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ねむねむの森 第三章

(三)

「ホ〜ウホゥ
もう うるさくってねていられない
きょうは太陽さんだけじゃなくて
ねむねむさんもおしゃべりしているんだね
そして この 子とりのような声はだれだい?
おやおや これはこれは かわいい小さな人間さん
ねむねむの森へ ようこそ」
と 
みるくの木のねもとの小さなあなから 
かおをだしたのは 
あなほりふくろうさんです

あなほりふくろうさんは その名のとおり 
ふくろうさんのなかまですが
ちょっとかわっていて
ほかのふくろうさんが元気におきているよるには
ぐっすりねています
そして 
太陽さんがでているひるまにおきているんです
でも
ほかのどうぶつさんよりはずーっとおねぼうさんですよ

そしてなんと
羽をひろげてとぶことだけじゃなくて
地面を走ることがとーっても上手なんです
ほかのふくろうさんより長い足で
はやくとおくまで走ることができるんです
だからとってもかっこうがいい と 
じぶんで おもっているんです

「おはよう あなほりふくろうさん
おこしちゃったみたいだね ごめんよ」
「ホゥホゥ いいんだよ ねむねむさん
きょうは やることが たーくさんあるんだ
だからいつもよりはやくおきることができて よかったよ
ホゥら
きのうの夜 みずさんがちかくまできただろう
みずさんがぼくらのエサになるものを
たくさんはこんできたはずなんだ
それをあつめにいくのさ
ふだんはありつけないすばらしいごちそうだからね
ホホゥ ところで 
そこでおはようのみをたべてる
小さなにんげんはだれだい?」
と いいながら 
あなほりふくろうさんは はねをひろげて
ベッドの上までまいあがりました

「うわぁああ 
ふくろうさんがじめんからとんできたぁ!」
と うみちゃんは びっくり

「ホホホホホーゥ 
おどろかせてごめんごめん
ぼくは あなほりふくろう 
きみは だれ?」

「わたしは うみっていうの
きのうのよる お水さんがお口をとじるときのいきおいで
ここまでとばされてきちゃったんだって
でもこれからねむねむさんといっしょにおうちにかえるんだ!」

「ホホホーゥ うみちゃん っていうのか 
きみは元気で勇気があって 太陽さんのようだね
みずさんがきた方にある村は、、、」

といって あなほりふくろうさんは
夜におきているふくろうさんがもってきてくれた
おしらせをよみました

「ホホゥ
うみちゃんの村はリーシャ村だね
ぼくはよーく知っているよ
リーシャ村にはすばらしい畑がたくさんあって
ぼくはときどき 悪さをする虫をたいじをするために
おばあによばれてしごとに行くから 
よーく知ってる
そうか 
うみちゃんはリーシャ村からきたんだね」

それをきいて 
うみちゃんのむねが 
どきん! となりました
「あなほりふくろうさん!
わたしのリーシャ村を知っているの?
おばあのことも知っているの?」

うみちゃんはとつぜんなつかしい村のなまえと
大すきなおばあのことをおもいだして
うれしさで心がわくわくしました
そして 
さみしさもやってきて
さっきまでの元気と勇気が
むねのおくにかくれてしまいそうになりました

だけど
うみちゃんはすぐにおもいなおしました
(だいじょうぶ わたしは ひとりじゃない)

そして おなかにちからをいれて大きな声を出しました
「あなほりふくろうさん!」

「ホホォ! なんだい うみちゃん」
あなほりふくろうさんは楽しそうにこたえます

うみちゃんは その楽しそうなあいづちに元気をもらって
しゃべります

「おばあはね わたしのおかあさんの
おかあさんのおかあさんのおかあさん なのよ!
百さいをとっくにすぎていて もう声がでないんだ 
いつもはお布団の中でねているけど
ときどきおきてきたときは
木のかげにすわっているんだ
でもね
うみはしっているの
おばあはいつでも村にこまったことがおきるとおきてきて
だれかとお話をして 村をたすけてくれるんだ
あなほりふくろうさんにも虫さんのたいじをおねがいしたんだね」

「うみちゃん そうだよ
でもね ちょっとちがうんだ   
おばあがおねがいするのはぼくじゃなくて 
長老ふくろうなんだ
ぼくは長老ふくろうからおばあのおてつだいをしてきておくれ
といわれて おばあのところにいくんだ
おばあはねむねむの森のことをよーく知っているから
だれにでもかまわずおねがいをするなんてことは しないんだ
ぼくたちにはぼくたちのせいかつがあるからね
だから おばあはまず 長老ふくろうに話をして
長老ふくろうが 
ぼくたちふくろうや森のどうぶつたちに     
おばあのお手伝いをしてくるようにって言うのさ
これが すじ をとおすってことなんだよ
ホッホッホォ」

あなほりふくろうさんが 
むねをそらせて
空中でとびながら
うみちゃんに話していたとき

ねむねむさんが どこかからもどってきました
パンパンにふくらんだ 
リュックサックをせなかにせおっています

そのリュックサックの大きいこと!
まるで
大きなリュックサックにねむねむさんがぶらさがっているようです

よーくみると
ほんとうにぶらさがっています
リュックサックからたくさんの木のつるがのびていて
その先をいろんな鳥さんたちがくちばしにくわえて
リュックサックとねむねむさんをはこんでいます

「ぼくはひとりでだいじょうぶって言ったんだけどね」
と ねむねむさんがはずかしそうに言うと

「チュンチュン
ねむねむさんがはじめてこの森をでるって言うんだもの
お手伝いしたくてしかたがないのよ」

「ピーヒャララ
そうよ そうよ 
わたしたちの大すきなねむねむさんが
はじめてこの森のそとにいくんだから」

と 2羽の鳥さんがおしゃべりしたとたん
くわえていた木のつるがポロリとおちましたが
リュックサックとねむねむさんはぶらさがったまま

いったい何羽の鳥さんたちがつるをくわえているのでしょう
バッサバッサ パッタパッタと羽をうごかす音だけが音楽のようにきこえます

「ぼくはまえにこの森のまわりや 
そとのようすをきいたことがあるから
だいじょうぶだよって言ったんだけどさぁ、、、」

ねむねむさんは もうあきらめたように
でも ちょっとうれしそうに言いました

そして
「あのね 鳥さんたちにきいたんだけど、、」
と ねむねむさんがはなしはじめたとき
バッサバサっと    
鳥さんたちのまん中にいた大きなめすのコンドルが
うみちゃんのベッドにまいおりて
あたたかい大きな声で言いました
「おはよう うみちゃん
おはよう あなほりふくろうさん」

「おはよう コンドルのおかみさん
ダンナさんはあいかわらず旅に行っているのかい?」

あなほりふくろうさんがたずねると

コンドルのおかみさんは赤い目をキラキラさせて
白いえりまきをふわふわゆらして
うれしそうにいいました
「うちの素敵なダンナさんは ゆうべ帰ってきたんだよ
ひと月ほどだったろうか 
いろんなところに行っていたそうだよ
でも
ゆうべの水さんがあんまり大きくお口をあけたから 
おどろいて
この森のことが心配で戻ってきてくれたんだ
うちの素敵なダンナさんはなんてやさしいんだろう」

コンドルのおかみさんはダンナさんのことが大すきだから
ダンナさんのことを話はじめるととまらなくなるんです
つるをくわえた鳥さんたちの中にいた
カラスくんは
そうなることを知っているので 
すぐにおかみさんに話しかけます

「おかみさん はやくあのことを教えてあげなくちゃ」

「あらあらそうだったね カラスくんありがとう
あなたはいつもしっかりしていて たよりになるよ」
と いうと
コンドルのおかみさんは話を続けました
「うちのダンナさんがね
ゆうべおそくまで水さんの様子をみていたんだよ
そうしたら
水さんがお口をとじたあとに 
ドーナツのかたちの池ができていたんだって
ほら にんげんがすんでいる小さな丘があるだろう
その丘をかこむようにドーナツのかたちの池ができていたんだってさ

きょうの朝おきて森の上をさんぽしていたら
ねむねむさんが木のみを集めているようすがみえたから
どこかに行くのかい?って聞いたら
にんげんの村まで歩いて行くって言うじゃないか
そういうことなら みんなで手伝ってあげないとって思ってね
はやおきの鳥たちに声をかけたってわけさ」
地面に下ろしてもらったねむねむさんがつづけて言いました
「コンドルのおかみさん ありがとう
ほんとうに助かるよ
だけど
鳥さんたちは なんだかピクニックに行くみたいだね
このたーくさんの木のみは鳥さんたちのおやつだろう?」

そうなんです
コンドルのおかみさんから
ねむねむさんを手伝うように言われた鳥さんたちは
久しぶりの森のそとへのお出かけに 心ウキウキ
おやつの木のみをたっぷりあつめて
木のつるで大きなリュックサックと
うみちゃんをのせるためのカゴも作って
みんなとってもたのしそう


ねむねむの森の
みるくの木のあるところ
けさは森中の鳥さんたちの歌声でまるでお祭りさわぎです

「はーいはいはい はーい
みんな静かにしておくれ」
コンドルのおかみさんの太くて大きな声がひびきました

「みんなうかれるのはまだ早いよ
みんなが頑張って作ってくれた うみちゃんのカゴを試してみないとね
さあ うみちゃん
このカゴに乗ってみておくれ」

鳥さんたちが
うみちゃんの前に太い木のつるで編んだカゴを運んできました

「うわぁお風呂みたい」
と うみちゃんはたのしそうにおどろいて
すぐにカゴに飛び乗りました
カゴの深さはうみちゃんの肩の辺りまであります
本当にお風呂に入っているみたいです

カゴを運んできた鳥さんたちが
カゴから伸びているつるの先をくわえて
飛び立ちました

飛び立ちましたが
あれれれ
うみちゃんを乗せたカゴは ピクリ とも動きません

バッサバッサ パッタパッタ 
バッサバッサ パッタパッタ
鳥さんたちは一生けんめい羽をうごかしますが
うみちゃんを乗せたカゴはしっかり地面にくっついたままです
コンドルのおかみさんがあわてたようすで言いました
「あらあら あらあら
これはたいへん 私たちでは運べない
小さなにんげんというのは くまさんの子どもより重いのかい
ねむねむさんとは大ちがいだね」

ねむねむさんもそのようすを見て思います
(へ〜 にんげんはクマさんのようにどっしりおもいんだな〜)

そこで鳥さんたちの中でもちからじまんの鳥さんたちが
「もういっかい!ぼくたちにやらせてよ もういっかい!」
と声をあげ カゴからのびているつるをくわえました

その中にいたカラスくんが こんどは羽であいずをして
せーのでみんないっしょに羽ばたきました
こんどはうみちゃんを乗せたカゴは ふわり 
と ちょっとだけうきました
バッサバッサ パッタパッタ
バッサバッサ パッタパッタ
とちからじまんの鳥さんたちはいっしょうけんめいに羽ばたきますが

ちょっとだけ浮いたかごはすぐに すとん と地面についてしまいます

「コンドルのおかみさん!
これは くやしいけど ふくろうさんたちにたのみましょう!」
カラスくんが言いましたが
ほかのちからじまんの鳥さんたちは
「まだまだ もういっかい もういっかい」
「ふくろうさんたちにはまけないよ」
とさけんでいました          

カラスくんが
大きな声で鳥さんたちにむかってさけびました
「それなら うみちゃんののったこのカゴをくわえて
ひろい池をいちどもやすまずに ぜったいにおとさずに 
わたることができると思うかい?」

それをきいたちからじまんの鳥さんたちは
ちょっとかんがえてから
「それはむりだ きっとおとしちゃう」
「くやしいけどちからじまんのふくろうさんたちにたのむとしよう」
「池のとちゅうにやすむための島があればいいのに」
などとかってなことを言いながら
カゴからはなれました

コンドルのおかみさんは
そのようすを見て うん とひとつうなずいて
「それじゃあ 長老ふくろうのところにいって
ふくろうさんたちに手伝ってもらえないか話をしてこよう」
と 長老ふくろうがすんでいる 
大きなもみの木さんのところへむかってとび立ちました

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