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世界ベスト16の次は「さらに上を目指す」 高い壁に挑み続けるYutaponが抱く無限の向上心

2021年10月。Yutaponは大きな壁をひとつ超えた。

『リーグ・オブ・レジェンド(以下、LoL)』の世界大会「Worlds 2021」で、DetonatioN FocusMe(以下、DFM)は日本チームとして初めてプレイインステージを突破し、世界ベスト16に名を連ねた。

2013年にDFMの一員として活動をスタートしてから国内戦を勝ち抜いて世界の舞台へとチャレンジすること8年以上。膨大な努力と時間を費やして成し遂げた快挙から僅か半年後、Yutaponはまた次なる戦いへと身を投じる。「もっと上手くなりたい」という欲求は尽きない。

「本当に長くプレイしているので、変化についていけなかったり自分の腕前が落ちていると感じる瞬間もありますけど、まだまだ『上達する面白さ』があるんです」

ひとつ乗り越えたなら、また次の壁に挑む。Yutaponはそうやって常に自分とDFMを動かし続けてきた。

プレッシャーを跳ねのけたSpring Split

世界大会での歴史的な実績を持ち帰ったDFM。2022年の国内リーグ「League of Legends Japan League(以下、LJL)」のSpring Splitは凱旋の舞台であり、再び次の世界大会への切符を手に入れるためにも負けるわけにはいかない戦いだった。

客観的に見て、DFMは実力でも経験でもLJL出場チームの中で頭一つ抜きんでている存在だ。常に勝利を期待され、前回以上を求められていることも感じる。プレッシャーが無いと言えば嘘になる。それでもYutaponは「僕らのチームはそういう立場」と受け入れ、その期待値に見合うだけの試合内容と結果を求めている。

「前回プレイイン突破まで行ったということは、今後はそれ以上のラインを目指さないといけない。そう考えると、国内でもさらに上達していく必要があります。海外で試合をして、いきなり成長するわけではないので」

チームとしてさらなる高みに到達するためには、個人のパフォーマンスに少しでも上積みが欲しい。それはベスト16の舞台で世界トップレベルの相手を前に感じた「伸びしろ」が鮮明に焼き付いているからだ。

「相手がトップレベルになるほど、自分がミスだと思わないような小さな動きが相手から見るとミスになり、その隙につけ込まれるんです。まだまだ序盤の組み立てやレーニングが足りない」

海外プレイヤーの動きを研究し、得た知識を用いてリーグの一戦一戦でより高度な領域にチャレンジする。新たに加入した「相方」も、Yutaponにとっては大きな刺激になった。

「今季からサポートがHarpに変わりましたけど、LCK(韓国リーグ)でのプレイ経験があって上手いプレイヤーなのは分かっていました。アグレッシブなスタイルなので一緒に色んなことにトライしています。もちろん失敗することもありますけど、自分たちから仕掛ける機会は増えたかな」

韓国人選手と何度もコンビを組んできた経験もあり、コミュニケーションの齟齬もそこまで感じない。僅かにニュアンスが異なる際のコミュニケーションの精度を高めて行く必要はある。だが「良い状況を作れたらやることは決まっているので、細かいコミュニケーションは必要ない」ほど、その連携の高度さが伺える。

進化を求め、真価を問われたSpring Splitは開幕から圧巻の試合運びで連勝続き。終わってみれば19勝2敗の独走劇で実力を顕示した。世界大会「The 2022 Mid-Season Invitational (以下、MSI 2022)」への出場権を懸けたプレイオフ最終戦ではSengoku Gamingの猛追を受けたが、それすらもチームの糧になると信じている。

「2本取られた時はさすがに焦りましたけど、Bo5(3本先取)をフルで戦えたことは、特に新しいメンバーにとって良い経験になったと思います」

オンラインでの参加が続いたYaharongとHarpに面と向かって会えるのは、今回のMSI 2022が初めてとなる。コミュニケーションを深めて試合を重ねるごとに、チームの完成度は上がっていく。自身もチームも、まだまだいくつもの壁を乗り越える自信がある。

全方向への向上心を武器に

国内では圧倒的王者として君臨するDFMだが、一歩国際舞台に踏み出せばチャレンジャーの立場を強いられる。立場が変われば、メンタルへの影響も大きい。

「相手が格上だと勝ち急いでしまうことがあるんです。(勝利まであと一歩と迫った)昨年のWorldsでの100 Thieves戦は、まさにそれが出た試合だと思います」

100 Thieves戦では長期戦の末、隙を突いて相手の本陣を狙う「バックドア」戦術を仕掛けたDFM。しかし鮮やかに対応され、惜しくも敗北

対戦相手の実力をリスペクトする余り、冷静さを失ってしまうこともある。強豪との対戦でのしかかるプレッシャーは想像に余りあるが、Yutaponにとってはそのハイレベルな戦いこそが目指す場所であり、モチベーションの源泉だ。

「強いチームとの試合は、負けても『次はもっとこうしたら勝てるんじゃないか』と考えることができます。世界大会に出場できていない期間もあったので、出場できるだけでも本当にモチベーションに繋がりますね。やっぱり、世界大会で勝つことが一番の目標で、一番楽しいんです」

もっと上手くやりたい。強い相手に勝ちたい。どれだけ壁が高くても、Yutaponにはそれを乗り越えることしか考えられない。オフシーズンには他ジャンルのゲームをプレイすることも多いが、やるならどんなゲームでも最上位のランクを目指して必死でプレイする。彼にとってはそれが当然のことだからだ。

LJLのSpring SplitではチームメイトEviの欠場に伴い、急遽代役でTOPレーナーを務めた。普段は見られない試合の行方には注目も集まったが、変則的な事態でチームは上手く機能しなかった。Yutaponも満足行くパフォーマンスが発揮できないまま、試合には敗れた。

「とにかく悔しかったですね。以前TOPでプレイしていたこともあって『今こんなんなのか』って自分で思って。それから次の試合までにソロランクもTOPで練習して、ほとんど負けはしたんですけど、何とか準備しました」

中1日で臨んだTOPレーナーとしての2戦目。Yutaponはしっかり与えられた役割をこなし、チームを勝利に導いてみせた。試合後には「やっぱりADCの方が面白い」と笑ったが、彼には「『LoL』じゃないゲームだから」「代役だから」は負ける理由にはならない。

練習の成果を発揮し、確かな存在感を発揮したTOPレーナー2戦目

負けたら悔しいし、上手くなりたい。上手くなったら面白い。この向上心があるから、Yutaponはどんな壁をも乗り越える。

後進の選手たちのためにも歩みは止めない

プロとしてのキャリアをDFMに注ぎ続けてきたYutapon。自分たちの強さを追求する一方で、今では日本の競技シーンを牽引している自覚と責任感も持っている。今年は特にそれを意識するシーズンとなった。

「今季から新しいプレイヤーが増えて、才能ある人も多いと感じます。でも、新人が成長していくにはまだまだ時間が必要だと思います。LJLは上手い韓国人選手も沢山いるし、経験を積んで育っていくには良い環境ですから」

Yutapon自身も、高いスキルを誇る韓国人プレイヤーのサポートと試合を重ねることで腕を磨き、国内の難敵に立ち向かってきた。期待の新人たちも、きっとそうやって成長していくはずだ。何度も高い壁を乗り越えてきたからこそ、自分が今度はその壁にならなければいけないだろう。

「だから、もうちょっと頑張っていかないと」

そう言って笑ったYutapon。日本を代表して挑む「MSI 2022」には各国リーグのトップチームが集う。昨年の「Worlds 2021」で辛酸をなめたT1との再戦も決まっており、間違いなく厳しい戦いになることが予想される。しかし、高い壁に挑むのは嫌いじゃない。

「T1は今世界で一番上手いチームだと思っています。対戦してみて、自分たちのどういった点が足りないのか、相手がどんな戦術でくるのか。それを経験する良い機会になると思うので、楽しみですね」

世界の舞台で戦い、壁を乗り越え、新しい壁にぶつかる。また乗り越えるための技術を磨きながら、挑みくる若手には壁となって立ちはだかり、その経験を還元する。こうして、自身も日本シーンも強くなっていけば良い。

今日もまた、Yutaponは壁に挑み続ける。

(取材・文 ハル飯田)

DetonatioN FocusMeが日本代表として出場する国際大会「The 2022 Mid-Season Invitational (MSI 2022)」は5月10日から韓国・釜山で開催。大会の模様はTwitchにて配信されます。


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