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【笑い話】足が痺れていただけだったのに負傷兵のようになりつつ客対応した話

こにちはぬん。ベビだす。
こないだまで「いつになったら涼しくなるのか」と言っていたのに、急に寒くなってきましたね。
そんな寒い日に、ひとつ笑い話をしたいと思います。
笑うと免疫力が上がるっていう話を信じているベビだす。

ある日、会社に訪問客がやって来ました。
おベビはその時デスクに座っていましたが、そのデスクは自分のデスクではなく、「座ると必ず足が痺れる椅子」のあるデスクでした。
その椅子とベビの足は相性が悪く、椅子の当たる部分に圧迫されて必ず足が痺れてしまう椅子なのです。
そこで2時間ほど座りっぱなしで作業をしていた最中に、訪問客がやってきたのです。

周りは電話中だったり他の対応をしている。
とりあえず手を空けられそうだったのが自分だったため、おベビはお客様を応接室に案内してお茶でも出そうと思いました。

挨拶をしながら立ち上がるおベビ。
しかしおベビの左足は2時間かけて完璧に痺れており、左足だけ局部麻酔を打たれたような状態と化していました。

無意識にスラスラ出てくる定型文の挨拶を淀みなく口から吐きつつ、立ち上がったその瞬間にデスクに倒れ込み慌てて手をつくおベビ。
立ち上がったかと思いきや目の前でデスクに倒れ込む人物の光景と口から発せられる挨拶の文言という情報を一度に処理することを要求されるお客様。


「なんで杖持ってないんだよ」
と言われてもおかしくないほどに片足を引きずりつつ、なんとか手で机の端を頼りにしながら移動を試みるベビ。

自分でもわかりました。

「これは足が痺れているだけとは思われないだろう、負傷者だと思われてしまっているに違いない」

と。
演技とは思えないくらいリアルに(いやリアルなんだけど)片足を引きずり、机の端や壁に手をつきそれを頼りに移動をするおベビ。
まさか自分が声を掛けた者がそんな大仰な負傷をしているという想定はなかったであろうお客様は、軽く固まってすらいる。


しかし、お客様は何も申さない。そりゃそうだ。
迂闊に「どこかお悪いのですか?」など聞けるはずもない。
元々足が不自由な方なのかもしれない、とかきっと今頃お客様の頭の中で様々な推測と気遣いがものすごいスピードでされているんだろうな、と思いました。
言えない、「足が痺れているだけなんです(∀`*ゞ)エヘヘ」なんて。

「お飲み物をお持ちしますので、そちらに掛けてお待ちください」
とありったけの平常心を込めた笑顔で述べるおベビに、
「いえ、お気遣いなく」
と返したお客様の言葉は定型文ではなく本心であっただろう。
足を引きずり壁に手を添わせて移動するような人間に茶を持ってこさせるなど、きっと本心から「いやいいから! 座ってていいから!」と思ったに違いない。


違うんだ。どこも負傷していないんだ。
足が痺れているだけなんだ。


おベビは這う這うの体で給湯室に移動し、コーヒーをカップに用意した。
そうやってしばし体を動かしている間に、

今度は足の痺れが取れて治ってしまったのである。


これはこれでいけない。
さっきまで足を引きずって壁に手を這わせながら移動していた人間が、
「お待たせしましたー♪」とスタスタ歩いてやって来るのはなんかいけない気がする。
別に騙してはいないんだけど、お客様を騙してしまうような気がする。

もしそんなことをしたら、お客様的には
「なんだアイツ人をからかいやがったのか?」
と思ってしまうかもしれない。
もしくはただポカンとするか。
仏のような人ならば「いやww お前さっきと違うww」と吹くかもしれないが、そんな甘い考えは私の中には無い。


おベビは決めました。
「このまま貫こう」と。


足の痺れが取れた今それは噓であり演技になってしまうが、お客様はおベビのことを「足を負傷している人」だと自身の中で決定してしまったことは間違いない。
実際に去年から膝を傷めているのは社内の人間も周知のため、仮に後から
「足を傷めている人~」となっても通じないことはない。

とは言っても飲み物を持っているため、先ほどと同じような動き方では今度はコーヒーをこぼしかねない。
自分の中の演技力を極力抑えつつ、且つ最大に発揮しつつ、おベビはお客様にコーヒーを運びました。

ファーストコンタクトより柔軟性を取り戻したおベビの足取りにお客様も
「無理をさせてしまったわけではないようだ」
とホッとして下さったのか、帰り際には
「美味しかったです、ご馳走様でした」
という言葉をかけて下さった……。

ごめん、足痺れててゴメン。
本当にゴメン。




後日、そのお客様がまた来訪され、スタスタと歩くおベビを見て会釈して下さいました。
足治ったんだね~(*‘ω‘ *)、と思って下さったのかな。
一言ご挨拶をと思い頃合いを見計らって声を掛けると、手土産を持って来たので皆さんでどうぞ、と仰る。
なんでもお客様お気に入りの焼き菓子店で買って来て下さったらしい。
甘党なのかなと思い尋ねてみると、実はそうなんですと仰るお客様。
上司が来るのを待つお客様の前に何も出されていないことに気付き、今度はホットココアを持って行きました。
心なしか、お客様の笑顔がコーヒーの時より嬉しそうに見えました。

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