姉貴に付き添いを頼もうか(別居嫁介護日誌#18)

介護認定の手続きは一刻も早く済ませたほうがいい。もの忘れ外来のクリニックでも、地域包括支援センターでも、会う人ごとにそうアドバイスされた。要支援・要介護度は「要支援」(1・2)から「要介護」(1・2・3・4・5)の7段階あり、それぞれ介護サービスを利用できる内容や回数、利用する際の自己負担額が異なる。

義父母の場合、「たぶん要介護1だと思うけれど、もしかしたら要支援2になるかもしれない」というのが地域包括支援センターの見立てだった。面談以来、何かと相談にのってくれていた看護師Cさんからは「要支援止まりだと利用できる介護サービスが限定されてしまうので、できれば要介護1がとれるといいですね」と言われていた。

それはぜひとも、要介護1をとりたい。でも、どうやって? 書籍やインターネットで認定調査について書かれた記事を探し、読み漁った。

わかったのは、家族の前ではヨレヨレでしゃべるのもやっと……というおじいさんやおばあさんも、なぜか認定調査員の前ではシャッキリし、見違えるようにしっかりした応対をする。認知症があっても例外ではなく、なぜかその日だけ、まったく認知症ではないように振舞う。できないことも堂々と「できます」と答え、その結果、介護度が軽く判定されてしまうケースが少なからずあるという。認定調査員の前で、紳士淑女然としてふるまう義父母の姿が目に浮かぶようだった。ぜんぜんダメじゃん!

家族としてできることはまず、普段の様子や困りごとを認定調査員にしっかり伝えること。ただし、ご本人の前で赤裸々に話すのは得策ではない。メモを渡すとか、本人が聞いてないところで話すといった、尊厳を傷つけないための配慮も必要……といったことを実践するにはそもそも、認定調査に立ち会う必要がある。

自宅から夫の実家まで約1時間半という距離は、ものすごく遠いわけではないが、近くもない。短期間に何往復もしていると、どんどん腰が重くなり、気持ちがどんよりしてくる。

介護のキーパーソンに立候補したときに、ある程度大変であることは覚悟していたつもりだったけれど、想像以上にきつい。しかも、まだ義父のもの忘れ外来受診という宿題が終わってない。これでまた一往復するのか。もう全部放り出して逃げ出したい。

日ごとにドンヨリしていく私を見かねたのか、夫からこんな提案があった。

「親父のもの忘れ外来の受診、姉貴に付き添いを頼もうか?」

夫に言われるまで、義姉に頼むという選択肢はまったく考えてなかった。義姉は教師としてフルタイムの仕事をしている。だから、平日の受診付き添いは無理だと思い込んでいたのだ。

「仕事があるのは俺たちだって同じだし、姉貴も有給休暇とかあるでしょ。聞くだけ聞いてみようよ」

おっしゃる通りだった。義父母が今、どういう状態にあるのか。今後、どのようなケアが必要になるのか、医師から直接説明を聞けるという意味でも、このタイミングで受診に付き添ってもらうのは、すごくいいことのように思えた。

夫がLINEで依頼のメッセージを送ると、義姉はふたつ返事で引き受けてくれた。案ずるよりも生むがやすしとはこのことだね。すばらしい。これで少し肩の荷を降ろせるに違いない。きっと多少はラクになるよ。そのときの私たちは能天気に、そう信じていた。

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