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ねむねむの森 第七章

(七)

すずしい風がほっぺたをさわって
うみちゃんはめをさましました
いつもみている てんじょうがみえます
(ここはおうち うみのおへや)
うみちゃんはかくにんするように ゆっくりおきあがりました
(やっぱりあれはゆめだったんだ すっごくたのしいゆめだったんだ
うみはずーっとおへやでねていたんだ
あーおなかがすいた!)
と ベッドからとびでたときです
「イタタターッ
なんだなんだ また地球さんがうごいたのかあ!」
と あしもとから よーく知っている声がしました
うみちゃんがベッドからとびでたいきおいで
よこでねていたねむねむさんが ベッドからおっこちてしまったのです

「あれれれ この声 
ねむねむさんだー
ゆめじゃなかったんだ! それともまだゆめの中なの?」
うみちゃんはよくわからなくなってしまいました

「ゆめじゃないよ! うみちゃん
ぼくだよ ねむねむだよ イタタタ
それにしてもよくねたな〜」
ねむねむさんがおしりをさすりながらおきあがったとき

わたがしのような やさしい声がきこえてきました
「おやおや ねむねむさん だいじょうぶ?
ふたりとも おはようさん よくねむれたかい?」
声をだしたのは ベッドのよこのゆれるイスにすわっていた
おばあでした
「あれぇ おばあ
おしゃべりできるようになったの?
もうかみにかいたりしなくてもいいの?」
びっくりしているうみちゃんに おばあはやさしくいいました
「いいえ うみちゃん
おばあはにんげんのことばは うまく話せないんだよ
うみちゃんは ねむねむの森へ行ったでしょう
きっとまえよりも もっと
太陽さんやどうぶつさんたちの声がきこえるようになったはず
だから おばあの声もわかるようになったんだよ」

「そうなんだ
おばあとおしゃべりできるなんて
うみはとってもとってもうれしいな
あのね ねむねむの森にはね おばあのことを知っているどうぶつさんが
たくさんいたんだよ
長老ふくろうさんに亀のおじいさんに白ヘビのおばあさん
みんなおばあとうみがそっくりだって言ってたよ」

うみちゃんはねむねむの森で出会ったどうぶつさんのこと
ねむねむの森のようすをおばあにいっしょうけんめい話しました

その声をきいておかあさんがおぼんにのせた朝ごはんをもってきてくれました
「お母さん おはよう!」
「うみちゃん おはよう 
おなかがすいたでしょう 
さあ スープとパンをめしあがれ
おばあもいっしょにいかがですか」

おばあは首をよこにふり
にこにこしながらうみちゃんのおしゃべりをきいていました

そのとき うみちゃんのよこで
おぼんのなかみをのぞきこんでいる ねむねむさんのすがたが
お母さんにはみえていました
(やっぱり森のようせいさんもいっしょにきたのね
なんだかおばあがまえより元気になったみたい)
と お母さんはうれしくなりました

きのうの朝はお母さんにとってほんとうにびっくりした朝でした
大きな水が口をあけていた夜のあいだ 村のおとなたちはみな 
水のことをしんぱいしながらおきていました
お母さんはうみちゃんがぐっすりねむりについたのをみると
おばあにおねがいして
お父さんといっしょに村の集会所に行っていました

朝になって池になった水が村までくることはないとわかって
ほっとして うみちゃんのおへやにきたお母さんは
うみちゃんがベッドごといなくなっていることにきがつきます
それはそれは びっくりしておばあのところにかけこみました
おばあはやさしくわらって お母さんのあたまをなでて
かみに『だいじょうぶ うみちゃんはねむねむの森にいるよ
村のようすがおちついたら つれもどすからしんぱいいらないよ』
と かいてくれたのでした
ねむねむの森にいるほうがあんぜんだ と
おばあがきめたのならば そうなのだろう
お母さんはおばあのことばをしんじました

ところがお父さんは おちついてはいられませんでした
おばあのことばをよんだからといって
じーっとかえりをまっていることなんてできなかったのです
お父さんがリーダーになり村中をさがしまわり
ふねをつくってうみちゃんをさがしにいこうとしていました 
ふねができあがって これからさがしにいくぞ
というときに ふくろうさんたちにはこばれて 
うみちゃんがかえってきたのでした

うみちゃんがねむったあと
おばあは村のみんなにかみにかいてせつめいしました
『ねむねむの森があんぜんなこと』
『長老ふくろうとおしゃべりができること』
お母さんはおばあのいっていることがわかりますが
お父さんと村のみんなにはよくわかりません
だけど ついさっき 6羽のふくろうたちが
うみちゃんをはこんできてくれたところをたしかにみました
ゆめのようなできごとだけど
たしかに みんな みました

いっしょにきたカラスは
うみちゃんの家のやねにしずかにとまっています
ときどき村のはたけでみかける あなほりふくろうも
きょうはかえろうとしないで
大きな木の下にあるあなにはいって どうやらねているようです

おばあは 村のおとなたちに こうつたえました
『このカラスとあなほりふくろうは
うみちゃんをまもってくれる鳥たちだから
たいせつにするように』と
けれども おばあは
ねむねむさんのことはつたえませんでした
なぜかというと
にんげんのおとなたちにとって
目に見えないものをしんじることは とってもむずかしいからです

村のおとなたちは
とにかくうみちゃんがかえってきたことをよろこび
おばあのいうことをきいて カラスとあなほりふくろうを
たいせつにすることをやくそくしました

いま おばあの目の前で
うみちゃんとねむねむさんは
お母さんがもってきてくれたスープとパンを
おいしそうに なかよく いっしょにたべています

おばあは うみちゃんのよこにちょこんとすわって
にんげんがつくるりょうりをはじめてたべている
小さなかわいい ねむねむさんをみて
(さて このねむねむさんのちからは どうだろう)
と とおい昔にであった べつの ねむねむさんを思い出しながら
きのうはひさしぶりにずいぶんはたらいたわね と
目をとじてねむりはじめました

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