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掌編「家庭訪問」446文字

「…と、いうような感じです。優秀なお子さんです」
「なるほど、なるほど」

今学期も、担任の家庭訪問はあっという間に終わった。僕はいわゆる優等生だったから、これと言って話すことも無いようだった。

この先生とは2年目の付き合いだ。何回か家庭訪問に来ているが、僕の家は決まって最後の時間帯に割り当てられた。

「いつも有難う御座います。今後とも、息子をよろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。それでは…」

「いや~、しかし相変わらず見事な水槽ですよね。うちもグッピーを殖やしてまして。もし宜しければ、何匹か交換しませんか」
「良いですね、是非しましょう!ちょうど新しい血を入れたいと思っていたんです」
「有難う御座います!また改めて寄らせていただきますね。…それと、こっちの水槽は何ですか?前回はなかった気が」

先生と僕の父は趣味が合ってしまい、お互いに家庭訪問が楽しみなのだった。

うちの訪問が最後の時間帯に割り当てられるのは、次の時間を気にせず趣味の話をするためである。

ごゆっくりどうぞ。

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