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瞳の奥

瞳の奥を見つめていました
そこにいたのは青い鳥でした
青い鳥は風が乗せてきた音楽と共にありました
フェンダーのアンプに通されたクリーンなギターのアルペジオと時折掠れる声
その声の裏には誰にも摘まれることなく朽ちていった真っ赤な果実がありました
腐敗していく真っ赤な果実が見せる時の流れの中に幾つもの虫たちが屯っていました
そこには何の犠牲もありませんでした
あったのは一片の曇りもない利己でした
その利己の元には懐かしい景色が落ちていました
それを拾い上げてみるとそれは生ぬるくドロドロとしたものでした
思わず手を広げて落としてしまいました
床に広がる懐かしい思い出は見る影もなく飛び散ってしまいました
その飛び散った懐かしさの周りには阿保な面をした後悔が群がっていました
「あーあ」という声が聞こえました
声の聞こえた方を振り返ってみるとそこには誰かが残した足跡がありました
足跡からは小さな花が咲いていました
思わずその小さな花にそっとキスをしてしまいました
キスをしたら空が消えました
消えた空から不揃いな言葉が降ってきました
天を仰いで口を開けていると幾つかの言葉が口に入ってきました
よく咀嚼しました
歯応えは思ったよりはありませんでした
半分飲み込み、もう半分は吐き出しました
吐き出した液状になった言葉を覗き込んでみるとそこには瞳が映っていました
私は見つめていました
瞳の奥を見つめていました

見ていただけたことが、何よりも嬉しいです!