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小児脳神経外科が説くこどもの頭の変化

 東京クリニックで木曜外来を担当している広川です。
私は木曜以外の平日は小児専門病院で小児神経外科医として働いております。いわゆる子供専門の脳外科医ですが、外来では頭の形に関わるさまざまな症状の方が受診されます。
 当クリニックで扱うような向き癖による斜頭や短頭の方も多くいらっしゃいますが、中には頭蓋縫合早期癒合といって頭蓋骨のつなぎ目である縫合と呼ばれる部分が早期に癒合してしまい、頭蓋形態の異常を来たす病気の方もいらっしゃいます。頭位性の頭蓋変形の中にもごく稀に見つかることもあるため、診察した上で必要な場合はX線写真で頭蓋骨の状態を確認します。この疾患は基本的にはヘルメット単独では治療できないため、小児形成外科医と合同で手術を行います。
 形だけではなく大きさに関わる疾患もあり、特に乳幼児期の水頭症と呼ばれる病気では頭囲(頭の大きさ)が成長曲線を逸脱して大きくなります。水頭症と呼ばれる病気は脳や脊髄を包んでいる髄液と呼ばれる液体が貯まってしまい、頭の中の圧がとても上がってしまいます。赤ちゃんの頭蓋骨は非常に柔らかく、頭蓋縫合も開いているため、頭自体の体積を大きくすることで脳の圧を逃すわけです。もちろん個人差の範囲で頭の大きなお子さんもいらっしゃるため、頭囲が少し大きめといっただけでみんな水頭症というわけではありません。頭の圧が上がることで脳の発達が遅くなるため、本人の発達状態も併せて確認します。また、大泉門と呼ばれる頭頂部の頭蓋骨が空いている部分を触って圧の状態を確認したりして、最終的な診断はCTやMRIといった画像検査で行います。水頭症に対しては以前はシャント手術という髄液を頭から体の他の部分に流す手術が主流でしたが、最近では内視鏡を使った手術も行われるようになってきています。

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 こどもの頭の大きさについては6歳までに成人の90%の大きさまで成長するといわれています。頭の大きさは基本的にその中身である脳の大きさで決まってきます。つまり脳の大きさ、構造は6歳頃までに大体完成するということになります。実際我々脳外科医は大人から子供まで頭のCTやMRI画像を目にしますが、小学生前後で大人の脳と非常に近い形態や大きさになっていることを実感します。脳の働きは各神経細胞で構成されたネットワークの電気信号のやりとりによるものなので、構造がしっかり完成された6歳以降で学校に通うことは理に適っていますね。
 また母子手帳などに記載されている頭囲曲線の記載が6歳までなのもこの理由になります。さらに細かく曲線を見ていくと特に0-1歳までの頭の成長が大きいことがわかります。乳児期に特に頭の変化というのは大きくこの期間を利用したのがヘルメット療法ということになります。
頭の形や変化について書かせていただきましたが、乳幼児の頭は成人と異なりダイナミックに変化していくことが大きな違いです。この変化が適切なものかどうか見守っていくことがお子さんの成長に大事ではないかと考えております。当クリニックでは小児科、形成外科、外科など様々な専門科が併せて診察しているため、形に加えてその中身や発達についても見守ることができると思います。中身の脳についての心配事があれば遠慮なくご相談いただければ幸いです。

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東京クリニック 医師 広川 大輔