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第16話 ベビーベッドで暴れる坊や

今日は私の友だちが家に来ている。

短大の頃に仲が良かったメンバーが5人いて、そのうち同じく育休中の3人が来てくれた。

友1「藤佳ちゃんは保育園にいつ入れるの?」

「もう1年育休とる予定だから、一応2歳児のクラスから入園になるかなーって」

友2「いいなぁ。私たち次の4月から保育園デビューだよ」

友1「私たちは2人とも家から近い保育園に入れたんだよね!」

友2「ほんと良かったけどさ、私はあなたの育休もう1年が羨まし過ぎるわ!」

「ありがとう!その分いっぱい遊んであげないとだけどね」

友2「ところでなんだけど、あれさ、なんでまだベビーベッドなんて置いてるの?」

そう言って友だちがルソ夫のいるベッドを指差す。

「あ、あれはね、ちょっと色々あってね」

友3「これ畳めるよね?何も置いてないなら片付けたら?邪魔じゃないの?」

「まぁ何というか、使ってるんだよね」

友3「そうは見えないけど???」

ベッドの上に寝転がっていたルソ夫がニヤリと笑った。
もう嫌な予感しかしない。

すると、突然ルソ夫が大きな声で叫び出した。

「ワシここに追いやられてんねん!助けてくれー!」

聞こえないのを分かっていてふざけ始めた。

「アンタ!聞こえてへんのか!?ワシは一生ここで過ごさなアカンのか!?ワシは一生このままなんかぁーーーー!!!」

「まぁいいじゃんいいじゃん!つ、次はさ、気分を変えて子どもを遊ばせられる喫茶店とかで集まろうよ」

友3「急にどうしたの!?なんかダメだった?ごめんね?」

友1「まぁでもそれも楽しそうでいいんじゃないの?」

「今度はそうしようね!」



友2「ごめんね、大人数で押しかけちゃって。次は喫茶店にしようね!」

「あぁ、うん!こっちこそなんかごめんね。また集まろ!」

「それじゃあまたね!バイバイ!!」

「ありがとー!」

私は手を振って友だちを見送った。

そして、友だちの姿が見えなくなると同時に私はリビングまで藤佳を抱きかかえながら全力でダッシュした。

「ルーソー夫!!!」

「ななななななんやねん」

「『迷惑かけたんじゃないか』って勘違いされちゃったでしょうがー!」

「……アンタがこんなところに押しやるからやろ」

「うるさーい!」

ルソ夫がいると友だちも満足に呼べない。
やっぱりカフェが1番の得策なのだろうか。

「ところで、藤佳ちゃんはまだしばらく保育園には行かんのかいな」

「人の話勝手に盗み聞きしたな!?」

「いやここにおったら何してても聞こえるわ」

「保育園に入らないからなにか??あっ!もしかしてもう1年育休の私が羨ましいんだな?」

とは言ってみたものの、ルソ夫は年中休みみたいなものだった。

「保育園は強いものが生き残る戦場や。通うだけで知らん間に揉まれて強くなるからなぁ。通わへんのはもったいないで」

「そんなこと言ったってしょうがないでしょ?」

「大丈夫や。ワシに任せとき!」

なんだか今日のルソ夫はやる気に溢れている。
心なしかいつもより輝いて見える。

「でも今の話は全然関係ないねんけどな」

ツッコミ…待ち?

「今日言いたいことを簡単に話すと、パジャマから洋服に着替える時、いないいないばぁさせたらええねん」

「急に何の話?」

「いないいないばぁしたら自分で服を引っ張って頭を出すやろ?つまり自分でできそうなことを見つけて、やってもらうねん」

「簡単に話すというか、テキトーに話しただけでしょ」

「なんでもええねん」

「じゃあ『ゴミ箱にこれ捨ててきてねー』とかでも良いの?」

「それもええけど、なるべく自分の身の回りのことをやってもらうのがええな。お出かけ帰りに自分の靴下は自分で脱いでもらうとか」

「そのぐらいなら今でもたぶんできると思う。だけど何をやらせていいのか分からないかも」

「『難しいかな』と思ても意外とできるもんやで。ご飯もフォークに刺して置いとけばそのうち自分で食べるやろうし、オムツ替えだって毎回一緒にオムツ取りに行ってたら『オムツ』言うだけで持ってきてくれるようになるやろ」

「そこまでできるのかな?」

「そう。その気持ちが子どもの成長にブレーキかけてまうねん。案外いけるもんやで。まずはガンガンやらせてみい」

「意外とスパルタなんだね」

「スパルタちゃうやん。できるようにさせるんじゃなくて、できることを探すだけやって」

「何でもかんでも私がやるなってこと?」

「まさにそれや!それが言いたかってん」

「ルソ夫の例えが下手過ぎるんだよ」

「そんなこと言わんといてーや」

「え、ごめんね」

そんなことでへこまないでほしい。

「それよりもまたこの家に友だち呼んでええからな」

「もうこれからはカフェで集まりますから。ルソ夫に盗み聞きされることもないので!」

「そんな意地悪言わんといてえな。狭いけど居心地は悪ないで?」

「そもそもここ私たちの家ですから!狭いとか言うなら出て行ってもらっても…」

「嘘です!すみませんでした!!」


23.できること、できそうなことはやらせてみる

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