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掌編「穴の中の君に贈る」@毎週ショートショートnote

あたりは水浸しだ。

最後に残ったのはこの部屋で、他はみんな崩れてしまったようだ。

たぶんもう、この部屋のオレたちしか残っていないのだろう。

なおも水位は上がり続け、いずれこの部屋も沈んで崩れる。

なぜ上に逃げないのかって?そりゃ、逃げる場所があれば逃げるさ。ないから逃げない、逃げられないんだ。

自分の身体の何十倍もの水の塊がひっきり無しに落ちてくる状況を、キミは想像したことがるか?

ここ数ヶ月の記憶が思い出される。白い煙がだんだん降りてきて部屋を満たしていったな。霧みたいな液体だったこともあったな。

その度に少数になり、その度に住み家を変え、その度に苦労して働いた。

もう、このシステム辞めればいいんじゃないかな。

水位も上がり続ける。今回ばかりはもう無理かな…。

なぜか生きてる。水もひいた。何匹か回りに仲間もいるようだ。また移動して働かなくちゃいけないのか。

あれ?でも、今回は…。

女王がいない。オレたち終わったんじゃね…?


(407文字)

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