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【2019/10/28開催・未来のBUTAI#1】リアルのコミュニケーションはますます重要になる 「人との出会い」の場をイノベーションにつなげるためのヒント

2019/10/28(月)、「インキュベーション&コワーキングスペースBUTAI」のオープン記念イベントを開催しました。
当イベントでは「人との出会いをどうイノベーションにつなげるか」をテーマに、インフォバーンCVOの小林弘人氏とディスカッションしました。

登壇者プロフィール

小林 弘人氏
株式会社インフォバーン代表取締役CVO
株式会社メディアジーン取締役ビジネス・インサイダー・ジャパン 発行人
ビジネス・ブレークスルー大学 教授

「ワイアード」「ギズモード・ジャパン」など、紙とウェブの両分野で多くの媒体を立ち上げ、1998年より企業のデジタル・コミュニケーションを支援する会社インフォバーンを起業。国内外企業のデジタルマーケティング全般からウェブメディアの立ち上げ・運用などを支援。コンテンツ・マーケティング、オウンドメディアの先駆として知られる。

2012年、日本におけるオープン・イノベーションの啓蒙を行い、電通と『日本のイノベーション・アワード』を創設。審査員を務める。ベルリン市主催APW2016でスピーカーを務める。同年よりベルリン最大のテック・カンファレンスTOAの日本公式パートナーとなる。2018年より、企業と行政のイノベーターをネットワークするUnchainedを創設。ブロックチェーンの社会実装プログラムを始め、フライングカーや欧州フィンテックなど領域横断型のイベント、勉強会、海外視察を実施。

イスラエル・ブロックチェーン協会アドバイザリーボード、広島県 IoT/AI実証プラットフォーム事業 ひろしまサンドボックス審査員を務める。
主な著書に『新世紀メディア論』(バジリコ)『メディア化する企業はなぜ強いのか?』(技術評論社)『ウェブとはすなわち現実世界の未来図である』(PHP新書)主な監修・解説書に『フリー』『シェア』『パブリック』(NHK出版)ほか多数。

小林 慎和
株式会社bajji ファウンダー&代表取締役
ビジネス・ブレークスルー大学 准教授


これまでに国内外で7社起業しているシリアルアントレプレナー。
大阪大学大学院卒。大阪大学にてコンピュータ工学を専攻。並列処理、分散処理、ソフトウェアテストなどのテーマを専攻。博士号を取得。
野村総合研究所で9年間経営コンサルタントとして従事、その間に世界17カ国での事業立ち上げを経験。2011年グリーに参画。同社にて2年間、海外展開を推進。買収交渉、アライアンス交渉などを担当。

2012年シンガポールにて起業。以来アジアにて5社創業(IT系2社、飲食系1社、その他2社)。2015年3月には、Asian Entrepreneurに日本人として唯一選出。2017年12月、2社目に起業したYourwifi Pte LtdがデロイトTechnology fast 500の中で292位となる。シンガポール企業の中では第3位となる。

2016年6月日本に帰国し株式会社LastRootsを創業。日本初となるICOを実行。同社はIBM Blue Hub賞を受賞。2019年4月に上場企業の子会社化し、同社代表取締役を退任。同月、人と人の信頼関係を可視化するSNSをブロックチェーンで実現するべく株式会社bajjiを創業。
主な著書に「海外に飛び出す前に知っておきたかったこと」、「リーダーになる前に知っておきたかったこと」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など

自己紹介

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小林慎和(以下、慎和):本日は、インフォバーンCVOの小林弘人さんと「人との出会いをどうイノベーションにつなげるか」について対談してまいります。弘人さん、簡単に自己紹介をお願いできますか?

小林弘人氏(以下、弘人氏):はい。私はWIRED日本版を20年以上前に立ち上げたのですが、その後起業し、デジタルコミュニケーションをお手伝いしてきました。ここ10年ぐらいは企業と自治体のオープンイノベーションとデジタル・トランスフォーメーションなどを支援する仕事をしています。ズバリ!という肩書きがないんですよね。「いま何をやってらっしゃるんですか?」と聞かれると、すごく困る(笑)。広い意味ではインキュベーションですが、プロジェクトが立ち上がる手前のお手伝いが多いですね。海外の人に聞くと、「それはクリエイティブインキュベーターだよ」と言われました。

具体的には、「どのようにして社会を変えていくのか」といったことや、イノベーションを起こす手前でのお手伝いや、考え方の整理とか、そういったことの伴奏者をやっています。
あとは「リフレーミング」といって、これまでとは違う思考や構造が必要になった時、それを促す「気づき」やきっかけづくりをさせていただいています。ますます何者かわからなくなっちゃいましたね(笑)。

weworkなどのコワーキングスペースはイノベーションをもたらすか?

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弘人氏:weworkは、どちらかというと、大企業のようなお金のある人をターゲットにしていて、そこに来るスタートアップが大企業と上手くコラボレーションが起こるようになれば良いな、というエコシステムを売りにしているのだと勝手に認識しているのですが、実際はビールが無料で飲めることだけが話題になってしまっていますよね。アクセラレーション・プログラムも展開しているし、メンターも揃えているようですが、もともと、コワーキングスペースが過当競争となる海外では、その場所におけるテーマ設定が重要です。weworkはお洒落で「イケている」感は突出していますけれどね。

慎和:私は、2016年末ぐらいにニューヨークのマンハッタンのweworkに行ったことがあるのですが、weworkってめちゃくちゃおしゃれじゃないですか。あの雰囲気で、脳が一瞬「俺、なんか今日イケてるな」みたいに感じました。ただ、その次が欲しいんですよね。

弘人氏:僕がよく行くベルリンなどは、特にコワーキングスペースが100拠点以上あって、コワーキング大激戦区になっていますね。weworkと真っ向から競合する中東発のMindSpaceの方が雰囲気ありますし、VCや大企業が運営するものや、成長時期や領域別にたくさん存在します。他にも独立系は大学と連携したり、メンターがベテラン起業家で固められていたりなど、スペースの立地よりも中身で勝負しないと選ばれない状況ですね。

慎和:wework以外で、他にコワーキングスペースを使ってる方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

慎和
:結構いますね。3割くらいでしょうか。私もコワーキング歴といいますか、ファン歴は長いです。私の中での一番の出会いは2010年まで遡ります。オランダのユトレヒトにあるコワーキングで、どの席にどんなTwitter/Facebookのユーザーがいるかなどが見えるようになっていました。(参考:SEATS2MEET

そして、そのコワーキングのアプリにログインしてみると、「あっ、ここにこういったユーザーがいるんだ」と分かり、ユーザーの予定表として「10時から17時までいるよ」という時間割とともに、×と○が表示される仕組みになっています。これはなにかというと、×の時間は俺は集中したいから話しかけるなと。○の時間は、隣に来ればいつでもウェルカム。

これは面白いなと思いました。そこで、私はユトレヒトまで行って、「日本にこの仕組みを持って帰りたい」と言ったら、向こうからも「日本から来たのはお前が初めてだ。やれるならやってくれ!」と言われ、それで日本に帰ってきました。

そのとき、私はまだ1社も会社を設立したことがなかったのですが、1社目としてそれをやろうとして、投資家の方のもとを結構回ったのですが、100人中100人が「どうして他人と一緒に働かなきゃいけないの?」とか、そんなのばかりでした。でもずっとやりたかったんですよね。だから、ここのBUTAIは9-10年越しに叶ったことになります。

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▲BUTAIの使命(ミッション)

リアルの出会いをイノベーティブなアウトプットにつなげるためには

慎和:自分でwework含むいろんなコワーキングスペースに行ってみて、どうすればもっと効率よくできるのかな?と考えていました。なんでもウェブで完結する時代ですが、どうすれば、リアルの出会いをもっとイノベーティブなアウトプットにつなげられるのか、ということを考えているんです。今日、せっかく40人以上集まって、40人×3時間だったら120時間あるわけですから、この時間をもっと生かしたい。なにかアイデアはありますか?

弘人氏:最初に話したような、私が手伝っている仕事に関してですが、企業の場合はアイデアや実行力ある人が集まっているケースが多いです。ただ、そのアイデアも複数あったり、漠然としていたりする。アイデアを具体化せずに温めている期間も長くて、そこってすごく冗長的な期間なんですよね。この時に、いろんな価値観に触れたり、多くの人たちと対話をしていくことで、自分の中で「カクシン」に変わっていく。

そして、そのカクシンというのは2種類の意味があって、中心に位置する核心と、自信が増すのほうの確信があります。そういった形に変わっていくようなモラトリアム期間はすごく重要なのですが、大学生でないとそういった時間はなかなか取れない。企業に入ってしまうと、目の前のノルマだったり、あるいは、イノベーションごっこに巻き込まれる。イノベーションごっこというのは、抜本的に企業を変えるつもりもない上司から「イノベーションが流行っているらしいからやってみろ」というもの。最近多いです(笑)。担当者のセーフティネットもないし、そもそも社内アクセラレーションの制度やマインド面が整っていないなか、任された部下だけ疲弊するというケースも少なくありません。

これを言い出すとキリがないのですが、人事システムや組織、上長たちの頭の中身から改革しない限り、難しいです。人事部や法務部など、バックヤードだと思われていますが、ここがイノベーティブにならない限り、企業内イノベーションの実現はなかなか難しい。

それらが揃わないままで、先の「イノベーションごっこ」を始めると、犠牲者が出るんですよね。例えば、「ハッカソンやれ」と言われたら、いろんな人のメンタリングやコーチングの必要が発生しますが、そういう人材を全然用意してもらえないので、結局責任者が全部やることになる。
でも、現業の案件を抱えたままでやらされたりするから、上司からもプレッシャーをかけられて、心が折れる人は少なからずいます。その場合、イノベーションで人を壊しているんですよ。おかしいですよね、それは。

イノベーションは、バンドをやるようにもっとワクワクしながらやる。これはすごく重要です。有名なアメリカのSXSWではバンド演奏があるしお酒も振舞われます。こういった、冗長性を育んでいける「交流」もイノベーションの一つの大きな要素で、すごく重要だと考えています。人と人との科学的結合(ケミカル)ですね。しかし、日本だと仕事をしていないと思われる。僕から言わせたら、家と職場だけ往復している上級職者は仕事をしていないと言える。

加えて、冗長性は、リアルの場でないと育めないと思っています。テレカンは全然悪くはないです。ただ、全く会ったことない人と何時間やってもあまり意味がなく、やはり会ってからのテレカンのほうが効率が良い。
だから、face-to-faceのコミュニケーションはますます重要だなと思っています。

ピッチイベントはイノベーションをもたらすのか?

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慎和:昨今、ピッチイベントが各所で行われています。何十社もが、アイデアを3分程度の短時間で次々ピッチしてくれるのですが、観客は最後のほうは内容を全く覚えていないことが多い。すごくもったいないと思っています。
このピッチイベントの場を、もっとイノベーティブな場にできないでしょうか。

弘人氏:ピッチイベントは、そもそもその目的が投資を求めたりすることだったりしますからね。僕が知っている例で、Fuckup Nightsというのがあります。失敗の経験を共有するというもので、これは良い場だなと思います。日本でホストをやりたいですね。手伝ってくださる方がいたらスペースは用意するので、ぜひ(笑)。

慎和:それはいいですね。しくじり先生のようなものですね。ぜひやってみたいです。

オープンイノベーションは機能するのか?

慎和:今までで一番オープンイノベーションが機能した例はありますか?

弘人氏:海外のスタートアップと日本国内の大手企業で上手く機能した例はいくつか見てきました。国内同士も聞いています。ただ、どの状態を「機能した」というのかは、それぞれです。「事業的に大成功をし、莫大な利益をもたらした」ということだとしたら、極端に少なくなると思います。買収して大成功させた、というケースもありますし、それは意図されたオープンイノベーションか?と問われたら厳しいかもしれません。

慎和:大企業はイノベーションを起こさないといけない。しかし、社内ではリソースというかナレッジがない。だから、オープンイノベーションは外部から活用しよう。そして、そういったイベントを開催する、もしくは外部にオープンイノベーションのマネジメントをお願いするパターンが多いのかなと思っているのですが。

弘人氏:そうですね。ここ数年くらいは、スタートアップと大企業をつなぐプラットフォーム事業が目立ちますよね。あとは、アクセラレーション・プログラムの企画と運営など。前者は、両者をつないであげることはできても、その後のケアはどうでしょうか。大企業も、スタートアップの扱い方を分かっていない。逆に、スタートアップのほうも、大企業の勤務経験がある人がいる場合もあるが、いない場合はお互いなんとなくコンビ解消という例もよく見ます。大企業も、場合によっては「ノウハウを取ってしまえ」みたいな、悪辣なところがあると聞きます。
その知財を自分たちで守れている企業もあれば、逆に、「担当者が良い人だから」と判断しても、大企業の場合は担当者が入れ替わる可能性もあるので、のちに紛争に発展しかねません。

あとは、アイデアのコンタミネーション(他社の営業秘密や技術情報が混入すること)問題。もともと「汚染する」という意味なのですが、アイデアを出し合っている間にコンタミネーションしていって、半々で知財を持ち合うという合議ができていればいいのですが、そこで使われる基幹的な知財が大企業側に属していれば、「ごちそうさまでした」とさらわれてしまう。そこは、スタートアップ側が自分たちで守るしかないのかなと。

逆に、すごく上手くいっている大企業に、関西の老舗企業もありました。ここはむしろスタートアップ側を立ててあげて、「よっしゃ!よっしゃ!」とパトロンに近い形でやってあげたりしてますね。すごく特殊なケースだと思います。

地方創生のカギとは

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慎和:東京以外の出身の方はいますか?

(会場挙手)

慎和
:手を挙げている方の中で、地方にいますという方はそのまま手を挙げたままにしてください。地元を元気にしたい、盛り上げたいと思ってらっしゃる方は?結構いますね。
たぶん、弘人さんのUnchainedでもやっていらっしゃると思うのですが、地方創生とブロックチェーンを絡めた何かがあるのでしょうか?

Unchained:小林弘人氏が立ち上げた、企業内起業家を支援するビジネス・ハブ。ブロックチェーンから始まる分散型Webおよび、暗号通貨が形成する新しい経済圏におけるビジネスモデル構築も支援している。

弘人氏:はい。地方創生は、1つのジャンルのように捉えられがちですが、実は、横串を刺せるイノベーションの種だと思っています。僕自身、様々な行政や自治体とお付き合いしているのですが、だいたいの問題については特殊解が必要というよりも、一般解の横串を刺せます。

たぶん、1つのソリューションを発明したら、横展開できる。その地域の特色を出しすぎてしまうと横串を刺せないこともあると思いますが、基本的には横展開可能です。そして、僕はこの問題は日本にとってチャンスだと思っています。ここには今後日本が輸出できるソリューションが発明できる可能性が結構あります。イノベーションにとってチャンスなので、すごく熱い領域ですね。実際に、東京などでバリバリやっていた方が地方に戻り、本気でやっている方々がコワーキングスペースをハブにして集まっていたりする。ただ、そのような流れは、地方や自治体によってすごく格差はありますが、本気のところが増えたという印象ですね。

慎和:地方創生というと、一番最初に「食」が思いつくのですが、「食」以外になにかありますか?

弘人氏:例えば「林業」やその地域にしかない産業があります。岡山県の真庭市では林業でドローンが使われていますね。広島県でもすでに牡蠣の養殖やレモン栽培のICT化を進める企業と地元によるコンソーシアム型のプロジェクトが走っています。ほかにもブロックチェーンを使っているところもあります。地方金融といいますか、コミュニティ通貨ですね。あとはエネルギー。大手電力会社が今までインフラを供給していた場所が過疎化してしまい、自家発電して自律的に売買できないかなど、色々ありますね。
観光も大きなテーマです。また、空き家問題は、日本中どこへ行っても自治体は困っていますね。

慎和:空き家はだいたい500万戸くらいでしょうか(※ 総住宅数6242万戸に対し、賃貸用住宅の空き家は 431 万戸。2019年4月総務省調べ)。法律はどのように変えていくのが良いでしょうか。

弘人氏:そうですね。放置された空き家は現行の法律だと行政が手出しできないので、まずはそこの規制緩和として、数年前に「空家等対策特別措置法」が登場しました。それを活用すべきでしょうが、明らかに危険な空家には有効ですが、それ以外の「沈黙の空き家」の扱いは難しいところです。また、行政指導の過程で現行のオーナーと揉めることが多いため、小さなコミュニティでの運用は難しいでしょうね。
他にも高齢化によってオーナーの所有権が曖昧なままの物件が多いので、IoTを活用して、その家の稼働率を早期に割り出し、空き家になりそうな手前で手を打とうというアイデアもあります。

慎和:空き家は、有効活用の仕方としてコワーキングスペースにするとかも聞いたことがあります。一番良い方法はなんでしょう?
空き家を有効活用するのか、再開発して違う用途としてリノベーションするのか。

弘人氏:「待ったなし」の極端な例では、猿やイノシシなどの獣害が酷く、だんだん獣のエリアが人間のエリアを押して「廃村」に繋がることがあります。村の放棄をさせないためにも、空き家は綺麗にするか、無くしてしまい、新たに人を呼び戻すために何か策を打つことが必要ですよね。あくまで極端な例ですが、フルスクラッチの無から有を生むので、可能性は広がります。他に廃校の再利用相談などは多いのですが、これはコンテンツの設計次第で、まだ活性化の余地が残っています。

慎和:なるほど。ところで、最近の千葉で台風被災がありましたね。被災といえば、東北の3.11も思い出します。昔、3.11の際に「友達プロジェクト」というのがありまして、ソフトバンクの孫さんの母校であるUCバークレーに、被災地の高校生を300人ほど3週間留学させるというのがありました。ああいう事例も地方創生プロジェクトなのかなと。

そんなふうに、このBUTAIと、他のコワーキングスペースが連携するような、点と点とで連携できる形で盛り上げていきたいと思っているんですよね。

弘人氏:いいですね。それは、僕もブロックチェーンでできないかと考えています。地域通貨だとその地域でしか使えませんが、ブロックチェーンのインターオペラビリティ(さまざまなシステムや組織が連携できること)を上手く活用すれば、例えば鳥取の村にあるブロックチェーンのトークンを南アフリカの村でも利用できる。そうすると通貨圏が広がります。そういったアイデアを検討しています。

慎和:それはUnchainedでもやっていらっしゃるのですか?

弘人氏:はい。ただし、あくまで自治体や企業がそれを採用しなければ意味がないので、まずは啓蒙ならびにアイディエーションの支援などの地ならしから行なっています。今お話ししたように、異なるブロックチェーン同士でも価値交換ができる仕組みをPolkadot(現状のEthereumなどのブロックチェーンの課題であったスケーラビリティやセキュリティなどの解決を目指すプラットフォーム)が提供しており、UnchainedでもPolkadotやSubstrateについての勉強会を開催しています。

慎和:地域が限定される通貨と、オポチュニティ通貨(利用シーンが制限される通貨)があるように、なにかそういった設計をされているのですか?

弘人氏:まだ具体的にPoC(Proof of Concept:概念実証)も回していない段階ですが、いくつかあります。オポチュニティ通貨と、用途に限定されてる通貨があると思っています。

僕が尊敬する経済学者のベルナルド・リエターの主張は、ものすごく要約すると、「補完通貨(=地域通貨)によってコミュニティを回復することができる」です。
補完通貨は、物々交換やギフトエコノミーをイメージしてもらうとわかりやすいです。それらは労力も代替品も双方向のコミュニケーションであり、「地縁」を支える保険でもあります。田んぼ作業を手伝ってもらったら、お礼にお米を配るなど、その営みがコミュニティを形成していると。
でも、そこに法定通貨を持ち込むと、その双方向のコミュニケーションが失われてしまい、まず利己的に振る舞うようになるというのが、リエター氏の主張の超訳です(笑)。詳しくはちゃんと彼の著作を読んでくださいね。現行の法定通貨の仕組みと機能、それが帯びる性格そのものはコミュニティの組成には適していないというのが主張です。それゆえに補完通貨によって連携を取り戻そうというのが主眼なんですね。

そして、その補完通貨という意味での地域通貨がブロックチェーン関連として注目されています。なにも、現在使われているフィアット(法定通貨)を廃止せよ、という話ではありません。あくまで補完なんですね。いま個人的に考えているのは、物々交換的に価値交換をするというERC721に準拠するNFTを使ったアイデアです。

慎和:それに参加するにはどうすれば良いですか?

弘人氏:まず、補完通貨の開発はコラボレーターを求めていますので、いつでもお声がけください。Unchained自体の活動は時々イベントをやっていますので、そちらに参加いただけたら。特に年会費などは取っていません。一年を通していろんな事をやっていて、ブロックチェーンに対する勉強会もやりますし、先日はフライングカーについて勉強会をしました。ちなみに、ブロックチェーンに特化した人材育成プログラムについては有料のものも年に何回か実施しています。

僕たちが心がけているのは、さっきの「リアル」というところと関係していて、著書でも書きましたが、「検索できないことを探す」というのがミッションです。検索って、みなさんが検索ワードを知っていれば検索できますが、普段生活している中では、検索ワードに出会うことがなかったりするわけですよね。ですので、僕らはそういった出会いをたくさん作れる場をこれからも提供していきたいと思っています。ブロックチェーンやAIありきではなく、課題とそれを解決するアイデア、そして未来のデザイン、そこに適切なテクノロジーが揃ってこそのイノベーションだと思います。

慎和:なるほど、本日はありがとうございました。

弘人氏:ありがとうございました。

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告知:毎週水曜日開催「未来のBUTAIイベント」