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あの子の彼氏はマサイ族【ショートショート】

親友の一人、アミに新しい彼氏が出来た。
三か月前に前カレに酷い振られ方をされ、傷心で見ていられなかったアミ。
そんなアミが先日、グループチャットで「カレシできた💕」と喜んで連絡してきたのだ。
そして今日、あたし達親友四人は、思いっきりアミを祝い惚気を聞いてあげようと、いつものカフェに集まった。

「ユウナ、久しぶり~💕」

飛んできた声に振り返ると、久々に見るアミの笑顔。
同じ女でも、「心の底から幸せそうに笑っている女の顔って、こんなに綺麗なんだ」と、ふと思ってしまうほどにアミの顔は輝いていた。

「カレシできて良かったね~💕 グルチャで聞かせてって言っても、『会って話す』の一点張りだったからめちゃ楽しみにしてきたよー⭐」
「そうそう、写真見せてって言っても、『お茶する時見せる~💕』ってさ、めっちゃ嬉しそうだったのがチャットでもバシバシ伝わって来たよねーw」

女友達でアミを囲み、祝福の洗礼。
まるで結婚式当日のような、幸せいっぱいの笑顔のアミ。

「で、早速聞かせてよー💕 新しいカレシの惚気💕」
「あ、その前に注文済まそ! えっとー何にしようかな~」

女友達四人でメニューを眺める。
カラフルで、可愛くて、オモチャみたいなスイーツとドリンクがメニューから飛び出てくる。

「いいなー、アミすっごい幸せそう。お店入って来た時の顔が違うもんw」

あたしが感じた事と同じことを、同じく親友のカノンが言った。カノンの彼氏はバンド活動に夢中で、中には女性メンバーもいるためカノンは心配事が多いそうだ。
カノンが冗談交じりに吐く憂さ晴らしをみんなで笑いながら聞いているうちに、それぞれが頼んだ品がテーブルに並んだ。
キラキラで可愛いスイーツとドリンクがテーブルに並ぶ様は、宝石箱をひっくり返したように華やかだ。

「で、彼氏なんてゆーの? 名前とかさ、出会いとかさ」

アミはピンク色の頬で、嬉しさいっぱいに答えた。


「オニャンゴ君っていうの!! マサイ族なんだ~💕」


ん( ^ω^)・・・おお。
えっ、マサイ族!?
どこで知り合ったん何語で会話してるん名前良い名前なんだろうけど若干笑えるのは言っちゃダメー!!
あたしの脳裏を、瞬時に色んな質問&その他が駆け抜けた。


カノン「うそー!! マサイ族とかやばっ! カッコイイー💕」
ミク「もしかして族長の息子とか!? 玉の輿コース!?」

カノン、ミク、あなたたちはどこでその瞬発力と柔軟性を培ったの?
国際的な現代においてマサイ族のカレシごときにビックリするあたしが遅れてるの??


アミは照れ笑いしながらも、惚気タイムスタートの狼煙のろしが今、上がった。

「オニャンゴ君ね、あ、普段はにゃーたん、って呼んでるんだけど💕」
「きたよ!(笑) にゃーたんかよ!(笑) 可愛すぎ!! 続けろ!」
「彼ね、も~呼んだらすぐ来てくれるの💕 寂しいよ~って言ったら、走って家まで来てくれるんだ~💕」
「はい、ポイントここです!! にゃーたんアミのために走ってます! 電車じゃない! タクシーでもない! やば、カッコよすぎるうう!」
「彼マサイ族だから、駅まで行って電車乗るより走った方が早いとか言って……(照)💕」
「えードラマみたいー!! ヤバくね!? にゃーたんイケメン過ぎ!」
「でね、家に来たら、必ず途中で狩った鳥とか持ってきてくれるの💕
「いやああ何それカレシ自ら狩って来るとか激アツなんだけど!!」
「アミが、これどうやって食べたらいいのって聞いたら、にゃーたんいっつも羽とか毟って手際よく焼き鳥作ってくれるんだ~💕」
「しかも料理男子かよ! ポイント高えー!!!」
「どうやって捕ったの、って聞くと、視力がめっちゃいいからこんなの簡単だよって(*´艸`*)💕」
「ヤバあ、優しくて料理男子で手柄を鼻にかけないオトコかよ最高!!」
地元では草原で大型獣とか捕ったりしていたから、これくらいなんでもないよって(*´艸`*)💕」
「しかも謙虚かよ!!! にゃーたんアタリ物件すぎいい!!」
「あ、これね、にゃーたんの写真なんだけど……(*'ω'*)💕」
「きゃー!! 坊主!! まさかの坊主! まさかのワイルド系!? 絶滅危惧種じゃーん!!」
「しかもこの焼けた肌! 日本にいる日焼け止め塗って女より色白い男子とかより断然グッとくるんですけど!! たまらぬ!!」
「でね、すっごい背が高いから、アミが届かない場所のものとかサッと取ってくれて~💕」
高身長男子キターーーーーー!! にゃーたん何センチあるの!?」
「にゃーたん、190センチあるんだ~💕 でも『僕らの地元では平均だよ』って、絶対自慢げにしないの~(*´艸`*)💕」
「にゃーたんイケメン過ぎ!! イケメンの鑑!! イケメンの神!」

アミと、アミを囲む親友たちの幸せトークとお祝いの迎撃。
その光景を見ながら、あたしは思った。

これがほんとの友達だなって。友達っていいなって。
ちょっとでも、「マサイ族のカレシ」っていうワードにびっくりしてしまったあたしに比べて、すんなり受け入れてアミをこれでもかと祝福できる親友たちの優しさ、理解の深さにも、感動した。
あたしは、アミに声を掛けた。


「ね、さっきのにゃーたんの写真、もっかい見せて(*'ω'*)」


アミがキラキラの笑顔と共に見せてくれた写真には。


坊主頭に整った端正な顔立ちを宿し、神妙な面持ちで逞しい体を槍のように天に向かって放ち垂直ジャンプするにゃーたんの姿があった。

マサイダンス、っていうんだって。
とにかくめっちゃ飛んでた。


FIN

~珍しくあとがき&解説~

Twitterで「まさにそうです」を「マサイ族です」と言い間違えた話をやり取りしていた際に、
「マサイ族カッコイイ。それでショートショート書けそうですね! 楽しみにしていますw」
と言われ、その時に浮かんだシーンやストーリーの導入部などを思い出しつつ書きました。
アミがオニャンゴ君と出会ったきっかけは物語には登場していませんが、彼女が三か月前に前カレに酷い振られ方をして…という箇所がそれに相当します。
落ち込んだアミは「国外旅行に行こう。それも、観光っぽくないところ」とケニアに旅立ちます。そこで出会ったのがオニャンゴ君。
ですので、オニャンゴ君はアミを追いかけて日本へ来たという形になりますね。
オニャンゴ君の名前は、命名にあたりケニアの人名(男性)を調べ、その中から「晴れの日」という意味を持つ名前を選びました。彼はまさに、アミにとっての太陽となったわけですね。
オニャンゴ君のニックネームである「にゃーたん」は執筆中にアミが勝手にそう発言したため、「お、それイイね。『にゃーたん』採用」としました(創作書いている時のベビは考えておらず、指が勝手にストーリーを書いていく自動筆記モードです。エッセイとかの方が考えながら書いているので時間かかります)。
マサイ族は遊牧民だそうなので、オニャンゴ君が草原で大型獣を狩っていた、というのは彼の個人的な趣味だったのかもしれません。
そして、「190センチなんて地元では平均だよ」とオニャンゴ君がアミに告げた通り、マサイ族男性の平均身長は190センチだそうです。
高身長男子お目当ての方は、是非マサイ族のカレシも候補に!!
物語にも登場したマサイダンスは、「気を付け」の姿勢で垂直に高く飛ぶジャンプ。高く飛べれば飛べるほど名誉らしく、なんと70センチほどの垂直ジャンプするのもお手のもの、だとか。
アミとオニャンゴ君、幸せになって欲しいですね💕

以上、滅多に書かない「あとがき&解説」でした☆彡

琥珀ベイビー


創作大賞2023「エッセイ部門」に下記作品エントリー中です!
読んでみてね💕(BY オニャンゴ君)

12年間にわたる、保護犬・保護猫10匹との出会いと、彼らとの代えがたい日々を綴ったノンフィクション上下巻。上下巻共に巻末特典付き。












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