苗字について④(豆知識)

ベーグル法律事務所の弁護士の林正和です。

こんにちは。第4回、よく続いたとホッとしています。

今回で苗字については一区切りとなります。これまで以上に実用性のない豆知識的なものですが、最後までお付き合いいただければ嬉しいです。

さて、前回、「佐藤」から「佐藤」に苗字を変更するという説明をしました。こんな変な変更が必要なのは、法律で同じ苗字と言える場合が決まっているからです。

法律では、同じ苗字だと言えるのは、
①夫婦
②親子
この2つの場合だけなのです。
同じ苗字だけど、法律では違う苗字という例は、兄弟だと思います。
一般常識でいえば、兄弟は同じ苗字でしょう。
しかし、兄弟は、夫婦でも親子でもないので、法律上違う苗字なのです。
なお、ここで数学が得意な方は、こんな疑問を抱くかもしれません。

X(第1子の苗字)=Y(親の苗字)
Y(親の苗字)=Z(第2子の苗字)
ならば、X(第1子の苗字)=Z(第2子の苗字)ではないかと。

理屈としては正しいと思います。
しかし、法律は、同じ苗字である場合を2つしか想定していないので、あくまでも兄弟は別の苗字になるのです。

ここから先は、さらに混迷していきます。
皆さんは苗字を1つしか使っていないと思います。旧姓使用をしていれば別ですが、通常、「林」であれば「林」のみが自分の苗字です。

しかし、法律では、苗字は2つの種類があります。
・1つは、法律上の苗字
・もう1つは戸籍にある苗字
この2つは違うものなのです。
具体例をあげましょう。

私(「林」です)がいつものように「佐藤」さんと結婚し、Aが生まれ、やがて離婚することになりました。Aと同じ苗字を名乗りたかった私は、離婚後も、「佐藤」と名乗る手続きをしました。

さて、離婚後の私の
・法律上の苗字
・戸籍の苗字
はそれぞれ何でしょうか?

答えは、
・法律上の苗字は「林」
・戸籍の苗字は「佐藤」
です。
前回、私の子供であるAの苗字を「佐藤」から「佐藤」に変更する必要があったのは、
・Aの法律上の苗字は「佐藤」、戸籍の苗字は「佐藤」
・私の法律上の苗字は「林」、戸籍の苗字は「佐藤」
だったので、私とAとは、法律上の苗字が違っていたのです。
そのため、『子の氏の変更』(詳しくは第3回を)という手続きで、Aの法律上の苗字を変える必要があったのです(これだけの説明では疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。)。

この法律上の苗字ですが、戸籍だったり住民票などの資料では確認できない概念上のものです。そのため、私も『子の氏の変更』を検討するときくらいしか気にすることがありません。
法律上の苗字が何なのか、基本的には気にしないで生きていて何の問題もありません。法律が好きな方など興味ある方は、調べてみてください。(なお、ここでは法律上の苗字と書いていますが、調べるときは、「民法上の氏」という単語に置き換えてください。)

これで苗字については、一区切りです。次回から、また別のテーマになりますので、楽しみにしてください。

なお、ラジオアプリで配信も行っていますので、質問等あれば投稿をお待ちしております。

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