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【就活】中外製薬の強み・弱み


01.はじめに


はじめまして、ばびんこです。
私は現在製薬業界の専門職として働いており、自身の就職活動の経験を後輩に還元すべく、就活相談、ES添削、面接練習等を行っております。
就活のお手伝いをする中で、就活生から「中外製薬の弱みって何だと思いますか?」「中外製薬って弱みあるんですか?!」という質問をもらうことが多々ありました。

そこで今回は中外製薬の強み・弱みを多角的な観点から分析し、共有出来たらと思います。

02.中外製薬とは


https://www.chugai-pharm.co.jp/index.html

この記事にたどり着いた方々は製薬業界に対する業界研究も深く、業界を代表する企業についてある程度の知識をお持ちの方が多いと思いますが、少しお付き合いください。

中外製薬って内資?外資?

中外製薬はロシュ傘下の外資系医療用医薬品製造販売会社の一つです。ロシュ傘下と記した通り、2001年12月、中外製薬とロシュ社は戦略的アライアンスを締結し、翌年2002年にロシュ社が中外製薬の総発行株式数の過半数を保有することで、中外製薬はロシュグループの一員となりました。
戦略的アライアンスを締結する上で、中外製薬はロシュグループの一員となりつつも、上場の維持と独自の経営権を保つことで合意がとれたため、2024年現在においても、中外製薬は経営の独立権を有しています。

注力領域・モダリティ

中外製薬は様々な疾患領域での医療用医薬品を製造販売していますが、特にがん領域で高いプレゼンスを保持しています。
製品ラインナップも抗がん剤を中心とした構成で、アバスチンやテセントリクをはじめとした抗がん剤が中外製薬の国内における売上高の上位を占めており、疾患領域ごとの売上高構成比でみるとがん領域製品は約4割を占めています。
また、抗体医薬品の研究開発において高い独自性を有し、同モダリティ(医薬品の基盤となる技術・創薬手法)の医薬品で国内トップのシェアを誇っています。

03.中外製薬の強みとは?


筆者の考える中外製薬の強みは以下の3点です。(あげようと思えばまだありますが。)

  • 豊富なパイプライン

  • 高い抗体エンジニアリング技術

  • ロシュとの戦略的アライアンス

強みの詳細については、正直公式ホームページや各製薬系ニュース媒体で調べた方が詳細な内容に触れることができるかと思いますので、この場では割愛させていただきます。(笑)

万一コメント等で要望がありましたら随時更新しようかなと思います。

04.中外製薬の弱みとは?


ここまで見てきて、一見弱点のなさそうな中外製薬ですが、中外製薬の弱みとは何でしょうか?
筆者の考える弱みは以下の2点です。

  • アライアンスから生じる開発時における律速段階

  • 証券市場における株式の流動性の低さ

アライアンスから生じる開発時の律速段階

先ほどの章で、中外製薬の強みとして「戦略的アライアンス」を挙げさせていただきましたが、研究開発においては不都合な側面を持つと考えています。小見出しの通り、結論としては「臨床開発に律速段階が生じる」ということです。

ここでは、非臨床・前臨床→臨床(P1,P2,P3)→承認申請といった
臨床開発の流れの中で生じる弱みについて考えてみたいと思います。

中外製薬の研究開発の流れとして、非臨床・前臨床段階ではロシュの持つデータベースの活用や、共有リソースを活用しながら効率的に創薬シーズの探索を行い、有望な候補化合物をいち早くP1試験に送ります。
P1試験は中外製薬主導で実施し、P1試験の試験結果からProof of Consept(PoC)が取得出来次第、ロシュを通じたグローバル開発に供与されます。
つまり、P2以降はロシュが主導してグローバルでの臨床開発を進めます。

戦略的アライアンスの元では、このグローバル開発への移行が律速となりえます。中外製薬がP1以降開発を進めるには、親会社であるロシュがP2以降を実施したいと思えるほどの動機付けを行う必要があるためです。中外製薬がP1の臨床結果に十分な手ごたえを感じたとしても、ロシュが首を縦に振らない限り、その先には進めないのです。

実際に某分子標的薬の開発においては、P1で十分な結果が得られていてもロシュが首を縦に振らなかったため、中外製薬はP1試験の結果をimpact factorの高い学術論文に投稿し、第三者を巻き込んだエビデンスを確立したことでロシュからP2以降の実施に合意を得ることができ、開発を進めることができました。

このように、P1試験以降、親会社の主導で臨床開発を力強く進めることができる反面、親会社が首を縦に振らなければ開発はサスペンドとなります。
合意を得るためにはそれなりの時間と労力をかける必要があり、親会社を説得できない限り先に進めないジレンマがあると考えます。

もちろん、世界を牽引するロシュ社が首を縦に振らない候補化合物が世に出て患者さんに貢献できるとはあまり思いませんが、今後日本の医療用医薬品市場規模が世界市場に比べて相対的に低下していくことを鑑みると、日本に特異性をもつ疾患の後期臨床開発は首を縦に振ってもらえる見込みは低くなるのではないかと筆者は愚考しています。


証券市場における株式の流動性の低さ

これまでとは少し観点を変えて、上場企業としての製薬会社、という観点から中外製薬の弱点を考えてみました。
中外製薬は2024年6月現在、8兆円超の時価総額を誇る製薬会社であり、その規模は第一三共の10.8兆円に次ぐ国内第2位の時価総額となっております。
しかし、日本で1位、2位を争う製薬会社でありながら、その浮動株(発行されている株式の中で、安定した株主に保有されておらず、市場に流通する可能性の高い株式)は1.6%程度と、第一三共の3.2%, アステラス3.1%と比較しても低い値にとどまっています。
冒頭で述べましたように、中外製薬の発行株式の半数以上はロシュ社が保有しており、特定株(大株主が常時保有していて、市場には流通しない株式)の割合が高くなっているためです。
浮動株が少ないと流動性に乏しく、売買高が増加すると株価が大きく変動する可能性があるため、中外製薬の株価は他の大手製薬企業に比べて安定しにくくなります。
投資家からすると需給のバランスを読み解くのが難しく、また、特定の投資家の意図的な取引に株価が左右されやすくなるため、投資家から警戒されやすくなり、健全な投資の妨げとなる可能性があります。

中外製薬としては半数以上の株価が親会社に帰属しているため、株価対策をする必要性は低いと思いますが、社員持ち株会や、個人で投資する際には懸念点となりうると考えています。

05.まとめ


それではまとめです。

  • 中外製薬はロシュ傘下の外資系製薬会社

  • がん領域、抗体医薬品に高いシェアを持つ

  • 強みは豊富なパイプライン、抗体改変技術、ロシュとのアライアンス

  • 弱みは開発時の律速段階、株式の流動性の低さ

ここまで拙文にお付き合いいただきありがとうございました。
本コンテンツが皆様の業界研究の一助となっていましたら幸いです。

気になること、製薬業界の就活に関してなにか知りたいこと等ありましたらコメント頂けますと幸いです。気まぐれではありますが、コンテンツの作成、返信できればと考えております。

それではまた。

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