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出かける用事があるから、来てもらっても困ります(別居嫁介護日誌#17)

義母はアルツハイマー型認知症が確定。主治医も決まり、いつでも要介護(要支援)認定の申請はできる準備が整った。しかし、医師からは義父も改めてもの忘れ外来を受診するよう勧められた。

受診予約がとれるのは最短でも義母の受診日から2週間後。義父の病状に対する診断が確定するまで要介護(要支援)認定の申請を待つべきなのか、それとも義母の分だけでも申請したほうがいいのか。判断するためのヒントが欲しくて、インターネットを検索しても、介護ブログを読みあさってみても似たような事例はヒットしない。

にっちもさっちもいかなくなって連絡したのは、以前、義姉と一緒に訪れた地域包括支援センターだった。あのとき親身になって対応してくれた、「じつは訪問させていただいておりました」の看護師Cさんなら……と、祈るような気持ちで電話をかけた。

「ご夫婦一緒に申請しましょう。お父さまも近々受診予定だと伝えれば、問題ないはずです」

ビンゴ! 最初から地域包括支援センターに相談すればよかった。一瞬で解決である。しかも、夫の実家を訪問するタイミングに合わせて、申請のための書類を実家まで持ってきてくれるという。当日どのように親と話をすればいいか、その段取りについても、相談に乗ってもらった。

要介護認定を受けることをいやがる高齢者はとても多く、うちの場合も義父母に「そんなものはまだ必要ない」「申請なんかしたくない」と拒否される可能性がある。今回はあくまでも、役所に提出する書類だという話で押し通してみよう。書類さえ記入してしまえば、役所への提出は地域包括支援センターで代わりにやってもらうこともできる。こまごまとした打ち合わせを重ね、不安は一掃。すっかり大船に乗ったつもりでいたが、早々に船が転覆する。

訪問予定を伝えるために、夫の実家に電話すると、義母は嬉しそうだったものの、義父は「出かける用事があるから、来てもらっても困ります」と不機嫌さを隠そうともしない。何時頃に出かけるか聞いても「わかりません」「用事が終わったら、もう切ってもいいですか」と、とりつくしまもなかった。

今になって思えば、あの日の義父はただ事実を述べていたに過ぎない。外出の予定は覚えているけれど、時間は思い出せない。もの忘れが生じることに誰よりも戸惑っていたのは義父自身であり、一刻も早く話を終わらせたかった。多分、それだけ。

でも、当時のわたしはそこまで義父の心情を理解してはいなかった。悪気はないのかもしれないけど、何もそんな言い方をしなくたって……と、それなりに落ち込んだ。第一、介護認定の申請はどうすればいいのか。すっかり暗い気持ちになりながら、看護師CさんにSOSの電話をかけた。

「あらあ、ご都合悪いって言われちゃいましたか。だったら、お嫁さん、ひとまず役所に申請書だけ提出しちゃいましょう! 要介護認定は結果が出るまで時間がかかるので、1日でも早く申請できたほうがいいですから」

電話の向こうでCさんは笑っていた。その底抜けに明るい声を聞いているうちに、年寄りに少々不機嫌な対応をされたぐらいで、ドンヨリしていた自分が恥ずかしくなってきた。Cさんは「大変でしたね」と慰め、励ましながらも、テキパキと次のダンドリをアドバイスしてくれた。

Cさんによれば、要介護認定の申請受付は月ごとのため、月頭に行くほうが認定調査日をこちらの都合に合わせてもらいやすいという。また目下、悩みの種になっている「お薬カレンダーへの薬のセット」も介護保険で「訪問看護サービス」を利用すれば、看護師さんにお願いできると教えてくれた。

そのためにも、1日も早く認定調査を受け、介護保険を利用できるようになるのが先決。さっさと手続きを終えて、ラクになろうぜ! すっかり気を取り直した私は実家訪問の予定を前倒して、役所に出向くことにした。

【次回は1月11日(金)更新です】

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