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ねむねむの森 第二章

(二)

ここでちょっとだけおはなしをとめて

ねむねむさんに
この森についておはなししてもらいましょう
ねむねむさ~ん いいですか?

はいはい いいですよ~

ここ ねむねむの森は
みなさんがしっている森によーくにています
太陽の光がふりそそぎ
あめもふるし
ゆきもふるし
あらしもきます

そして 
たくさんのどうぶつたち
とりたち むしたち 大きな木 小さな木
草 花 池 川 小さな山とながれおちるたき
そして ぼくたち
ぼくたちのことをこの森ではみんな
ねむねむさん ってよぶんだ

でもね
にんげんたちは ぼくたちのことを
「森のようせい」ってよぶんだって

ようせいさんってよばれるのも いいなぁ
っておもったんだけどね
ぼくは ねむねむさん ってよばれると
ぼくらしいな とおもうから
ぼくとおしゃべりできるにんげんには
ねむねむさん ってよんでください
っておねがいしているんだ

あ そうそう
これからぼくがむかう みるくの木
この木はこの森にしかはえていない木なんだ
ほかにも みなさんがみたことのない
きいたことのないできごとが
おきるかもしれないから
たのしみにきいてくれるとうれしいな
じゃあそろそろ おはなしにもどろうね

太陽さんにたのまれたねむねむさんは
森のなかまたちに
あさのあいさつをしながら
コーヒーの小みちを みるくの木にむかってあるいていきます

ねむねむさんは
「あ もうすぐみるくの木だな」
とおもいます
なぜかって
コーヒーの小みちから ミルクコーヒーの小みちになってきたからです

ねむねむの森には森をかこむように木がたっています
小さなにんげんがとばされたという みるくの木は
ゆうべ水さんが大きな口をあけていたほうにある木です

小みちのりょうがわにはえている
草や 花の あさつゆを のみながら
赤色や黄色やオレンジ色の木のみをほおばりながら
ねむねむさんは
ゆっくりゆっくり あるきます
ときどき太陽さんが
「ねっむねっむさぁ〜ん
はやくっ はやくってばぁ〜」
と 声をかけます

ねむねむさんは
「はいはい はぁ〜い」
とこたえながら
あいかわらず ゆっくりゆっくりあるきます

だってあわてなくても だいじょうぶなんです
みるくの木の下にいれば
どんなどうぶつも
おなかをすかせることも
さみしくなることも
ぜったいにないからです

でもね じつはねむねむさんも
小さなにんげんに会うのがたのしみになってきたので
いつもより すこーしだけ はやあるきになっているのです

そんなねむねむさんのきもちに きがついているのは小みちだけです
だから ちょっとねむねむさんをてつだって
ねむねむさんのあしが ぴょんぴょんはずむように
小みちをゆらして 
ねむねむさんをみるくの木のほうへ おしだしてあげています

コーヒーの小みちからミルクコーヒーの小みちをとおり
そしてとうとう
ミルクの小みちへとはいりました
あたりいっぱい
あまくてやわらかいかおりです

くんくん くんくん
「おや こちらから とってもあまくて
ほっぺたがとろけそうなかおりがするぞ」

と ねむねむさんがはなをならしながら 
いっぽんのみるくの木にちかづいていきます

木のねもとに なにかあります

はるにさく さくらのはなのようないろの
よんほんのあし
そのうえに みあげると
からだをうずめたくなるような ふかふかのわたげのようなかたまり
そのわたげも さくらのはなのいろ

ねむねむさんは
おもわず
わたげのようなかたまりに
めいいっぱいジャンプしてとびこみました

ぽわわん すとん

そう ねむねむさんは小さいんです
そして かるいんです

きょうはあさからたくさんあるいたねむねむさん
あまりのきもちのよさに
大きなあくびをひとつすると
すーすーすー
ねいきをたてはじめてしまいました

どのくらいじかんがすぎたでしょう

「ねっむねっむさぁ〜ん!!!」
あたまのうえから
あっついあっつい太陽さんのこえ

「ねっむねっむさぁ〜ん
おきて おきてよ〜
あ! あれ あれ あれれ〜」

ごろごろ ごろごろ ごろろ〜ん

「いたたたたっ!
なんだなんだ また地球さんがうごいたのかぁ〜!」

みるくの小みちに ころがりおちたねむねむさん
めをぱちぱちさせながら 
びっくりぎょうてんしていると

みるくの木から
かわいい小とりさんによくにたこえがします

「ふわわわぁ〜 あーよくねたぁ〜
あれれれ ここはどこだろう 
あーそうか まだゆめなんだ」

よくみると小さなにんげんが
わたげのようなふかふかの中から
てをだし かおをだし
ゆっくりゆっくり おき上がり 
小さくかわいらしいあしを ちょこんとだして
おすわりしています

「あ あ 小さなにんげんってきみのこと?」
ねむねむさんがたずねるとどうじに
あたまのうえから あっついあっつい太陽さんのこえ

「ねっむねっむさぁ〜ん
やっとおきたんだね
さぁさぁ はやく そのかわいい小さなにんげんを
わたしにみえるところまで つれだしておくれ」

太陽さんがぎらぎらとせかすので
ねむねむさんは おすわりしている小さなにんげんのひざ小ぞうを
つんつんとつついて

「おはよう おはよう 小さなにんげんさん
はじめまして ぼくはねむねむといいます
ここはねむねむの森だよ

とりあえず 太陽さんがあいたがっているから
そのわたげのふかふかからおりてきてくれるかい?」
といいました

「わあ かわいようせいさん
おはよう ってまだこれはゆめの中でしょ
まあ いいか
太陽さんってあのおそらにいる太陽さん?
わたしがいっつもおしゃべりしている太陽さんのこと?」

と 小さなにんげんがねむねむさんのあとをついて
あかるくて あたたかいところまであるいてくると

「あ〜! やっぱりやっぱり うみちゃんだぁ〜!!!
そうじゃないかとおもっていたんだよ〜
だいじょうぶだよ しんぱいしないでいいんだよ
そこにいるねむねむさんが
ちゃーんと もといたおうちにつれていってくれるからね」
と太陽さんがはやくちでいいました

このかわいい小さなにんげんのなまえは
「うみちゃん」
というようです

「うみちゃん はじめまして
ぼくはねむねむといいます
うみちゃんはゆうべおうちから
このねむねむの森までとばされてきたんだって
でもだいじょうぶ ぼくがおうちまでつれていってあげるからね」
とねむねむさんがいいました

太陽さんやねむねむさんがはなしているあいだ
小さなにんげんのうみちゃんはというと

これはゆめだ とおもいこんでいるので
あっちをきょろきょろ
こっちをきょろきょろ
あまーいかおりに おはながひくひく

これはゆめなのに 
どうしておなかまでぐーぐーなるんだろう?
とだんだんふしぎにおもいはじめています

あたまのうえからきこえる
「うみちゃんだぁ〜うみちゃんだぁ〜」という
はやくちのあっついあっつい太陽さんの声と

ひざのあたりからきこえる
「うみちゃん おはよう」という
ゆっくりな やわらかい声に
だんだんと 
もしかしたら
これはゆめではないのかもしれない
とかんじはじめて
だんだんと
さみしいきもちになってきました

「ここはどこ? おかあさんはどこ? おとうさんはどこ?
うみ どうしてひとりなの?」

「ひとりじゃないよ ぼくがいる
さぁ おなかがすいただろう
まずはそこにあるみるくの木のみをとって
ゆびであなをあけてごらん」

という ちからづよい ようせいさんのこえにせなかをおされるように
うみちゃんはさっきまでいたみるくの木までもどり
いちばん下のえだにぶら下がっている たまごのようなかたちの木のみを
そっとてにとり ひっぱってみました

ぷちんと えだからきのみははずれて
うみちゃんのりょうほうのてにずしりとおちました
そして いわれたとおり
木のみの上のほうをひとさしゆびでおすと
あなが あきました
ぷーんとあまいかおりがおはなをくすぐって
またまたおながぐぐぐ〜となります

「それはみるくの木のみだよ
あまーいミルクがたっぷりはいっているから
のんでごらん おいしいよ」

うみちゃんのひざのあたりで
やわらかい でもちからづよい ようせいさんの声がつづきます
「そこの さくらのはなのいろの あしのついたわたげにすわって
ゆっくりおのみ
そしてこの黄色いみをおたべ
これはね おはようのみ といって
からだ中がめざめるのをたすけてくれるんだ

たべたらしゅっぱつしようね
だいじょうぶ 太陽さんがでているうちには
きっと もといたおうちにもどることができるよ」

うみちゃんは
「これはベッドっていうのよ」
といいながら
あしもとにおかれた おはようのみをひろいあげ
みぎてには みるくの木のみ
ひだりてには 黄いろいおはようのみをにぎりしめ
すとんとベッドにすわり
まず 
みるくの木のみのミルクをのみました

ようせいさんのいうとおり
あまくてほんのりあたたかいミルクがおなかにながれこみ
ちょっとだけのこっていたさみしさが
ふんわりときえました

そして
黄色いおはようのみをかじると
目のおくがスーッとして
さっき太陽さんがいったことや
ようせいさんがいったことをおもいだし

はやくおうちにもどらなくちゃ
みんなにげんきなすがたをみせなくちゃ
と うみちゃんはおもいました

さぁ こうしてであった
ねむねむさんとうみちゃんの
あたたかくておもしろくて
わくわくどきどきするおはなしがはじまります


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