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映画「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」Netflix

「スターウォーズ」の大失敗を横目に、ちゃっかり傑作を作っていたライアン・ジョンソン。「最後のジェダイ」ではボロクソに言われたけど、やはりこういうツイスト展開は映画の醍醐味!

明らかに(意図的に)アガサクリスティ風の古典的展開を思わせる冒頭。「あー、これ人の顔やら名前やら覚えなくちゃいけないやつだ・・」と気が重くなったのも束の間、早々に真相が判明。「古畑任三郎」が好きな私には、この「倒叙形式」は大歓迎。このハーランとマルタの「最初で最後の」シーンが実に良かった。あの状況で、躊躇いも見せずに判断するハーランの何たる潔さ。この人の人生は間違いじゃない。そう思わせるクリストファープラマーの好演。それを受けるアナ・デ・アルマスも可愛いだけじゃない「慈愛」を見せてくれるいいシーンだった。「グラントリノ」を思い出させる頑固爺さんと移民の若者の素晴らしき関係。

(以下ネタバレ)

そして終盤に訪れる二度目のツイスト。裏の裏の、そのまた裏を見事にかかれてしまった。怪しさたっぷりに登場した放蕩の孫ランサム。いかにも彼が黒幕と思わせておいて、最終的には彼がこのクズ家族どもに正義の鉄槌を下すのだろう・・そんな予想がまたも裏切られる。私が間違った予想をしたのは幾つか理由があるが、最大の理由は「ランサムは<キャプテンアメリカ>だから」というなんとも身も蓋もない話。

MCUを全作、それも複数回観てきた自分は「クリスエバンス=キャップ=アメリカの良心」というまさに固定観念に無意識に縛れていた。ランサムが悪態悪態をつけばつくほど、そこからのツイストを疑わなかった。そういう見る側のメタな思い込みを利用したライアン・ジョンソンの見事な手腕とキャスティングだ。MCUを観ていない観客には、早々に黒幕が分ってしまうのかもしれないが、「エンドゲーム」が歴代1位を記録した年(アメリカでは2019年公開)ならではの思い切ったアイデアだ。

それにしても、スロンビー一族の揃いも揃ってのクソっぷり。犠牲者は出てしまったが、この一家に一泡吹かせた後味の良さ。展開のツイストだけでなく、古典的世界観かと思わせてからの、現代的なメッセージへ見事に着地させている。惜しむらくは、一応の主役たる探偵ブランの存在感の無さ。ダニエルクレイグの南部訛りを解する英語力があればまた別なのだろうが、そこが残念。

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