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ねむねむの森 第一章

(一)

とりさんたちのうたがきこえて
ねむねむさんはうっすらと目をさましました

大きなつばさで 
おそらをとんでいたような いないような

大きなケーキに
うもれていたような いないような

大きなバナナと
おいかけっこをしていたような いないような

つまり
ねむねむさんはゆめをみていたんですが

いっつもいっつも
ねむねむさんが これはゆめだ ときがつき
うっすら目をあけたそのしゅんかんから

なみがひくように
すなのおしろがくずれるように
ドミノがたおれるように
大きなけしゴムでけされるように
きょだいな がまガエルがすいこんでいくかのように

ゆめのえいぞうが
きえていくんです
ねむねむさんがそれをつかまえようとするそばから
きえていくんです

あとにはただただねむねむさんのむねの中に
ワクワク
ドキドキ
ヒヤヒヤ
ゾワゾワ
ウキウキ
のようなかんじがのこるだけです

けさのねむねむさんのむねには
ワクワクなかんじと ヒヤヒヤなかんじがのこっています
こんなきもちをかんじながら

ゆめをつかまえるのをあきらめて
ねむねむさんはおき上がりました

「ねむねむさん
おはよう
よーくねむれたかな?」

「もみの木さん
おはよう
うん ぐっすりねむらせてくれて どうもありがとう」

しずかなあさです

「そういえば もみの木さん
ゆうべあのあと
水さんはお口をとじたのかな」

「ねむねむさん
うん とじたよ
いつもよりながーいじかん あけていて
この森にもずいぶんちかづいてきたけどね」

「もみの木さん 
水さんのこえは きこえたの?」

「ねむねむさん
水さんのこえはね
ただただ
ごごごぉ〜という おとだけで
なにをいっていたのか
さっぱりわからなかったんだよ」

「そっか
水さんのこえはぼくたちのことばとはちがうんだね」

「そうだね でもね
水さんがお口をあけて とじるとき
いっつもきこえる声があるんだ
声 というよりもさけび というのかな
小さなさけび 大きなさけび 
くるしいさけび すくわれたさけび
びっくりしたさけび しってたよのさけび
あいしてるのさけび ありがとうのさけび おこっているさけび
そのたくさんのさけびたちを
水さんのごごごぉ〜がまとめてくるんで
つつんでのみこんでしまうんだ」          
   
「もみの木さん
そのさけびというのは
きのうもみの木さんがいっていた
水さんがお口をあけるまえに
みえているでこぼこたちのさけびなのかな?」

「ねむねむさん
うん きっとそうだとおもうよ」

「もみの木さん
ってことは 
そのでこぼこって
ただのでこぼこじゃないよね!

さけぶってことは 生きてるってことだよね!

ぼくたち森のなかまのほかにも
いろんなことをかんがえて 生きているものたちが
地球さんのうえにいるってことだよね!
わぁ!
そういうことだよね!
なんだか
すごいすごいすご〜い!」

と ねむねむさんがとびはねていたそのとき

「おっはよ〜う さんさんさぁ〜ん」
とあっついげんきなこえがして
太陽さんがかおをだしました

太陽さんはいつでも どんなときでも
元気いっぱいの おちょうしもの です
どこが おちょうしもの かって?

だって 
くたびれたときには すぐに くもさんをよんで
かげにかくれて きゅうけいします

じゃまされたくないときは
かみなりさんまでつれてきて
ドンドンガラガラ大きな音をならしてもらって
まるで 太陽さんがどこかへいっちゃったかのように
みえなくなってしまいます

ほんとはいっつもそこにいるのにね

そして
かおをだすときはいつでも元気いっぱい
あっついあっつい元気な声で
かってにひとりでベラベラおしゃべりしているんです

地球さんとはとってもなかよしなんだけど
地球さんとおしゃべりしているところは みたことがありません

いつでもひとりでベラベラギラギラ
地球のうえにすんでいるぼくたちをみつけては
かってにおしゃべりするんです

あいてにされなくても ぜーんぜんきにしません
ベラベラギラギラずーっとおしゃべりしています

でもね
そのおしゃべりをきいているだけで
どうしてなのかなぁ
ぼくたち 生きてるなぁ〜ってかんじるんです

あ! そうか!

いま わかったぞ
太陽さんは地球さんのことが大すきだから
地球さんのうえにいるぼくたちのことも大すきなんだ

大すきだから はなしかけたくなっちゃうんだね
そして
はなしかけられたぼくたちは
太陽さんがみつけてくれた
ここにいるぼくたちをみててくれる
と おもうから
生きてるなぁ〜ってかんじるんだね

こんなことを
ねむねむさんが かんがえていると
 
「ねっむねっむさぁ〜ん
おっはよ〜う さんさんさぁ〜ん」
太陽さんがねむねむさんをみつけました

「うんうん はいはい おはようおはよう太陽さん」

みみをすますと いろいろなところから
太陽さんへのおはようの声 
ありがとうの声 きょうもよろしくの声が
たくさんたくさん きこえてきました

「そうだそうだ ねっむねっむさぁ〜ん
もうききましたか?
さっき月さんと じゅんばんをかわるときにきいたんですが
きのう水さんがお口をとじたときに
すぐそばににんげんたちのすむ「むら」があったんだそうです
ほら きのうの水さんはいつもより大きくお口をあけたでしょぉ〜
だからとじるときもずいぶんといきおいがつよくて
その「むら」はいろんなものがこわれたり 
とばされたりしたんだって

にんげんたちにけがはなかったんだけど
とばされたもののなかに 
ねむったままの「小さなにんげん」がいたそうだよ
なんとその「小さなにんげん」は
ねむねむさんのすむこの森までとばされたそうだよ

月さんのいうことには
みるくの木の下におちたそうだよ
みるくの木の下ならば おなかをすかせることも
さみしくなることもないから あんしんだけれども

わたしからは木のはっぱがじゃまで よくみえないからね
気になって気になって しかたがないんだよ
わたしはね「小さなにんげん」のことがほんとうほんとうに大すきで
じぶんのことの その次に大すきなんだよぉ〜

ねむねむさん おねがいだよ
その「小さなにんげん」のところへいって
すんでいた「むら」につれてかえってもらえないかな
お父さんとお母さんが それはそれはしんぱいしているんだ」

「わぁ〜ほんとうなんだね 太陽さん
ぼくたちのほかにも 生きているものたちがいるんだね
「小さなにんげん」ということは「大きなにんげん」もいるんだね
あ そうか
そのねている「小さなにんげん」のお父さんお母さんが
「大きなにんげん」ってことだね」

「そうだよ ねっむねっむさぁ〜ん
いいからいいから とにかくはやくはやく
みるくの木の下にとばされた 小さなにんげんのところへ
いっておくれよぉ〜
きっとまだねているから あさだよっておこして
わたしからよぉくみえるばしょ
そうそうこの太陽の光でい〜っぱいのところまで
つれだしておくれよぉ〜」

「わかったわかった 太陽さん
わかったからおちついて
まずは かおくらいあらわせてよ」

というと ねむねむさんは
はっぱについているあさつゆでかおをあらい
べつのはっぱのあさつゆをゴクリゴクリとのんでのどをうるおし
大きなもみの木さんからするするっとおりると
太陽さんの光にてらされてキラキラ光っている
おいしそうなまっ赤な木のみをほおばりました
そして
ふとおもいついて太陽さんにはなしかけます

「ねえねえ 太陽さん」

「なんだい! ねむねむさんたら
まだそこにいたのかい!
あいかわらずの のんびりさんだね
まあ そこがキミのいいところさ
お! そのまっ赤な木のみ おいしいだろぉ〜
わたしの光をた〜っぷりあびて
えいようまんてんさ〜
あさにたべたら 一日中 元気いっぱい
ゆうがたにたべたら どんなにくたびれた からだもこころも 
すっきりりんさ〜」

「はいはい ありがとう 太陽さん
ところでさ
太陽さんはそのみるくの木の下にいる小さなにんげんの
お父さんとお母さんがしんぱいしているっていっていたよね」

「そうだよ だからはやくねむねむさんに
小さなにんげんをお父さんとお母さんのところへ
つれていってほしいんだ」

「それなら太陽さんが その小さなにんげんのお父さんとお母さんに
みるくの木のばしょをおしえてあげればいいじゃないか!」

「あぁ〜 そっかそっか ねむねむさんはまだしらないんだね
にんげんというものたちはね
じつは 大きくなると なぜだかわからないけれど
わたしたちと はなしができなくなってしまうんだよ
大むかしはそんなことはなかったんだけどねぇ
だけどわたしたちはまだ 
小さなにんげんとは はなしができるんだよ」

「へぇ〜 太陽さんのことばがわからないものたちがいるんだねぇ
あ〜 そういえばもみの木さんも
水さんのこえはごごごぉ〜しかわからないっていっていたなぁ
それとおんなじことなのかな、、、、
ねぇ太陽さん!」

ねむねむさんのしつもんに
太陽さんはきゅうにだまってしまいました
いつものおちょうしものの太陽さんらしくありません
ねむねむさんがふしぎにおもって どうしたの?ときこうとしたとき

「うっさぎさぁ〜ん ちょうちょうさぁ〜ん きっつねさぁ〜ん
みなさんみなさん おっはよ〜う さんさんさぁ〜ん」

といつもの あっついげんきなこえで
あさのあいさつをはじめてしまいました
こうなったらだれも太陽さんをとめられません

ねむねむさんはあきらめて
みるくの木があるほうへとあるきだしました


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