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僕のパンクバンド


3月22日、好きなバンドのライブに行ってきた。
小さい頃から音楽が好きで、高校生の時、初めてMr.Childrenのライブに行き、ずっと憧れだった人を前に衝撃と感動が大きかったことがきっかけで、今では専らライブに生きている。

彼らの曲を初めて聴いたのは、去年の春だった。
好きな人の車で流れていて、叫んでいる声、加速するテンポ、気持ち良さそうに歌う高音、若さ故の無責任感というのか、全てが心地よくて、少年の日常の全てだった。

会話も抜けて頭の中はその音楽でいっぱいだった。

「この曲、いいでしょ」
好きな人が好きな曲、こんなにかっこいいのか。
たまらんなあと心の中で感動していた。

どうやらサブスクは無く、パソコンから私の携帯に移してもらえることに。

1曲しか聴いていなかったけど、心の中は宝箱を開くかのようにドキドキしていた。
彼と別れた帰り道、大音量ループ再生で聴く
「夜の住人」は間違いなく人生のハイライトだ。

それから、彼らのSNSをフォローし、今日までの活動を見たりした。こんな人たちが歌ってるんだ。
見た目はイメージ通り、若くてトゲトゲしている。
なんというか、今まで見てきたバンドの中でダントツでビビッときた。若さ故に笑われ、なめられるのが大嫌いで、弱いなんてダサい!そう聴こえた。

だけど、彼らの音楽にも変わらない寂しさや弱さがあった。1人の夜の孤独に彼らのパンクが寄り添う。

大丈夫だって言ってくれる訳でもない。
なのに、心が安らいで、涙を連れて夢におちる。

彼らのパンクは愛と優しさと弱さが光る。

間もなく彼らの全てに虜になっていた。
小さい箱で広がる彼らの世界に入ってみたい、
直近で8月に神戸のライブハウスでやる事を知り、
好きな人を誘ってチケットをとった。
当日、HEROCOMPLEXとの対バン相手で、先に彼らを見たけど、記憶がよく抜ける私の頭にも、あの日の衝撃は火傷のように今でも残っている。
MCは、無邪気な彼らから言葉に愛を乗せて、シャワーのように私たちに降りかかる。
彼らに足りないものはなんだろうか。足りていないから良いのだろうか。

ライブが終わり、暫くそこに留まって、彼と感想を話していた。ふ、と後ろを振り返ると、そこには
ボーカルがいた。 びっくりした!!ライブハウスに何度も足を運んでいて、こんな事は初めてだった。

あまりの衝撃に思考停止、心臓はドンドン、と音を立てていた。見間違いか?誰も気付いていなかった。だけど間違いではなかった。
恐る恐る声をかけた「かっこよかったです」
誰にでも言える言葉。うっすい言葉しかでてこなかった。恥ずかしかった。だけど、彼は不器用に口角をあげて「ありがとう!」と爽やかに返してくれた。着ていた服の前身頃が白無地だったため、
小さな希望を託していた油性ペンをポケットから取り出して、彼に渡し、「ここにサイン書いてください」と、自分のTシャツの裾を広げた。彼は、え、いいのと戸惑いながらも大きくサインを書いてくれて、写真も一緒に撮ってくれた。夢ではなかった。
でかでかと書かれたサインと一緒に、1時間半電車と余韻に揺られ家路に着いた。今こうして書き起こしても、心臓の鼓動が早まる。いくつになっても宝物だ。

そして12月6日、二枚目のEP「グッドバイブレーション」が発売された。YouTubeで予告を見てから、
早く早くと待ち焦がれていた。
当日の朝、彼と梅田のタワレコへ向かった。
発売日の開店と同時に向かったのに、ちょうど残り2枚だった。人気すぎる。このバンドが売れるのも時間の問題だと思った。さっそく家に持ち帰って、携帯で聴く前に、CDプレイヤーで歌詞カードを片手に部屋の電気を消して耳を傾ける。
やっぱり彼らの音楽だと思った。どこにもない、彼らの世界。小さな世界に出会えてよかった。

あの日から約半年、仕事だなんだと日々に追われ、中々ライブにすら行けていなかったが、またあの日と同じ場所でやることを知り、3ヶ月前から応募していた。来年の楽しみは3/22だというほどにただただ楽しみだった。当日、彼らのロンティとタオル、あの日サインしてもらったTシャツと一緒に神戸に向かった。今回は彼ら主催のツアーだった。
私初のフォーマンだった。3組とも良かった。200人キャパの箱で、心拍数に操られた人々と熱気は直ぐに2列目にまで私たちを運んだ。
間もなくして、彼らが楽器のチューニングやサウンドチェックのため、舞台にでてきた。1人はボロボロに破けたシャツを、頭はジェルでトゲトゲ、ボロボロのコンバース。私の心臓は機能していたか分からない、という程には落ち着かず、瞬きを忘れていた。
そして本番。一発目からライブハウスで聴いたことのない、2枚目のEPに収録された曲だった。
それからセトリなんてどうでもいいと思えるほどに
一瞬で時間が過ぎる。拳上げたいけど、周りが、なんて気持ちは気持ちいいぐらい消えて、気づいたら
ずっと1人拳上げていた。それほど心を突き動かされていた。2曲目の「初期微動継続時間」で、ボーカルと目が会い、5秒ほどこちらをニヤニヤと見つめてきた。間違いなく私だった。
会場が熱気でフワフワとした時、ボーカルが「いいね、バンド楽しいよね」って、下を向いてチューニングしながら放った言葉が、人生どうしようもない!って音楽にあたるくせに、それが楽しくて楽しくてしょうがないんだと、彼の心に触れた気がしてたまらなかった。
それからさらにヒートアップし、
ギターを客席に投げて、ボーカルもダイブ。
ギターは1弦が切れてボーカルの手に戻った。
ちなみに私はボーカルのおしりと背中と頭を触った。

MCがはいり、初めて聴く曲名は
「ティンカーベル」。

ティンカーベル  嘘はつけても心は騙せないね
夏                    冬はまだこわくはないからね

記憶が曖昧で思い出せないが、こんな感じだった。
新曲のようだった。ここに足を運んだ人だけが聴ける特権に、心が濡れて泣いているようだった。
美しく悲しい歌、映画のようだった。

''パンクのせいで台無しだ''
そんなふうにパンクを歌える彼らは強い。

8月、初めて見た時より見た目も変わっていたが、
何より彼ららしさが爆発していて、目を離せばどんどん大きくなっていってしまうのではないかと恐くなった。

そんなバンド、''the 奥歯's'' 。
これからの彼らの躍進を私は傍で見ていたい。




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