「Vtuberの配信の構造」を利用すれば読書感想文が簡単に書けるのでは?
立つは陽炎、肌焼く日光、熱風吹きすさぶ8月。いかがお過ごしですか。
学生のみなさんにおかれましては、見ないふりをしてきた「夏休みの宿題」が、そろそろハッキリとした輪郭をもって見え始めている頃かと思います。
わたくし、今年の3月まで高校で国語の教員をしていました。生徒たちに夏休みの宿題を言い渡した時、「え~~~っ」という落胆の声が響く響く。そりゃそうだ。長期休暇まで勉強したくないよな。気持ちは分かるよ。
なかでも特に、読書感想文に苦戦していた生徒が多かった記憶があります。
「どう書き始めていいかわからない」「あらすじを書くのとどう違うのか」「そもそも本を読みたくない」「原稿用紙を見ると狂って虎になってしまう」など、多種多様な声を聞いてきました。
国語科の教員として、なんとかしなければと試行錯誤したものです。
さて、突然ですがここで朗報です。
当時の生徒たちにはもう伝えられませんが、もしこの記事を読んでいる人の中にまだ読書感想文を書いていない学生さんがいたら、耳などをかっぽじってよく聞いてください。
そう、Vtuberの配信の構造って、読書感想文の構造と似てるんですよね。
わたくし、今年の3月まで高校で国語の教員をしていました。また、趣味で6年ほどVtuber(バーチャルYoutuber)の応援をしています。
最推しはどっとライブ所属の神楽すずさんです。清楚メトロノーム、いいですよね。
いつものようにVtuberの配信を見ていたところ、お仕事と推し事のシナプスが電撃的に繋がりました。
つまり、
ということです。
今回はVtuberの配信の構造を基にして、読書感想文を書く方法について解説・検証していこうと思います。いちオタクの思いつきではありますが、うまくいけば全国の学生が夏休みを無事に終わらせる一助となることでしょう。
書き方や構造の類似点についての説明を詳しく読みたい人は、この後すぐの理論編からお読みください。
「おいおい、これ以上長文を読めってのか!?」という人は、下の目次から実践編へ飛び、実際どのように書くかだけでも見てもらえたらと思います。
理論編
読書感想文の書き方の基本として「はじめ・中(なか)・終わり」という考え方があります。
原稿用紙を3つのパートに分割し、それぞれの役割をハッキリさせる方法です。学校で習ったことがある人も多いかもしれませんね。
これをVtuberの配信に適用します。
1時間の配信を3分割して5分(はじめ)・50分(中)・5分(終わり)としましょう。
また、ひとくちに「Vtuberの配信」といっても雑談や歌枠など内容はさまざまですが、今回はゲーム実況配信の想定で話を進めていきます。
なぜゲーム実況なのかは、この記事を読み終える頃には分かりますのでお楽しみに。
ここからは、それぞれのパートについて比較しながら見ていきましょう。
読書感想文を書く時の思考と、配信を見ている時の思考を同時に働かせながら付いてきてください。
・はじめ
冒頭の生徒の声にもありましたが、読書感想文の書き始め方が分からないというのはよくある質問です。国語教師のホームページがあれば「よくある質問」の項目に間違いなく載っているレベルでしょう。
お答えしますと「その本で感想文を書こうと思った経緯」を書くのが定番ですね。どのくらい定番化というと、雑談配信でしゃろうさんのフリーBGMを流すくらい定番です。
「同じ作者の別作品が好き」、「誰かにおすすめされた」、「表紙がなんとなく面白そうだった」、あなたがその本に興味を持った理由であればどんなことを書いてもよいのです。
これがあることによって、読む側もスムーズに感想文を読み始められます。
では次にVtuberのゲーム実況配信の冒頭を思い出してみましょう。
単発ゲーム実況やRPG実況のパート1で(あなたの任意の推しVtuber)はどんな話をしていましたか……?
~シンキングタイム~
ヒント:「『こんちぇり~』『おっすおっすこんばんめぇ!』といった特徴的な挨拶」ではない。それもあるけど! 今回は違います。
そう、「そのゲームを遊ぶに至った経緯」について話してますよね!
「同じ制作会社の別タイトルが好き」、「同じグループのVtuberにおすすめされた」、「steamで高評価だった」、そのゲームに興味を持った理由を少なからず話題にしているはずです。
これがあることによって、リスナーも経緯が知れて嬉しくなります。推しについての情報なんてあればあるだけいいんだから。
また、今回「配信者」や「ストリーマー」ではなく「Vtuber」としているのもこれが理由です。よりリスナーとの団結(コミュニティ)感が強いという点で、Vtuberが最も例として適切だと判断しました。
・中
実際に感想を書いていくパートです。言うなればメインディッシュですね。
全体を3分割した時に「中」の文量をいちばん多くすることを心がけてください。読書感想文なので、感想部分をとにかく厚くしていきましょう。
ではこちらもVtuberの配信になぞらえていきます。
メインなので、もちろん実際にゲーム実況をする部分にあたります。
そう考えると「中の文量を多くする」というのが分かりやすくなりますね。導入に50分かけて、5分ゲームをして、残り5分で締める配信は相当レアケースでしょう。
必然的にこの部分に割く量が多くなるわけです。
本を読んでいる最中に印象に残った場面があれば、随時メモしておくと後から見返すときに便利なのでおすすめです。
Vtuberの「切り抜き動画」を作る時と同じですね。見どころを厳選していきましょう。
・終わり
文章全体の締めとなる部分です。
実はこちらにも鉄板の手法があるのでお伝えします。
それは「未来のことについて書く」ことです。
その本を読んで得た、今後の自分の人生に活かしたい学びを書いてもいい。作者に興味を持ったなら別の作品も読んでみたいという旨を書いてもいいし、同じジャンルを深堀りしていきたいならそれもいいですね。
本を読んでハイ終わりではなく、今後に繋げていくわけです。
そして毎度おなじみVtuberのターン。
ゲーム実況を終えた後の締めのトークを思い出してもらうと、やはりこちらも未来の話をしているのです。
たとえば、次の配信はいつか、次の配信では何をするか、近日中にイベントやライブ、グッズの販売があればその告知をすることもあります。
配信してハイ終わりではなく、今後に繋げているわけですね。
これも取り入れていきましょう。
まとめると、自分の心の中にVtuberの人格を作り出し、読む本=実況するゲームだと仮定して、普段みなさんも見ている配信のように書き進めていくというのが今回の方法論です。
だいぶ妄言感が濃くなってきましたが、なんとなくご理解いただけたでしょうか。
続いての実践編ではこの方法を使って、実際に読書感想文を書いてみたいと思います。
実践編
では、実際に読書感想文を書いていきましょう。
今回は例として、芥川龍之介の『羅生門』で書いてみたいと思います。
既読という前提で進めていきますので、どんな話か読み直したい方は青空文庫さんでどうぞ。
まずは「はじめ」の部分です。
「その本で感想文を書こうと思った経緯」を書いていきましょう!
序文はこんな感じか。目次から飛んできた人は何事かと思うかもしれませんが落ち着いてください。
改めて説明しておくと、自分の心の中にVtuberの人格を作り出し、読む本を実況するゲームだと自己暗示するのが今回の肝です。
普段から心をバーチャルに染めているみなさんならきっと出来るはず。
次は「中」にあたる部分です。特に印象に残った部分をピックアップして感想を書いていきます。感想文の中心になる部分ですね。
切り抜き動画を作る時と同じ視点で、盛り上がったところや見どころを挙げていきましょう。
まずは下人が老婆の行動を見て飛び掛かるシーン。
梯子を上っている最中は怯えていたが、老婆が死体の髪を抜いている現場を見たことで正義感が燃え上がり、取り押さえるために掴み合いをする場面です。
これ『羅生門』を授業で取り扱っていた時から思ってたんですけど、ゲームだったら間違いなくQTEが入るタイプのアクションシーンですよね。
(QTE:クイックタイムイベントの略。ムービー中などに突如コマンド入力が指示され、その成否によってゲームの展開に影響が出る。)
盛り上がる山場なので書いておきましょう。
その後、下人と老婆が問答をするシーンも印象深い。
ので、心の中のVtuberに代弁してもらいましょう。
会話中の選択肢次第で老婆からの信頼度が変動したりストーリーが分岐したりするやつだ。
こうして見ると『羅生門』は『デトロイトビカムヒューマン』みたいなゲームなんでしょうね。下人がアンドロイドに見えてくる。
最後に「終わり」を書いていきましょう。
文章全体の締めになる部分で、「未来のことについて書く」のがオススメです。
ミステリアスな最後の一文や、芥川龍之介の作品数のおかげで今後の広がりを作りやすいですね。
出そろった感想文(Vtuber)を繋げると、このようになります。
いい感じですね。
しかし、これで提出しようものなら入室に緊張感を伴う、コーヒーの香り漂う部屋(通称:職員室)に呼び出されることになるので、最後にちょっとだけ国語ナイズしましょうか。
はいドン!!!
ね?簡単でしょう?
まとめ
それではまとめに移ります。
「Vtuberの配信の構造」を利用すれば読書感想文が簡単にかけるのでは?
という検証を行いましたが、結果としては……
すいません。普通に「はじめ・中・終わり」を理解して、Vtuberパートを経由せずに書いた方が早いですこれ。構造が似てるところまでは良い線いってたと思うんだけどな。
ただ、本っっっ当に文章を書くのが苦手で、なんでもいいから取っ掛かりが欲しいという人には向いている可能性があります。
もし、この記事を読んでいる方で、この方法で読書感想文を書いた人がいたら僕に送ってください。その時は「本当に書けるんだ……」と思いながら読みたいと思いますのでよろしくお願いします。
最後に余談ですが、この記事は某コンテストに応募するため8月末を締め切りと設定していました。
そして、完成したのが8月30日……なぜこんなにギリギリになってしまったのか……。
それは……
めちゃめちゃ推しVtuberの配信やアーカイブを見たり、推しバーチャルアーティストのライブのために東京に遊びに行ったりしてたから~~~!!!
夏を満喫してたらいつの間にか月末だったから~~~!!!!!
みなさんはこんな大人にならないように、宿題は早めに終わらせましょうね。
それではさようなら。
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