしない ぬるま湯のようなオフィスで貪るのは 春の新作とか、要領を得ない愚痴とか とにかくもふんわりとした何か 満足はわたしをゆるやかに分解していくから 低いフェンスの向こうで手招きをする あれはなんだったか もう、思い出せない **** フルコース仕立てで並べられた 欲しかったものたち あなたは もういい、と言う 空っぽの皿をなぞる わたしの指を折って あなたは もういい、と

          幸福につかれたら

          エントランス

          寂びれたジャングルジムの 緩やかな回転 両手から垂れる、紙袋の重に あれこれと理由をつけて 過ぎるのは、老舗の薬屋前 橙とオレンジの区別で 夕闇を匂わせられる今でも 朱色が嫌いなこと 日に日に増すコーヒーの減り幅 今日もまた、子供を知ってしまった 連作「東京ゴンドラ(10行詩集)」 1作目 初出:2011/03/17 現代詩フォーラム

          エントランス

          別離

          色とりどりに囲まれて 瞼を閉じている ここは砂の城で うみねこが足跡をついばむから 来た道も忘れてしまった 言葉は その時だけのもので 振り返っても、目を凝らしても 形にはならない 壊れない代わりに 決して触れられない 月と、手と、花と、それから 薄ぼんやりとした 灯りを見ている あなたはひとり、瞼を閉じている *初出:2017/01/20 現代詩フォーラム

          憧憬

          光を見た 瞼は下ろしたままだったから、それはぼんやりとしていた 遠くの方で地面へとたどり着いたあと 弾けて消えて あとには朝が残ったようだった 有り金をはたいて 青い鳥を買って 息を潜めて 夜明けを待った そうして 救われる日のために 不幸の真似事をする 酷く干からびた 甘い日々を 繰り返し 繰り返し 咀嚼しながら 耳をふさいで 一人 さざなみを聞く 光があった あたたかい、やわらかな、まるで触れられるもののような素振りで ふやけたままの指先を掠めては すり抜け、踊り、

          憧憬